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2005/09/12

『25時』にテロ以降の米映画の潮流を見る。

収監日を明日に控えた主人公が最後の自由な空気を吸えるのはあと24時間。

いま、『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』のスパイク・リー監督が、愛すべきアメリカの歩み始めた新たな一章を重厚に描く。テーマは、“9.11以降のアメリカ”をいかに生き抜くか。デイヴィッド・ベニホフによる青春小説をベニホフ自身が脚色し、『ファイトクラブ』のエドワード・ノートン、『マグノリア』のフィリップ・シーモア・ホフマン、『プライベート・ライアン』のバリー・ペッパーといった芸達者な面々が揃い踏み。エンドクレジットには製作者の欄に「トビー・マグワイア」の名が連なっており、驚かされる。

モンティ(ノートン)はある日、瀕死の犬を発見し、ほんの成り行きでそれを助けたいと思う。次の瞬間に映し出される数日後の風景。いつしか元気な姿に回復した犬ドイルと共に、モンティは川岸を歩いている。だが、彼の心はドン底。あと24時間もすれば刑務所に収監される。麻薬の売人だった彼は誰かに売られ、そして運悪くパクられたのだ。周りの風景すべてが憎らしく見える。数多くの民族がひしめき合うこのニューヨークで、彼は最後の残り時間をどう過ごすべきか考えあぐね、その結果、幼なじみのジェイコブ(ホフマン)、フランク(ペッパー)に声をかける。突然の連絡にはじめは戸惑いながらも、彼らは次第に悩みを吐露しあうようになり、刻一刻と迫るタイムリミットの無情を噛みしめていく。

恐らくスパイク・リーの作品で初めて白人が主役にとなった作品だろう。『アメリカンヒストリーX』『ファイトクラブ』を経たエドワード・ノートンが、実に様々な役柄にリンクしているようでもあり、『10ミニッツ・オールダー』でもアメリカに辛辣な警告を発しているリーなだけに、本作でも鋭い切れ味の描写が光る。

“痛み"を施すその手に感じる“痛み”。“憎しみの連鎖”を打ち破るために必要な賢い知恵。人それぞれが内に秘めた“傷”を回復させることの意味。

本作はまるで詩を読んでいるかのようにそういったメッセージがスッと胸に入り込んでくる。変わりつつあるニューヨーク、新たな時代を迎えつつある“ブッシュ以降”のアメリカに想いを馳せるうえで重要な一作と言えるだろう。


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