« 『オアシス』 | トップページ | 『ハッピーエンド』 »

2005/09/12

『気まぐれな唇』

「ハッピーエンド」の公開と期を同じくして、これまた変わった味わいの韓国映画がお目見えする。ほぼ即興に近いカタチで撮影されたこのラブストーリーには、たった一週間という期限の中で生まれては消えていった男女3人の恋愛模様が鮮烈に刻み込まれている。監督はこれが劇場映画4作目となるホン・サンス。手掛けた作品のどれもが数々の映画祭で受賞を果たしているその手腕もさることながら、本作をカンヌ映画祭事務局に見込まれながら、その招待をあえて辞退するという驚きの決断でも韓国マスコミの話題をさらった。主演には、後に出演した「殺人の記憶」(日本では3月公開)で大ブレイクを果たしたキム・サンギョン。

ギョンス(キム・サンギョン)の職業は俳優。出演した映画が興行的に失敗し、次回作への出演もなくなって、気分がすこぶるどん底に落ち込んだ毎日。これではダメだとふと思い立ち、彼は思い切って旅に出ることにする。旅先では、美しいダンサー、ミョンスク(イェ・ジウォン)と知り合い、ふたりは思いのほか意気投合。次第に彼女は取り付かれたようにギョンスを愛し始める。旅の帰り道、列車に乗り込んだギョンスの隣にソニョン(チュ・サンミ)という女性が座る。言葉を交わすうちに彼の心はソニョンへと惹かれはじめ、別れの挨拶を交わした後、彼はたまらずその足で彼女を家までつけていく。たった一週間のうちに生まれては消えていく2つのロマンス、果たしてこの結末とは・・・。

「コーヒーにします?それとも私のダンスを見ます?」と聞くや否や、突然その場で踊り出してしまう、その自由な発想と自由な空間。“コーヒー”と“ダンス”が並列として扱われる不思議をどうこう言う前に、まずそのセリフをノートに書き写しておきたいという衝動に駆られ、しなやかな動きで魅せるダンスに心洗われる想いがする。だがそれらは時として、胸に深く突き刺さる凶器のように響くこともあり、「人として生きるのは難しい、でも怪物になるな」という具合に主人公へ浴びせられる罵倒には、実は誰の身にも覚えのあるとても日常的な風景にバックグラウンドが潜んでいるようにも感じる。気の利いたセリフとリアリスティックな映像の数々は、ちょうどよい間隔を保ちながら観客をリードする。こんなにも小さなラブ・ストーリーを、そんなに大袈裟ではない“等身大の芸術”へと引き上げられるその手腕の確かさに、韓国映画の勢いを思い知らされた想いがする。

|

« 『オアシス』 | トップページ | 『ハッピーエンド』 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/5905712

この記事へのトラックバック一覧です: 『気まぐれな唇』:

« 『オアシス』 | トップページ | 『ハッピーエンド』 »