« 『涙女』 | トップページ | 『阿修羅のごとく』 »

2005/09/12

『ブラウン・バニー』

全国のミニシアターで伝説的なヒットを記録した「バッファロー'66」から5年。映画人、というよりはアーティスト・ギャロが満を持して発表する新作は、透き通るように繊細な映像の中に男の痛みが充満する失意の物語。カンヌ映画祭にて激しいブーイングを浴びてボロボロになった本作も、やっとのことで日本へ漂着。ギャロに対して極めて好意的なこの国での評判のほどは?そして、その真価のほどは?

ニューハンプシャーで開催されているモーターサイクルレース。エンジンの爆音に包まれた束の間の時間は過ぎ、選手達は次なる開催地カリフォルニアへと旅立つ。バド・クレイもその中のひとり。彼は黒いバンにマシンを積み込み、アメリカ横断の旅に出る。バドはかつて一緒に暮らしていた恋人で幼馴染じみのデイジーのことがどうしても忘れられずにいた。ふとした衝動で彼女の実家を訪ねてみるが、そこにデイジーの姿はない。だが、そこで飼われていた茶色いウサギを見て愕然とする。その“ブラウン・バニー"は、微かな子供時代の記憶と何ら変わぬ姿を保ち続けていた。それをきっかけに、バドの頭の中にはデイジーとの想い出がありありと蘇り始める。彼は旅の途中、必死に彼女の姿を追い求めるようになる。

カンヌでブーイングの一件もあったことから、あえてマスコミ試写を外して劇場へと足を運んでみた。開場を待つ列の横を前回の観客が通り過ぎていく。「マジで良かった!」と声高に激賞する青年もいれば、彼女が彼氏に向かって「こんな映画につき合わせてしまって、ほんっと申し訳ないよ」と必死に謝っているカップルすら見受けられた。同じ作品を前にしてこの反応の多様性はいったい何なんだ。そう不安になりながら私も鑑賞。まるで北欧製の家具を見るように“ひんやりとした"映像の数々。直感的に作られている分、努めてギャロの意識下に入り込まないと彼の目論見がさっぱりわからない。ラストでようやくたどり着いた結論なのだが、これは主人公の心の移ろいを観客にリアルに追体験してもらおうとの意図で作られたのではないか。その感情と同調できた人はYesと受け入れるだろうし、否ならばひたすらNoだろう。私はこのひたすら繊細な映画作りにはとても感銘を受けたものの、満足度で言うと結果的に“星の数"の通りとなった。

|

« 『涙女』 | トップページ | 『阿修羅のごとく』 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/5905517

この記事へのトラックバック一覧です: 『ブラウン・バニー』:

« 『涙女』 | トップページ | 『阿修羅のごとく』 »