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2005/10/03

『ホテル・ルワンダ』がついに公開決定!!

アカデミー賞3部門にノミネートされたにも関わらず日本でのお蔵入りすらささやかれていた秀作『ホテル・ルワンダ』の公開が決定した。

で、そんな「映画公開の決定」くらいで何の騒ぎなの?という方もきっとおられるだろうから、ざっと事の経緯をご説明しよう。

本作の舞台は1994年のアフリカ、ルワンダ。大統領暗殺をきっかけに多数派のフツ族がツチ族を次々と虐殺しはじめ3ヶ月で約100万人が殺されていく中、ドン・チードル演じるホテル・マネージャーは成り行きで自分の勤務先に大勢のツチ族をかくまこととなり、この行動で結果的に1200人もの人々が命を救われることとなる。いわばアフリカ版『シンドラーのリスト』といった内容だ。

事件当時、国際社会が「アフリカで起きてる事件なんて」と全く関心を示さなかったことが虐殺を助長した。本作で叫ばれるのはその「無関心」への抵抗でもある。歴史は繰り返されるもの。10年を隔てた今でもアフリカ・ダルフールでは同様の虐殺が続いている。いまこのときに『ホテル・ルワンダ』が製作されたことの意味は大きい。本作はアメリカをはじめ多くの国々で絶賛され、その頃から注目していた日本の映画ファンには「いつ公開されるんだろう」とずっと気を揉んでいた方も少なくないだろう。

しかし日本の映画業界が下した判断は予想もつかないものだった。アフリカが舞台、虐殺というテーマ、そして無名の黒人俳優、この3要素が災いして「日本では商売にならない」と結論付けられ、一気に「お蔵入り」の道へと追いやられてしまうという異常事態が巻き起こった。しかし1994年のルワンダ虐殺、そして今でも続く無関心の連鎖を断ち切ろうとして生まれた映画がまぎれもない『ホテル・ルワンダ』であり、それをこの日本で拒否しようとする「無関心」は、もしかするとアフリカ以上の問題をはらんでいるのかもしれない。これは日本という国が陥った深刻な病なのだ。

もちろんこれにはアメリカの配給会社が提示した巨額の権料も大きく要因している。海外ではシネコンのような劇場でも多数公開されていた作品だ。もちろんそれだけの国際的評価も勝ち得ているのだし、そもそもアカデミー賞にノミネートされることは配給権の高騰につながりかねない。その意味で本作が日本で公開される道は初めから茨で埋め尽くされていたのかもしれない。『ホテル・ルワンダ』の商業的価値に言及するとき、誰もが口を閉ざさずにはいられない状況が訪れていた。「秀作ではあるが商売にはならない。」多くの関係者がそのような閉塞感を胸に抱いていた。

そこを映画ファンの手によって打開しようとしたところがこの映画の脱出口だった。日ごろ誰もがハリウッドハリウッドした一辺倒パターンの映画に辟易している。「そんな秀作なんだったら見たい!」とインターネットで口コミが広がり、同じネットを通じて映画ファンが集い署名運動にまで発展した。狙いはまさしく米配給会社と国内配給会社との中間領域だ。つまり、時期が長引くほど本作の配給権料は下がり、映画ファンが「この映画が見たい!」と口コミを拡げることで日本国内の本作に対する需要率は高まる。そして両者の数字が合致するタイミングが早く訪れるほど、日本で公開される時期も早まるという構想である。もちろんその中央には“作品の質”がすえられる。誰もが納得しうる作品であるからこそ公開運動は順調に展開し、集められた署名は「日本国内の関心」のバロメータ、あるいは口コミを加速させるためのツールとして機能した。結果的に今日にいたるまでに多くのメディアにも露出し、公開というスタートラインに立つ以前より本作は「騒がれる作品」としての価値を獲得していった。

そして本日、『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会HPにて「緊急報告」が行われた。

ついに劇場公開が決定である。配給はメディア・スーツ。現在のところ正月第二弾公開に向けて調整中だという。決定している上映館は渋谷にあるユーロスペース。まもなくリニューアルに入り、渋谷シアターN。同社としては、ここでの興行成績などを基にして徐々に全国へと展開していきたい構えだ。

“映画ファンが従事した公開運動”としては、まさに『ゴッド・アンド・モンスター』に続く規模のものといえるだろう。そして中心となったメンバーがインターネットにおけるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して集結したこともこの時代性と合致する。

世界中にはまだまだ多くの名作が埋もれている。本活動が成功か否かはまだまだ国内での興行成績を踏まえなければ分からないが、少なくとも未公開作が公開されるためには何が必要かを本活動は教えてくれる。多くの者が公開を求め、それがやがて沸点に達しさえすれば、その映画は公開されるのである。

世界が、そして日本が「無関心」の連鎖を打開するタイミングはどこかしこに溢れているのである。

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