« 『ほえる犬は噛まない』はどちらかというと日本人の感性に近い傑作ガールズ・ムービーだ。 | トップページ | パク・チャヌク最新作『親切なクムジャさん』は残虐ファンタジーの秀作だ。 »

2005/10/07

トニー・スコット最新作『ドミノ』にみなぎるパワーに圧倒される。

トニー・スコットといえば世界で最もカッコイイ映画を作り出す監督のひとり。その力量はアカデミック色を追い求める兄・リドリーよりも上と思われる瞬間も多い。

そんなトニーの最新作『ドミノ』が10月22日より公開。さっそく試写に行ってきた。

キーラ・ナイトレイが演じるタイトル・ロールは実在した女バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)“ドミノ・ハーヴェイ”なのだが、この女性、実はトニー・スコットと親交の深い人でもあった。彼はかねてより彼女の波乱に満ちた半生について映画を作ろうと画策してはいたものの、なかなかいい脚本が上がってこない。数年の歳月を経てようやく納得のいく脚本、納得のいくスタッフ、キャストを集められ、いよいよ撮影がスタート。

しかしこの待望の瞬間に肝心のドミノはもうこの世にいなかった。危険を顧みない性格が災いを招いたのか、ある日突然に原因不明の死を遂げてしまったのだという。

この映画では主人公の「死」までは描かない。恐らく本作はトニーによるドミノのための「弔い合戦」のようなものでもあると思うのだが、そこに発露してきたものは「死」をイメージさせるというよりは、むしろ意外なほどに「生」に満ち溢れ生き生きしたものだった。

ここにトニーの作家性が現われる。ドミノという女性をとにかくカッコ良くフィルムに収めてしまうところに彼のフィルモグラフィーに連なる真摯な姿勢が伝わってくる。そして本作はどういうわけか『Shaft』のようなブラック・ムービーにその形態を借り、そこに広がる複雑な相関図の中に“ファミリー”以上の関係性を築き上げることで、トニー自身もこの映画づくりをとことん楽しんでいるような雰囲気を伝えてくる。エンディングで登場人物のフラッシュバックと共に「Keira(キーラ・ナイトレイ)」「Mickey(ミッキー・ローク)」とそれぞれの名前が名字を省かれた状態で添えられる。その手法にはまさに家族的な雰囲気のよさを感じ取ることができ、その最後を飾る人物に我々は注目せずにいられないだろう。

僕はそのとき、是枝裕和の『ワンダフルライフ』という映画を思い出していた。人が死んで天国へ行くとき、その人の一生の中でいちばん幸福な瞬間を映像化して鑑賞するというストーリーだった。この『ドミノ』もおんなじだ。ドミノ・ハーヴェイにまつわる最もカッコイイ映像をトニー・スコットが手がけたというわけだ。それが彼なりの弔い方ということなのだ。

画面はいつも以上にチャカチャカと動き、ほとんどすべての場面に特殊効果が施される。そしていつもどおりの文字情報(字幕)の多用。バウンティ・ハンターの映画らしくその文字もレジスターで金を精算するときの「キャシャーン!」という音と共に飛び出し、「This fim is based on true story」と表示された直後、再び「キャシャーン!」と鳴り響いて「a sort of・・・」とくる。このカッコ良さといったらない。

試写が終わって立ちくらみがするほどの視神経の疲労を感じた。その分、脳はこれでもかってくらいに活性化。アドレナリン過剰放出。2時間7分、決して立ち止まらないし、立ち止まれない。トニー・スコット。この60を過ぎたばかりのオッサンはいったい何者なんだろう。『エネミー・オブ・アメリカ』『スパイ・ゲーム』『マイ・ボディガード』『ドミノ』と連続する大作にハズレなしだ。今後も『Emma's War』『The Warriors』『Deja Vu』と新作予定が次々と待機中。トニーのこの骨太さ、愚直なまでの繊細さを絶対にスクリーンで体感して欲しい。これは全身で浴びる映画だ。しかし目が痛いよ、トニーのやつめ。

|

« 『ほえる犬は噛まない』はどちらかというと日本人の感性に近い傑作ガールズ・ムービーだ。 | トップページ | パク・チャヌク最新作『親切なクムジャさん』は残虐ファンタジーの秀作だ。 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/6291376

この記事へのトラックバック一覧です: トニー・スコット最新作『ドミノ』にみなぎるパワーに圧倒される。:

« 『ほえる犬は噛まない』はどちらかというと日本人の感性に近い傑作ガールズ・ムービーだ。 | トップページ | パク・チャヌク最新作『親切なクムジャさん』は残虐ファンタジーの秀作だ。 »