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2005/09/12

『阿修羅のごとく』

「失楽園」「模倣犯」など話題作を連発する森田芳光監督が、念願の向田作品と最強のキャスティングを得て生み出した日本映画史に残る傑作。父親の浮気を知った4人姉妹が「母に知れたらたいへん」と奔走し、またそれぞれに悩みを抱えながらもくじけずに生きていく。第16回東京国際映画祭にてオープニングを飾ったことはレッドカーペットの映像と共に記憶に新しい。

昭和54年、冬。三女の滝子(深津絵里)の呼びかけで久しぶりに姉妹が集まった。滝子が言うには父(仲代達也)に愛人がいるというのだ。彼女が雇った探偵(中村獅童)からの写真には、その女性と小さな男の子と共に公園で戯れる父の姿。このことを母(八千草薫)は果たして知っているのだろうか。いつも朗らかに笑う母の顔が皆の頭によぎる。だが、彼女達は他人の心配もよそに、それぞれにも悩みを抱えている。長女の網子(大竹しのぶ)は妻子ある男性との情事を重ね、次女の巻子(黒木瞳)は夫の浮気を疑いはじめ気が気でない。また、滝子は自分が雇った探偵のことが気になっていて、四女の咲子(深田恭子)は同棲中のボクサーと慎ましい生活を続けている。人の心には阿修羅がいるという。姉妹は励ましあい、罵りあいながら、日々、自分の答えを求めて懸命に生きていく。

映画がはじまって数分、四姉妹が正月明けの鏡開きでカラカラに干からびた鏡餅を見て「なんだかお母さんのカカトみたいだね」と笑う。このシーンでもう、ほぼノックアウト。私は彼女らが織り成す、ごく自然な雰囲気にすっかり取り込まれてしまった。そして彼女らが、生みの親として、女性として、限りない尊敬の眼差しを向ける母親役をまるで「そよ風」のようにこなしてみせる八千草薫の存在感には、見ているだけで拝みたくなるようなオーラが滲み出ていた。あと男性にとっては、仲代達也の見せるある種の“情けなさ”が本当に涙を誘いますね。何はともあれ、それぞれが主役を張るほどのビッグスターが集結し実現させた奇跡のようなコラボレーションと、そこで描かれる終始ダレることのない人間模様を、是非スクリーンでご覧になっていただきたい。

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