ヒッチコック『鳥』
先日、NHK-BSプレミアムにてヒッチコックの『鳥』が放送された。
冒頭のロマンティック・コメディ風の導入から、途中で容赦のない恐怖のドラマへと切り替わっていくナチュラルな転調に惹かれてやまない。'60年の『サイコ』で異常なる恐怖を描いた直後、今度は'63年の『鳥』で人間の想像の及ばない未知なる恐怖を描き尽くしたヒッチコック。いわばキャリアの絶頂とでもいうべきところで生まれた二作だが、これを発表したのを機に、64年の『マーニー』以降のヒッチコック作品はやや覇気を失っていく。いや、物語的には相変わらず優れているとしても、これまでのように革新的なものを生み出すまでには至らない、というか。
でもだからこそ、私などは、ピークを過ぎた巨匠がいかにして自分の限界と戦い続けたのかに興味が募ってやまないのであるが。そこでの彼の生き様というか制作風景については、今後、徐々に迫っていきたいところだ。
『鳥』を見ながら、そういえば、以前に原稿を書いたことがあったなと思い出した。お時間ある方はぜひ。
・ヒッチコックの『鳥』が映画史に輝く傑作である3つの理由/CINEMORE
その他にもヒッチコック作品について何本か書かせてもらったので、併記しておきたい。
・イギリス時代の傑作スパイ・サスペンス『三十九夜』の高密度なドラマ性
・ヒッチコック、ハリウッド進出第二弾『海外特派員』の尋常ではない面白さ
・50年代究極の娯楽作『北北西に進路を取れ』に見るヒッチコックの監督術
・単なる”覗き”映画ではない。『裏窓』が奏でる多様な愛のハーモニー
・ヒッチコックの傑作『めまい』 タイトルを象徴する伝説的ショットはいかにして撮られたのか?
ついでに、『鳥』に多大なインスピレーションを受けて作られたというシャマラン監督作『サイン』の記事も、併せてよろしくお願いします。
・撮影時期から見えてくる『サイン』のもう一つの側面とは/CINEMORE
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