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2005/09/13

『CODE46』で、現地調達のSF世界を目撃する。

未来社会、上海。

“パペル”と呼ばれる滞在許可証が偽造されているとの報を受け、ひとりの男(ティム・ロビンス)が調査に乗り込む。容疑を掛けられたのはその印刷所の女性職員(サマンサ・モートン)。男は彼女が犯人と知りながらも運命的な衝動を抑えることができず、ふたりはいつしか不思議なほど自然と恋に落ちてしまう。それがCODE46と呼ばれる法規に違反するとは知らないまま・・・。

『イン・ディス・ワールド』のマイケル・ウィンターボトムが、『ミスティック・リバー』のティム・ロビンス、『マイノリティ・リポート』のサマンサ・モートンという最高の主演陣を擁して送る初の近未来SF。とは言うものの、そこには大掛かりな未来セットなどはいっさいなし。すべてはウィンターボトム流の空間の切り取り方によって出現する未来社会であり、それは新旧様々な建築物の乱立する上海という土地柄がなせるワザなのである。

結論から言うと、ここではものすごくドラマティックなことが起こったりすることはない。すべては『ひかりのまち』でヒロインがロンドンの夜街を彷徨っているシーンのような“情緒”に集約されている。音楽と映像とが見事に相俟ったこの心地よさは、ストーリーの充実というよりは極めてウィンターボトムの映像センスに負うところが大きく、彼はこれから先もそこにカメラがあるだけで数多くの同系作品を生み出すことができると思うし、また観客はそれを素直に「観たい」と欲するだろう。

最近の彼の作品では、ボーダーレスな語り口が顕著になってきた。自らのスタイルを確立しつつも、何かその先にあるものを静かに見つめ続ける気配が伝わってくる。巨匠の域に達しつつあるウィンターボトムが新たな作風に挑戦することを期待しつつ、やはりそこにも“ひかりのまち”がイコン的に横たわっていて欲しいと願う自分がいる。

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