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2021年1月28日 (木)

ヒッチコック『鳥』

先日、NHK-BSプレミアムにてヒッチコックの『鳥』が放送された。

冒頭のロマンティック・コメディ風の導入から、途中で容赦のない恐怖のドラマへと切り替わっていくナチュラルな転調に惹かれてやまない。'60年の『サイコ』で異常なる恐怖を描いた直後、今度は'63年の『鳥』で人間の想像の及ばない未知なる恐怖を描き尽くしたヒッチコック。いわばキャリアの絶頂とでもいうべきところで生まれた二作だが、これを発表したのを機に、64年の『マーニー』以降のヒッチコック作品はやや覇気を失っていく。いや、物語的には相変わらず優れているとしても、これまでのように革新的なものを生み出すまでには至らない、というか。

でもだからこそ、私などは、ピークを過ぎた巨匠がいかにして自分の限界と戦い続けたのかに興味が募ってやまないのであるが。そこでの彼の生き様というか制作風景については、今後、徐々に迫っていきたいところだ。

『鳥』を見ながら、そういえば、以前に原稿を書いたことがあったなと思い出した。お時間ある方はぜひ。

・ヒッチコックの『鳥』が映画史に輝く傑作である3つの理由/CINEMORE

その他にもヒッチコック作品について何本か書かせてもらったので、併記しておきたい。

 

・イギリス時代の傑作スパイ・サスペンス『三十九夜』の高密度なドラマ性

・ヒッチコック、ハリウッド進出第二弾『海外特派員』の尋常ではない面白さ

・50年代究極の娯楽作『北北西に進路を取れ』に見るヒッチコックの監督術

・単なる”覗き”映画ではない。『裏窓』が奏でる多様な愛のハーモニー

・ヒッチコックの傑作『めまい』 タイトルを象徴する伝説的ショットはいかにして撮られたのか?

 

ついでに、『鳥』に多大なインスピレーションを受けて作られたというシャマラン監督作『サイン』の記事も、併せてよろしくお願いします。

・撮影時期から見えてくる『サイン』のもう一つの側面とは/CINEMORE

 

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2021年1月21日 (木)

フィッシャー・キング


もうずいぶん昔のことで、本人は全く覚えていないと思うけれど、この映画を最初に僕にオススメしてくれたのは、中高時代の友人でした。僕が「牛」ならば、彼もまた動物の名前のつく人で、多分、同級生の多くは「ああ、あの人ね!」と思い当たると思います。

 

当時の僕は、映画鑑賞といえばスピルバーグとかグレムリンとかゴーストバスターズがメインで、この謎めいた『フィッシャー・キング』という映画を見ても、ドキドキワクワクもしなければ、感動して涙を流すこともなかった。

 

どう考えても、中学生や高校生が熱狂するタイプの映画では全然ない。大好きなロビン・ウィリアムズは出てくるけれど、かと言って彼が面白おかしく笑わせてくれるわけでもない。基本、心に傷を抱えた中年男たちの友情の物語。大人のドラマです。

 

それが、今あらためて本作を見ると、本当に心に沁みた。感動しました。気づけば、自分もすっかりこの主人公らと同じくらいの年齢なのですよね。そりゃあ心情に共鳴して、泣けるわけだ。

 

『フィッシャー・キング』の誕生から今年で30年。今になってようやく、「うん、面白かった!感動した!」と胸を張って言えそうです。あの動物の名のつく友人に。

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BLUE

シネマディスカバリーズにて若松宏樹監督の『BLUE』という短編作品について書かせて頂きました。
近未来、何らかの理由によって地下生活を余儀なくされている描写に、我々の眼前に広がる今の状況との何らかの共通性を感じつつ、そこから力強くも繊細に展開していく主人公の葛藤、気づき、目覚めに、とても惹きつけられました。この突破力こそ、日本からアメリカへ渡り映画製作について学ばれた若松監督の映画への情熱を象徴するもの。学生時代の作品には未来を見通す可能性が詰まっていると言われます。これから若松監督が活躍の幅を広げていくにつれ、本作『BLUE』の輝きはなおいっそう深度を増していくのではないでしょうか。

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2021年1月18日 (月)

聖なる犯罪者

映画.comにて新作映画『聖なる犯罪者』について執筆させていただきました。

ポーランドから届いた大変スリリングで見応えのある作品でした。このご時世、外出を控えておられる方も多いことでしょうが、素晴らしい作品は必ず、人生のどこかのタイミングで、届くべきあらゆる方々のもとに届くものと信じています。この機会にぜひタイトルだけでも深く胸に刻んでおいていただければと思います。

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フォレスト・ガンプ

1995年3月。『フォレスト・ガンプ』の日本公開当時、僕は高校生でしたが、ゼメキスの描くあの「群衆」をスクリーンで目の当たりにして、とにかく圧倒されたのを、いまなお濃厚に覚えています。2020年は大統領選や大規模な各種デモなどで、TVのニュースなどでアメリカの群衆が強烈に映し出されることが多い年でしたが、これらを目にするたびに密かに本作のことを頭のどこかに思い出されました。

日本人にとって知名度抜群の映画ではあるものの、どこか楽しみ方のわからないところもあるこの映画。ゼメキスも「あまりにアメリカ的な、いわゆるアメリカの歴史にまつわる映画だから、これほど世界中で大ヒットするとは思ってなかった」のだとか。ちなみに小説版では続編があって、フォレストと息子が、その後の時代を歩んでいきます。中にはレストランで俳優トム・ハンクスと出会ってお喋りをする場面も。それからフォレストの物語が映画化されて、アカデミー賞授賞式に招かれる場面も登場します。続編の映画化も企画されていたようですが、今のところ実現には至っていません。

そんなわけで、『フォレスト・ガンプ』について書いています。お時間ある際に、ご覧いただければ幸いです。

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