『キングダム・オブ・ヘブン』は『グラディエーター』並に面白いか?
既に本作をご覧の方はこちらの超ロングバージョンをご覧ください。
リドリー・スコットといえば猛々しいストーリーを芸術的なまでの描写力をもって繊細に表現する監督として名高いが、それにしては最新作『キングダム・オブ・ヘブン』への評価は段違いに低かった。しかし正直言って僕はこの映画に圧倒された。もちろん史実をベースとしたにもかかわらず本作のストーリーは『グラディエーター』に似ているとされてもいささか仕方のないものではあったが、それでもエルサレムを舞台にイスラム教徒とキリスト教徒が束の間の平和なときを保ち、いつしか狂信的な人間によってそれがもろくも崩れ去るときの儚さは胸に染みてやまない。過去と現代とは1ミリの成長も見られないのだ。その無力感に息が出来なくなりそうだった。
イスラムの指導者は、主人公を演じるオーランド・ブルームの問いかけにこう答える。「エルサレムは我々にとって“無”であり、そして“すべて”である」。
リドリー・スコットは本作『キングダム・オブ・ヘブン』のアメリカ国内での興行収入において制作費すらも回収できなかったと聞く。それこそ彼にとって本作とは“無”であり“すべて”ということになるのだろう。
オーランドの周りを取り囲んだリーアム・ニーソン、デビッド・シューリス、ジェレミー・アイアンズといったベテラン俳優陣がとにかくカッコいい。そして忘れてはいけないのがキリスト教側の指導者を演じたボードワン3世。病気のために鉄仮面をかぶって登場する彼を演じるのはエドワード・ノートンだ。彼が素顔をさらすことは一度もないが、それでもあの“なで肩”と落ち着いた声のトーンですぐに彼だと察しがつく。いや、何よりもその神聖なまでの存在感は注目に値する。
そういえばリドリー・スコット作品『ハンニバル』ではあのゲイリー・オールドマンがこれまた素顔を見せない演技にて特別出演を果たしていた。エドワード・ノートンはこれまでリドリー作品への出演はなかったものの、この“ハンニバル・レクター”シリーズ最新作の『レッド・ドラゴン』(ブラッド・ラトナー監督作)にて主人公を演じている。思えばその頃からハリウッドの“ヒットを保証するための豪華キャスト揃い踏み”作戦は受け継がれてきたような気がする。『レッド・ドラゴン』はおなじみアンソニー・ホプキンスにノートンを加え、レイフ・ファインズ、エミリー・ワトソン、ハーヴェイ・カイテルなどいかにも映画ファン受けしそうな(彼らさえ出演すればある程度の評価は確保できたも同然というような)キャスティングになっている。
昨今におけるリーアム・ニーソンの多用(しかも何かと師匠役として)はこの役者としての納得材料として機能しているの思うのだが、『バットマン・ビギンズ』におけるインタビューで彼は「もうこんな師匠役はやらないよ」とも答えていて興味深い。
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