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2004/05/15

『ドーン・オブ・ザ・デッド』サラ・ポーリー来日記者会見

ホラー映画の巨匠ジョージ・A・ロメロによるオリジナルを、英国CM界出身のザック・スナイダー監督が斬新にリメイクした話題作『ドーン・オブ・ザ・デッド』。 5月15日の日本公開に先駆け、本作の主演女優であるサラ・ポーリーが、新宿のパークハイアット東京にて記者会見を行なった。
あの『バロン』でまだ幼いサラ・ポーリーが愛らしく立ち振る舞っていたのをつい昨日のことのように思えるくらい、私たちは彼女の女優としての成長を温かく見守ってきたように思う。子役から大人への移行期に道を踏み外してしまう輩が頻出する中、サラ・ポーリーは観客の期待を裏切ることなく、ましてや媚びることなど決してなく、常に堅実なキャリアを積み重ねてきた。中でも昨年公開された『死ぬまでにしたい10のこと』は、彼女の数多い出演作品の中でもひとつの決定的なターニング・ポイントとして人々の記憶に刻まれた。そして2004年、彼女はジャンルの垣根を大きく飛び越え、『ドーン・オブ・ザ・デッド』への出演を選択した。

0404282 「今日はたくさんの人に集まっていただき、ありがとうございます。東京に来ることができてとても嬉しく思います。」との挨拶から始まった今回の会見。会場は立ち見もままならないほどに大混雑だった。では、質問。「もしもゾンビに噛まれてしまって余命があとわずかとなってしまったとき、死ぬまでにしたい10のこととは?」。のっけからなかなか込み入った質問が飛んだものだ。「それは難しい質問ですね。どれくらい時間がもつのかにもよりますね(笑)。あとでリストを作ってみますね。」と笑顔で答えたサラ。結果的に答えはさらりとかわされてしまったが、彼女の冷静沈着ぶりが印象的なオープニングだった。

奇しくもジョージ・A・ロメロによるオリジナル版が世に出たのが、彼女が生まれたのと同じ25年前。何か因縁めいたものを感じずにはいられない。サラはオリジナル版との出逢いについてこう語る。「兄の膨大なビデオ・コレクション棚の中から拝借して鑑賞したのが11か12のとき。あの時は本当にトラウマになりそうなくらいに恐かった」。歴史的ホラー映画の傑作をリメイクしたというプレッシャーを微塵も感じさせずに、彼女はこう続けた。「もちろんオリジナル版は大好きです。リメイク版では、オリジナルが残した消費文化への批判も継承していて、“ショッピングセンター”という設定も同じ。それでいて、“現代的な要素”もふんだんに取り入れられています」。

『死ぬまでにしたい10のこと』に代表されるインディペンデント系作品への出演で知られるサラだが、それではなぜこのようなビッグ・バジェットの、しかもこんなゾンビ映画が彼女の心を射止めたのだろうか。「実は、この作品を選んだ選択基準は、これまでとまったく変わらないんです。作品がしっかりとした考えに基づいているか、製作者がこれまでにない新しい映画を作ろうとしているか。これに尽きます。今回の映画作りを経験して、ハリウッド的なものを覗いてみるのも悪くないな、と思いました。でも、やっぱりキャラクターをしっかりと描こうとするとインディペンデント映画には敵わない気がします。正直、私にはそちらの世界が合っているとも思います」。最後にこう付け加えた。「あと、撮影現場が自宅(トロント)にとても近かったからというのもありますね」。

今回の共演者は、ヴィング・レイムスやジェイク・ウェバー、メキ・ファイファーなどの、顔を見れば「ああ!」と思うような名脇役ぞろい。こんな特徴ある俳優陣に囲まれての撮影はどんな感じだったのだろうか。サラは、「本当にかなり変わった組み合わせでした。いったいどうなるんだろう、という不安はありましたけれど、結果的に素晴らしく楽しい経験となりました」と振り返る。英国CMクリエイター界の出身で、今回初めてメガホンを取ったという監督についても、「あんなに元気ハツラツな人も初めて。しかも常に自由な感覚を失わない人」とサラは賞賛の言葉を惜しまなかった。

実は今回が2度目の来日となるサラ・ポーリー。前回は全くのプライベートだったそうで、映画のPRとしては初めて。「今回どこか行ってみたいところは?」との質問に、彼女は目を輝かせてこう答えた。「実は、昨日の朝5時に起きて、第一希望だった築地に行ってきたんです。期待を裏切らないエキサイティングなところでした」。まだ詳細は決まってないが、滞在中の京都旅行も計画中のようだ。

さて、ホラー映画でお決まりなのがこの質問。撮影中になにか怪奇現象などは?サラは笑いながら、「いいえ、そういうことはちっとも。ちょっと“怪奇”とは違いますけれど、たまたまカナダでSARSが発生した時期ではありました。海外へと退散する人たちが大勢いる中、私たちは最後まで残って撮影を続けました」。
では、幼い頃に観たオリジナル版のように、撮影中、怖さにくじけそうになったことは?またまたサラは笑顔でこう答えた。「観客がすごく恐がっているシーンほど、現場では楽しく可笑しく撮っているものなんですよ(笑)。恐くて夜眠れなくなるようなことも特にありませんでした。ああひとつだけ、わたしがゾンビの目を突くシーンがあって、そのゾンビがすごくリアルにできているものだから、可能な限り少ないテイク数で撮ってほしいと心から願ったことはありましたね(笑)」。そして、さすが女優、“恐がる”という演技への探究も忘れない。「演技って自分の体験した感情を引き出しの中から取り出して表現することだと思うんです。でも“恐怖”とか嫌な思い出というものは、どうしても記憶の中から早く消去したいと思いますよね。だからその消えかかった感情を記憶から引っ張り出すのに苦労しました」。

最後に、「じゃあ、サラさんが怖いものって何かありますか?」との質問。「これまでの人生で?」軽く聞き返したあと、一瞬沈黙が流れ、彼女は「ジョージ・ブッシュ」と答えた。そのはっきりとした口調に誰もがア然。実は彼女は政治問題にとても関心が深いのだという。「やはり、イラクで行われている戦争などを見ていると…実に恐ろしいですよね。」とサラ。いつまでも子供のように思っていたら、いつのまにかこんなにも大きくなって…。その瞬間、会場にいたみんなの目が、立派になった親戚の子供でも見るような、なんだか遠くを見るようにショボショボとした目をしていたのが印象的だった。

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