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2005/09/13

『グッバイ、レーニン』に見る“やさしい虚”

ドイツで公開されるや次々と歴代記録を塗り替え、ドイツアカデミー賞9部門に輝いた心温まるヒューマン・コメディ。監督は、ドイツ映画界の旗手として活躍するヴォルフガング・ベッカー。新星ダニエル・ブリュール、ベテラン女優カトリーン・ザースらがコミカルにそして涙ぐましく演じるバックには、あの『アメリ』のヤン・ティルセンによる音楽が、おもちゃ箱をひっくり返したかのような愉快さと哀愁をもって響き渡る。

ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。主人公アレックスは、社会主義に傾倒した母クリステリアーネと暮らしていた。ある日、心臓発作を起こし意識不明となる母。その8ヶ月後、長い眠りから奇跡的に目覚めた母だったが、その間にベルリンの壁はすっかり崩壊し、ドイツは劇的な変化を遂げていた。「一度でも強いショックを与えたら命取りになる」との医者の言葉に、もしも母が東ドイツの崩壊を知ったなら・・・と不安を抱くアレックスは、母を自宅に引き取った後も、東ドイツがずっと存続しているかのようなフリを装うのだが・・・。

近年稀に見る幸福感に満ち溢れた作品。まるで“ドイツ版・三谷幸喜作品”とでも言うべき団結力をもって、世紀の大芝居が展開する。興味深いのは、東ドイツと西ドイツの地図上の“横の関係性”に合わせて、地上と宇宙とを結ぶ“縦の関係性”が登場することだろう。東ドイツが周りとの接触を絶っていた時代にはこのようにして心の広がりを遥か上空に求めるしかなかったのだ。本作ではこの対比がいたるところでメタファーとして使用され、それ識してみることで、東側の人々の心の内を感じることが出来る。“フィクション”あるいは“物事の虚構性”といった部分が核となる構造は、『ライフ・イズ・ビューティフル』『アダプテーション』、そしてティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』などに見られる9.11以降の世界の映画製作シーンで見られる新たな特徴であり、現代という時代性の大いなる映し鏡として受け止めることができるだろう。

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