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2005/09/12

『シー・ビスケット』

不況期のアメリカで多くの人々を勇気づけた一頭の競走馬をめぐる感動の物語。「カラー・オブ・ハート」に続いて2度目の監督作となるゲイリー・ロスがメガホンを取っている。主演は「スパイダーマン」のトビー・マグワイア、「ザ・コンテンダー」のジェフ・ブリッジス、「アダプテーション」のクリス・クーパー。脇には「マグノリア」のウィリアム・H・メイシーが笑みを浮かべて控えている。「ミスティック・リバー」「ビッグ・フィッシュ」に並んでアカデミー賞に最も近い作品のひとつとして注目が集まる。

大恐慌で家族が離ればなれになった記憶を引きずる騎手レッド(T.マグワイア)、孤独な調教師スミス(C.クーパー)、最愛の息子を失い失意の底にあったハワード(J.ブリッジス)。まったく別の人生を歩んでいるかに見えた3人は、シービスケットという1頭の馬を通じて運命的な出逢いを果たす。過去に絶望的なケガを負ったことのあるこの小柄の競走馬は、やがて3人の力がひとつに合わさることによって信じられないほどの快進撃を始め、出走時には全米がそのレースに釘付けとなった。そんな矢先、シービスケットは大事なレースでまさかの逆転負けを喫してしまう。「どうして後ろから来る馬に気付かなかった?」と激怒するスミスにレッドの衝撃的な告白が覆いかぶさる。実はレッドの右目は視力を失っていたのだ。騎手としての致命的なハンディキャップを乗り越え、いつしか家族以上の強い絆で結ばれる3人と1頭の馬。だが、そんな彼らに更なる試練の時が訪れようとしていた。

超満員の競馬場から漂ってくる熱気、蹄の音と共に舞い上がる土煙、そしてシービスケットがゴールを切る瞬間に湧き上がる大歓声。ふと気付くと知らないうちにこぶしを強く握り締めている自分がいる。メイン俳優3人(T.マグワイア、J.ブリッジス、C.クーパー)を軸とする重厚なドラマにも、その何気ないやり取りひとつひとつに心が温まる。この作品の根底に流れる「一度や二度のつまづきは、誰にでもある」というメッセージが主人公たち、不況期のアメリカ人、そして本作と出逢うすべての観客を勇気付けてやまないことだろう。ちなみに、まだテレビなど生まれていないこの時代を描くのに欠かせないのが当時の最大のメディア、ラジオ。今回、映画ファンにはお馴染みのウィリアム・H・メイシーがラジオの実況アナを演じており、「ラヂオの時間」を彷彿とさせる音のマジックとその巧みな話術が古きアメリカの香りをいっそう際立たせてくれる。アカデミー賞の前に是非チェックすべし!

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