2021年5月 5日 (水)

ハリーとトント

CINEMOREに『ハリーとトント』について書きました。自分が生まれる前に封切られた本作ですが、日本でも大きな人気を博したそうで、DVDの音声解説ではその時の反響についてマザースキー監督が嬉しそうに語る場面が印象的でした。

老人と猫のロードムービー『ハリーとトント』が軽やかに引用するシェイクスピア「リア王」のエッセンス

元来、動物と子供は予測不能と言われますが、このハリーという名の御老人の行動も大いに予測不能。そこがだんだんと味わい深く、そして楽しくなっていく名作です。

 

監督:ポール・マザースキー、出演:アート・カーニー、エレン・バースティン、ジェラルディン・フィッツジェラルド
Harry and Tonto (1974/アメリカ)116min.


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トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング

オーストラリアで知らぬ者はいない伝説的アウトローの半生を描く渾身作。枯れた大地、乾いた風になぶられ、出口なき日々に虐げられながら反逆心を滾らせる主人公を、ジョージ・マッケイが怪演。彼も凄いのだが、少年期を演じる子役の眼が、金縛りにかかりそうなほど凄まじい。それに俳優陣の演技だけでなく、『マクベス』や『アサシン・クリード』で知られるジャスティン・カーゼル監督の映像力もまた非常に力強い。時に圧倒的に美しく、かと思えば絶望すら込み上げ、ネッド・ケリーがギャングを率いてからはさらに独創的な映像とカメラワークが次々と溢れ出してくる。

トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング
監督・ジャスティン・カーゼル、出演:ジョージ・マッケイ、ニコラス・ホルト、ラッセル・クロウ、チャーリー・ハナム
True History of the Kelly Gang(2019/オーストラリア=イギリス=フランス)125min.
6月18日より全国順次公開


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ジェントルメン

ガイ・リッチー監督の最新作『ジェントルメン』のレビューを書かせていただきました。5月7日公開予定。このような状況下なので、全国の映画館で皆がいっせいに楽しむことができないのが残念でなりませんが、せめてレビューの中で香りだけでも感じていただければと思って書きました。

 

ジェントルメン
監督:ガイ・リッチー、出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヒュー・グラント、
The Gentlemen (2020/イギリス=アメリカ)113min.


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2021年5月 4日 (火)

ビーチ・バム まじめに不真面目

おそらく観る人にもよるだろうが、この全編通してシラフな状態が一瞬たりともない偉大な詩人(主人公)の穏やかかつピースフルでそれでいて無茶苦茶な生き様に、自分でも意外なほど酔いしれてしまった。もしかするとマコノヒー作品の中でいちばん好きかもしれない。

400文字レビューはこちら「奔放過ぎるマコノヒーに翻弄され魅了された」

ビーチ・バム まじめに不真面目
監督:ハーモニー・コリン、出演:マシュー・マコノヒー、スヌープ・ドッグ、アイラ・フィッシャー

The Beach Bum(2019/アメリカ)95min. 


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戦場のメリークリスマス

中学生の頃、夜中にTVで『戦場のメリークリスマス』が始まり、理解できず途方にくれたことがあった。正直、いま観ても傑作なのかどうかわからないが、こんな不思議な余韻や感情にいざなう収容所モノは他にないことだけは確か。特にボウイが故郷の思い出や弟のことを想う場面。あの色遣いが鮮烈に目と胸に刺し込んでくる。坂本龍一のまっすぐな中に心の惑いがありありと見て取れる役柄も素晴らしいが、やっぱりビートたけしのキレてるのか笑ってるのかわからないあの危なっかしい存在感がたまらない。ちなみに英題では"Merry Christmas Mr.Lawrence"だが、フランスやイタリアを始めとする国々でのタイトルは"FURYO(俘虜)"という。

400文字レビューはこちら「数十年ぶりの鑑賞で込み上げた思い」

 

戦場のメリークリスマス 4K修復版
監督・脚本:大島渚、出演:デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし
Merry Christmas Mr.Lawrence(1983/日本=イギリス=ニュージーランド)123min.

 


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愛のコリーダ

これまで恐れをなして踏み込めずにいた『愛のコリーダ』。観終わった時、一つの山を超えた達成感とともに、ドーンと突き落とされる衝撃をくらった。肉体と感情で紡がれる108分。凄まじい情愛だが、もはや引き返せぬ切実さ繊細さもひしひしと。自分が生まれた時代に勃発した表現の闘いに思いを馳せた。

400文字レビューはこちら「人生のどこかで覚悟を決め挑むべき山」


愛のコリーダ 修復版
監督:大島渚、出演:松田英子、藤竜也、中島葵、殿山泰司
(1976/日本=フランス)108min. R18+


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2021年5月 3日 (月)

スプリー

ネットでなんとかバスりたい青年の手段を選ばぬ暴走劇『スプリー』。自撮り映像で完結した映像といい、笑顔が不気味さに反転していくキーリーといい、なかなかイカれていて楽しめた。多くのフォロワーを持つコメディアンに主人公が憧れるあたり、あの名作を意識してるのかな、とふと思ったり。

400文字レビューはこちら「サクッと観られるが意外と奥深い」

スプリー
監督:ユージーン・コトリャレンコ、出演:ジョー・キーリー、サシーア・ザメイタ、ミーシャ・バートン、ジョン・デルーカ

Spree(2020/アメリカ)93min.


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2021年4月15日 (木)

イカとクジラ

CINEMOREにノア・バームバック監督作『イカとクジラ』について書かせていただきました。

思春期の機微を捉えた『イカとクジラ』が自伝を超えたリアルな感情のドラマに到達するまで/CINEMORE

バームバックは2019年に『マリッジ・ストーリー』という映画を手掛けていますが、二つを並べてみると一人の映画作家のとてつもない成長が感じられ非常に驚かされます。この監督が『イカとクジラ』について「自伝か?と問われると、すごく戸惑ってしまう」と語っていて、なんだかすごくよくわかるなあ、と。だって映画である以上、完璧な客観性などなく、そこには必ず主観や創作が入り込んでくるわけですから。微妙な境界線ではあるものの、多分、彼にとってはとても大切なラインなのでしょう。胸を張って「そうです、自伝です」と答えないところが、バームバック監督のすごく真っ正直なところだなあと感じます。


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2021年4月 8日 (木)

約束の宇宙(そら)

幼い娘を持つ母親が、宇宙飛行士として空へ旅立つまでの日々をリアルに描く『約束の宇宙』。いわば40年前に公開された米映画『ライトスタッフ』的な側面を併せ持つも、ここでは女性として、母としての心理面が際立ち、静謐な流れの中に芯の強さを秘めた唯一無二の秀作に仕上がった。坂本龍一が音楽を担当。決して叙情的なうねりに身を任せることなく、むしろ心の機微や呼吸を感じさせるかのような曲調がこの映画のあり方を物語っている。

400文字レビューはこちら「静謐な中に弛まぬ強さがある」

監督:アリス・ウィンクール、出演:エヴァ・グリーン、ゼリー・ブーラン=レメル、マット・ディロン
Proximo(2019/フランス)107min.


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2021年4月 7日 (水)

ドリームランド

『ドリームランド 』を観た。’30年代テキサスを舞台に、無慈悲な砂嵐によって幾度も運命を翻弄されてきた青年と、納屋に逃げ込んできた指名手配中の女性とが、共に”ここではない何処か”を夢みる。大自然の脅威とよく言うが、この自宅のすぐそばにある納屋にさえたどり着けない砂嵐の凄まじさは、どこか家族でありながら心を通わすことのできない人間関係を象徴しているところがある。また「窓」や「扉」といった存在も印象的だ。そこでは遠くからゆっくりと運命が近づいてくるのが見え、また自分の思いを成し遂げようと思えば、必ずそれらを踏み越えねばならない。とするなら、時折映し出される記録フィルム風な映像もまた、「画角」という窓を変えた情景であり、美しき記憶であり、または、こうでありたいと必死に手を伸ばし続ける景色。全体的にまとまりのないところ、物足りなさはあるが、マーゴット・ロビーが製作を買ってでただけあり、独特の味わいを持った作品である。

監督:マイルズ・ジョリス=ペイラフィット
出演:フィン・コール、マーゴット・ロビー
原題:DREAMLAND (2019/アメリカ)

 


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