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2005/09/26

『悪い男』

既に海外の映画祭ではお馴染みの顔にして、韓国映画界でひときわ異才を放つ監督、キム・キドクが「魚と寝る女」以来の堂々たるお目見え。東京フィルメックスなどでも毎年紹介されてきた監督作品にようやく時代が追いついてきたというべきか、2004年には彼の作品が4本も公開される運びとなりそうだ。時として垣間見られる残虐性とその真逆の繊細な感情描写との火傷するほどの温度差を例えて世界では「韓国の北野武」と評されることもある。

孤独なヤクザ男のハンギは、街角で見かけた女子大生ソナにひとめぼれ。次の瞬間、人ごみの中で彼女の唇を強引に奪う。すぐに騒ぎは大きくなり軍人に取り押さえられるハンギ。ソナからはツバを吐きかけられ屈辱感が押し寄せる。だが、彼は次の行動へと移行。それはソナを罠にはめて売春宿に送り飛ばす策略だった。作戦は成功。日々、客の相手をしてヤツれていく彼女を眺めながら、ハンギは複雑な感情に駆られていく…。

“悪い男"と呼ばれる男の顔は、そのファースト・カットから本当に“悪そう"だった。顔のつくりだけではなくて、なんかもう、根本的に悪いものを見た、って気持ちにさせられる。キム・キドクには恐れるものが何もない。映画とは似て似つかぬ端整でおとなしそうな顔をしながらも、彼がいったい何を見つめているのか皆目分からない。まるで子供にポルノを読ませるように観客の心を意図的に乱し、それにまともに付き合っていると神経がヒリヒリと火傷を負いそうだ。だが、そんな目を覆うような残虐性を包含しながらも、最終的には思いも寄らない芸術性と奇想天外な筋書きで観るものを圧倒する。その魅力に気付いたときにはもう虜になっている。キドク監督はベルリン国際映画祭に出品した新作「Samaritan Girl」で監督賞を受賞したばかり。我々がようやく本作へと辿りついたとき、彼はもう更に先の次元へと歩を進めている。

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