2021年4月 8日 (木)

約束の宇宙(そら)

幼い娘を持つ母親が、宇宙飛行士として空へ旅立つまでの日々をリアルに描く『約束の宇宙』。いわば40年前に公開された米映画『ライトスタッフ』的な側面を併せ持つも、ここでは女性として、母としての心理面が際立ち、静謐な流れの中に芯の強さを秘めた唯一無二の秀作に仕上がった。坂本龍一が音楽を担当。決して叙情的なうねりに身を任せることなく、むしろ心の機微や呼吸を感じさせるかのような曲調がこの映画のあり方を物語っている。

400文字レビューはこちら「静謐な中に弛まぬ強さがある」

監督:アリス・ウィンクール、出演:エヴァ・グリーン、ゼリー・ブーラン=レメル、マット・ディロン
Proximo(2019/フランス)107min.


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2021年4月 5日 (月)

旅立つ息子へ

イスラエルから届いた『旅立つ息子へ』。決して瞬時に観客の心を引き込むような器用な作品ではないが、その代わり、噛めば噛むほど味わいが増す。父子と同じく我々も、距離の移動に合わせて少しずつ、心を寄り添わせていたんだなあと、しみじみ想う。あと、チャップリン、と。


▶︎「父親の心の移ろいが、しみじみと味わい深い」

 

監督:ニル・ベルグマン
出演:シャイ・アヴィヴィ、ノアム・インベル
英題:Here We Are(2020/イスラエル=イタリア)

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僕が跳びはねる理由

『僕が跳びはねる理由』を観た。世界中で読まれる東田直樹氏のエッセイを、英国のドキュメンタリー作家が映画化。原作の言葉や、それらを視覚化した映像表現を織り交ぜながら、自閉症を抱えた人々が世界をどのように感じ、捉えているのかをわかりやすく伝える。もちろんこの映画はほんの一歩に過ぎないが、自分の中でこれまでにない静かな驚きと発見が身を貫き、新たな扉を押し開いていくかのような感覚を覚えた。

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サンドラの小さな家

『サンドラの小さな家』を観た。住まいを失った母親と幼き娘たち。孤立無縁の中、自力で家を建てようと決意する彼女に、一人また一人と、周囲が支援の手を差し伸べ始める。崩れ落ちた心と暮らしを、いかにして建て直すか。その過程に焦点を当てた、極めて底力のある映画。脚本と主演を兼ねた新星クレア・ダンの輝きが素晴らしい。


▶︎「小さな物語だが、大きく胸を打つ」

 

監督:フィリダ・ロイド
出演:クレア・ダン、ハリエット・ウォルター
原題:Herself (2020/アイルランド=イギリス)

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ミナリ

A24とPLAN Bが贈る『ミナリ』素晴らしかった。韓国からアメリカへ渡り、さらには農業で一旗あげようとアーカンソー州の大自然へ越してくる家族の物語。「水」を織り交ぜた瑞々しい映像と、家族それぞれの心象とが見事に調和して描かれ、胸打たれる。途中参戦するおばあちゃんと、あと名優ウィル・パットンが醸し出す存在感も絶品。


▶︎「この一家の暮らしをずっと見つめていたくなる」

 

監督:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユアン、ハン・イェリ
原題:Minari (2020/アメリカ)

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