2021年5月 5日 (水)

ジェントルメン

ガイ・リッチー監督の最新作『ジェントルメン』のレビューを書かせていただきました。5月7日公開予定。このような状況下なので、全国の映画館で皆がいっせいに楽しむことができないのが残念でなりませんが、せめてレビューの中で香りだけでも感じていただければと思って書きました。

 

ジェントルメン
監督:ガイ・リッチー、出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヒュー・グラント、
The Gentlemen (2020/イギリス=アメリカ)113min.


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2021年4月 8日 (木)

約束の宇宙(そら)

幼い娘を持つ母親が、宇宙飛行士として空へ旅立つまでの日々をリアルに描く『約束の宇宙』。いわば40年前に公開された米映画『ライトスタッフ』的な側面を併せ持つも、ここでは女性として、母としての心理面が際立ち、静謐な流れの中に芯の強さを秘めた唯一無二の秀作に仕上がった。坂本龍一が音楽を担当。決して叙情的なうねりに身を任せることなく、むしろ心の機微や呼吸を感じさせるかのような曲調がこの映画のあり方を物語っている。

400文字レビューはこちら「静謐な中に弛まぬ強さがある」

監督:アリス・ウィンクール、出演:エヴァ・グリーン、ゼリー・ブーラン=レメル、マット・ディロン
Proximo(2019/フランス)107min.


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2021年4月 7日 (水)

ドリームランド

『ドリームランド 』を観た。’30年代テキサスを舞台に、無慈悲な砂嵐によって幾度も運命を翻弄されてきた青年と、納屋に逃げ込んできた指名手配中の女性とが、共に”ここではない何処か”を夢みる。大自然の脅威とよく言うが、この自宅のすぐそばにある納屋にさえたどり着けない砂嵐の凄まじさは、どこか家族でありながら心を通わすことのできない人間関係を象徴しているところがある。また「窓」や「扉」といった存在も印象的だ。そこでは遠くからゆっくりと運命が近づいてくるのが見え、また自分の思いを成し遂げようと思えば、必ずそれらを踏み越えねばならない。とするなら、時折映し出される記録フィルム風な映像もまた、「画角」という窓を変えた情景であり、美しき記憶であり、または、こうでありたいと必死に手を伸ばし続ける景色。全体的にまとまりのないところ、物足りなさはあるが、マーゴット・ロビーが製作を買ってでただけあり、独特の味わいを持った作品である。

監督:マイルズ・ジョリス=ペイラフィット
出演:フィン・コール、マーゴット・ロビー
原題:DREAMLAND (2019/アメリカ)

 


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2021年4月 6日 (火)

21ブリッジ

マンハッタンを封鎖して犯人を追う『21ブリッジ』。チャドウィック・ボーズマンが製作主演を兼ねるだけあり、要所要所で重厚さが際立つ。主人公の複雑な胸中が、アクションやサスペンスを妨げないレベルで巧みに織り込まれ、観やすく分かりやすいのに何かがしっかり残る良作に仕上がっていた。

▶︎「俳優たちの存在が巧みに機能し合っている」

 

監督:ブライアン・カーク
出演:チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー
原題:21 Bridges (2019/中国=アメリカ)

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2021年4月 5日 (月)

ノマドランド

『ノマドランド』を観たその日、一日中ずっと、あの広大な大地の光景が頭から離れなかった。決して説明的ではない人物描写を巧みに織り込みながら、彼女の終わりなき孤独な旅路にそっと寄り添い続ける2時間。一言で、ただもう圧倒された。今この時代だからこそ本作はこれほど深く沁み込んでいくのだろう。孤独も思い出も、全て抱きしめて生きていこう。そして"See you down the road." 本作のことが好きでたまらない。

 

▶︎「静かなる圧倒。時代の変わり目にたつ一作」

 

監督・製作:脚色:編集:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン
原題:NOMADLAND (2020/アメリカ)


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水を抱く女

ドイツ映画『水を抱く女』を観た。原題でもある”Undine”という名前の女性と、彼女がふとした弾みに巡り合った潜水士との奇妙なラブストーリー。出会いの瞬間からハッと意表をつき、時折挟み込まれる「都市の成り立ちの話」が不思議な感触を添える。味わいはじわじわと。日常から一歩も二歩も踏み外れたかのような物語運びに、少しずつ、少しずつ引き込まれていく一作。


▶︎「美しくも儚い起草譚」

 

監督:クリスティアン・ペッツォルト
出演;パウラ・ベーア、フランツ・ロゴフスキ
原題:Undine(2020/ドイツ=フランス)


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旅立つ息子へ

イスラエルから届いた『旅立つ息子へ』。決して瞬時に観客の心を引き込むような器用な作品ではないが、その代わり、噛めば噛むほど味わいが増す。父子と同じく我々も、距離の移動に合わせて少しずつ、心を寄り添わせていたんだなあと、しみじみ想う。あと、チャップリン、と。


▶︎「父親の心の移ろいが、しみじみと味わい深い」

 

監督:ニル・ベルグマン
出演:シャイ・アヴィヴィ、ノアム・インベル
英題:Here We Are(2020/イスラエル=イタリア)

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ロード・オブ・カオス

ノルウェーにおけるブラックメタルの勃興と狂乱を描いた『ロード・オブ・カオス』。何と悪魔的な。R18の激しい痛みの伴う描写を、狂い咲きするつぶてのごとく投げつけてくる。誰よりも突き抜けたい、唯一無二でありたいとする強い思い。そこから派生する暴走と、代償。いわば全ての青春映画に通底するテーマ性がそこには深く刻まれている。それがここではわりと”強め”に表出しているというわけだ。ともあれ主人公をローリー・カルキンが妙縁。

 

▶︎「恐ろしくて悪魔的だが、魅せる」

 

監督:ジョナス・アカーランド
出演:ロリー・カルキン、エモリー・コーエン
原題:Lords of Chaos (2018/イギリス=スウェーデン=ノルウェー)

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サンドラの小さな家

『サンドラの小さな家』を観た。住まいを失った母親と幼き娘たち。孤立無縁の中、自力で家を建てようと決意する彼女に、一人また一人と、周囲が支援の手を差し伸べ始める。崩れ落ちた心と暮らしを、いかにして建て直すか。その過程に焦点を当てた、極めて底力のある映画。脚本と主演を兼ねた新星クレア・ダンの輝きが素晴らしい。


▶︎「小さな物語だが、大きく胸を打つ」

 

監督:フィリダ・ロイド
出演:クレア・ダン、ハリエット・ウォルター
原題:Herself (2020/アイルランド=イギリス)

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ミナリ

A24とPLAN Bが贈る『ミナリ』素晴らしかった。韓国からアメリカへ渡り、さらには農業で一旗あげようとアーカンソー州の大自然へ越してくる家族の物語。「水」を織り交ぜた瑞々しい映像と、家族それぞれの心象とが見事に調和して描かれ、胸打たれる。途中参戦するおばあちゃんと、あと名優ウィル・パットンが醸し出す存在感も絶品。


▶︎「この一家の暮らしをずっと見つめていたくなる」

 

監督:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユアン、ハン・イェリ
原題:Minari (2020/アメリカ)

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