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2005/09/12

『The Juon』をトラウマのままやり過ごすか、それとも壁を乗り越えるか。

言わずと知れたジャパニーズ・ホラーをハリウッド製作でリメイク。しかし、どこかこれまでのリメイク方法と違うなと思わせるのは、例えば丸々アメリカ式に変換されて凱旋した『ザ・リング』のような“翻案”ではないということ。まず、舞台は日本のままだし、あの恐怖の家だってそのままの形で存在している。入れ替えられるのはキャスト。そして言語に過ぎない。

つまり、オリジナル版(ここでいう“オリジナル”とはあえてビデオ版でなく映画版ということにしておくが)で奥菜恵が演じたホームヘルパーの役どころをなんとサラ・ミシェル・ゲラーなんぞが演じてしまうわけだ。主要人物はほぼ滞日アメリカ人で占められ、そして彼らが、宗教や文化の枠組みを飛び越えて無条件で“あの母子”の恐怖に苦しめられていく。

「シチュエーション・コメディ」という言葉があるが、僕はこの考え方が『THE JUON』にも案外当てはまるんじゃないかと思った。いわゆる「シチュエーション・ホラー」だ。大事なのは既に完成している「シチュエーション」。しかもオリジナルの。そしてひとつひとつスケッチ(コント)を積み重ねてストーリーが練られるがごとく、ここではホラーの要素が積みあげられていく。

製作総指揮のサム・ライミがオリジナルの配給ではなくあえて“リメイク”を指示したのは、外国人キャストの視点を導入することでこの息の詰まるような日本家屋(シチュエーション)の内部へと外国人観客をも深く深くいざなうことを目的としていると同時に、この日本で生まれた「シチュエーション・ホラー」を米市場への試金石として投入することに目的があったのだろう。

もちろん日本人観客の中にはストーリーを十分把握している人も多いだろうから、ここはどうか再演される舞台にでも接するような感覚で観てほしい。リメイク、複製、翻案という洗礼を通って、そこにはきっと『ザ・リング』以上に興味深いいでたちをしたホラー映画が横たわっているはずなのだ。

あ、言い忘れていたが、もちろんあの“俊雄くん”だってキャスティングされている。母オバケも同様だ。だって本作の“シチュエーション”ってのは、結局、彼らを起点として形成されているのだから。

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