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2005/09/13

『イン・ディス・ワールド』で、決して語られることのない世界の裏側を知る。

いまや英国を代表するまでに登りつめた『ひかりのまち』『24アワー・パーティー・ピープル』などの実力派マイケル・ウィンターボトム監督。彼が本作で選んだ題材はアフガン難民の少年が英国を目指しひたすら過酷な旅を続けるロードムービー。その現実ともフィクションとも区別のつかぬリアルな描写が観客、批評家の心を掴み、本作は2003年ベルリン国際映画祭にて金熊賞(最高賞)受賞する快挙を成し遂げている。

主役を演じるジャマールは、細長い目が印象的な男の子だ。いつも笑っているのかしかめっ面をしているのかよく分からない表情で行く先をじっと見つめる。アフガン難民の彼は、ある日、従兄弟のエナヤットと共によりよい生活を求めて英国を目指す旅に出る。もちろんビザも何もない彼ら。正式なルートをたどるべくもなく、その運命を各国にはびこる“運び屋”に委ねることとなる。言葉や文化の違いによる不信感やいらだち、警察や軍隊による執拗な取調べ、生命の保障もない決死の越境。彼らの前には数々の困難が立ちはだかる。ふたりは果たして無事、英国にまでたどり着けるのか・・・。

ウィンターボトム監督のこれまでの作風と同じく“痛み”を感じる描写も多い。しかし、それと同じくらいにふとしたきっかけで飛び込んでくるとてつもなく“温かな”描写に心を潤されるのも事実。例えば、日中はあまりに厳しい現実を突きつけていた街が夜になると幻想的なイルミネーションを放ち、それはまるで99年の監督作『ひかりのまち』で描かれたロンドンのように温もりのある味わいを見せる。出逢いがあり、別れがあり、やりきれない過酷な人生があり、それでも立ち向かわなきゃならない決意がある。そのすべてをタイトルの「イン・ディス・ワールド」がすっぽりと包み込んで、今日も地球は回っている。

僕は本作を劇場で観終わった後、ついつい街の喧騒の中についジャマールの姿を探してしまった。イルミネーションに照らされながら、彼がいまでも旅を続けているような余韻が心地よく残る。


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