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2005/09/12

『午後の五時』

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世界に名高いイランの巨匠、モフセン・マフマルバフの娘にして、既にイランを代表する映画監督にまで昇り詰めた長女、サミラ・マフマルバフ。タリバン政権崩壊後のアフガニスタンを訪れた彼女は、まだまだ混乱の続くその地から、平和への祈りにも似た尊い物語を作り出した。撮影時、サミラは22歳。主演のアゲレも同年齢。まったく異なる環境に生まれ育ったふたりが、残り火のくすぶるアフガンの地で心から切望する社会とは、いったいどのようなものだろうか。

タリバン政権が崩壊し、長らく抑圧されてきた女性にも希望が生まれ始めていた。ノクレは、いまだに過去のしきたりから逃れられない保守的な父親には内緒で、日々学校へと通っている。ある日、「将来の夢を発表しなさい」との課題に彼女は「大統領になりたい」との途方もない構想を打ち明ける。偶然知り合った詩人の青年にも励まされながら、大統領の視点で見つめてみる我が故郷。そこは、自由になったといえどもまだまだ問題の山積する過酷な国だった・・・。

いまこうしている間にも世界では貧困に、そして暴力に怯える国々がたくさんあり、しかし日本人である僕達にはそのすべてが他人事のように思えるかもしれない。いまだにアフガニスタンがどこにあるのかを地図上で指し示すことすらできない僕に、決して説教臭くなく、同じ地球上に暮らすひとりの人間の姿をあくまで等身大で伝えようとするサミラの真摯な目線。劇中で安易なハッピーエンドに陥ることを拒否し、その結末を観客それぞれに託してみせた手法にも、彼女の映画というメディアへのゆるぎない信頼を感じ取ることができる。

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