« 『ペイチェック/消された記憶』 | トップページ | 『ゼブラーマン』 »

2005/09/12

『わが故郷の歌』

Marooned_in_iraq_3   
デビュー作「酔っぱらった馬の時間」で一躍国際的な注目を浴びたイランのクルド人監督バフマン・ゴバディによる、クルド民族音楽に彩られたヒューマン・ドラマ。2002年のカンヌ映画祭でフランソワ・シャレ賞を受賞した他、数々の国際的な賞に輝いている。ちなみに、主人公の3人は本物のクルド人ミュージシャンが演じている。

クルド人なら誰もが知っている大物歌手ミルザ。彼はかつての妻ハナレがイラクの地から自分に助けを求めているとの知らせを受け、居ても立ってもいられなくなる。同じくミュージシャンのふたりの息子を引き連れ、平穏なイランから戦乱のイラクへと決死の旅へ出発する。爆音のとどろく危険な状況の中で、彼らは行く先々の難民キャンプでクルド民族音楽を高らかに奏でる。彼らは果たしてハナレと再会することはできるのか…。

前作の「酔っぱらった馬の時間」を観た時のショックは大きかった。人間の極限状況で巻き起こる哀しさ、厳しさ、そして子供たちの言いようのない可愛らしさに、胸をえぐられるような想いを抱いたのは私だけではなかったはず。今回、ゴバディ監督は、序盤にエミール・クストリッツァ作品のような陽気な民族性を垣間見せつつも、舞台がイラク内に移ると同時にそこでの極限状態を容赦なく浮き彫りにしていく。状況がシビアになるにつれ底辺に響き続ける「どんな状況にあろうとも決して人々から歌を取り上げることはできない」という力強いメッセージ。どんなに苦境にたたされようとも、楽器の音色を聞くや身体が反応して踊り出してしまうこの哀しいほど単純な条件反射に、人間の尊厳、民族への賛歌、そのすべてが詰まっていることを気付かせてくれる。

|

« 『ペイチェック/消された記憶』 | トップページ | 『ゼブラーマン』 »

【地域:中東発】」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/5905667

この記事へのトラックバック一覧です: 『わが故郷の歌』:

« 『ペイチェック/消された記憶』 | トップページ | 『ゼブラーマン』 »