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2006/04/01

4月1日は、マーヴィン・ゲイの命日。

マーヴィン・ゲイがこの世を去って22年が経過しようとしている。自分の父親に射殺されるという、あまりに衝撃的な最期を迎えた彼。その翌日は自身の45回目のバースデーだった。

そもそも僕がマーヴィン・ゲイを初めて知ったとき、既に彼はこの世の人ではなかった。僕はSPEECHの「Like Marvin Gaye said(What's going on?)」という曲のサビ部分でサンプリングされたマーヴィンのシャウトを何度も聴いた。「What's going on!?」と問いかける彼の歌声が、圧倒的なパワーと慈愛を帯びて腹にズシンと沁み渡ってきた。

その後、吉祥寺のCDショップでオリジナルの楽曲を買い求め、それを何度となく耳にした。もちろん、田舎から上京したばかりのバカ大学生にその歌詞の意味なんて分かるはずもなく、優しいメロディに乗せ「What's going on!?」と問いかけるマーヴィンの歌声に、僕は「そうだよな~、バイトも勉強もしないで、ほんと俺、何やってんだろう~」と勝手に反省を決め込んでいた。それがベトナム戦争や環境のことやら全部をひっくるめたこの世界の先行きを案じた歌だって知ったのは、それから随分経ってのことだった。

エイプリル・フールの軽いジョークが飛び交う中、今年もマーヴィン・ゲイの命日が巡ってくる。さすがに22年も経てばそのニュースもかなり色褪せてきた。しかし今年は少しだけ違った面持ちで、彼に想いを馳せられそうな気がする。というのも昨年末、彼の伝記映画の製作が発表されたからだ。本格的な製作は今年5月に始まり、順調に行けば2007年に劇場公開される見通しだ。タイトルは83年に発表されたグラミー賞受賞ナンバーにちなんで、『Sexual Healing』。

Midnight_love_1 現時点で発表されているストーリーラインによると、本作はマーヴィンがモータウンと決別しベルギーへ移り住むあたりからスタート。その後の経済的破綻やドラッグ中毒といった私生活での苦悩を乗り越え、コロンビア移籍後の82年に発表した大ヒットアルバム「Midnight Love」(収録曲の“Sexual Healing”は83年にシングルカットされる)で奇跡的カムバックを果たすまでを、プロモーターのフレディ・クルサートとの友情を織り交ぜながら描くことになるらしい。

こうして文字で紹介すると、それは『Ray』や『ウォーク・ザ・ライン』と同系列の音楽伝記モノ、あるいは「伝説的ミュージシャンが幼少期の精神的トラウマを中年期になってようやく乗り越えるまでを描いた感動ストーリー」といった構成となることが推測され、それは一抹の不安(3匹目のドジョウを狙っているような商売的な危なっかしさ)を感じさせもするが、いまはただ、これにマーヴィン・ゲイのパワフルで慈愛に満ちた歌声が加味されることで珠玉の名作が誕生することを心から祈りたい(しかしながら、製作に関しては随分と遅れが生じているようです。このまま立ち消え、なんてこともあるかもしれませんので、まあ、気長に待ちましょう)。

本作の監督と脚本を担当するのはローレン・グッドマン。これまでの実績がほとんどないだけに、彼の実力のほどは未知数に近い。一方、主演に加えて製作者の一人としても名を連ねるのが、ジェシー・L・マーティン。「…誰?」という声も聞こえてきそうだが、「ロー&オーダー」や「アリーmyラブ」といったTVドラマで名を広める一方、96年にオフ・ブロードウェイで生まれた傑作ミュージカル「RENT」で主演のひとり“コリンズ”を演じてその人気を確固たるものとした。

Jesse_l_martin_2 …とここまで説明しても「…誰?」と呟く人(ひと月ほど前までは僕もそうでした)に朗報。実はこのミュージカルが、このたびクリス・コロンバス監督(「ハリー・ポッター」シリーズ)によって映画化され、4月29日より全国ロードショーとなる。主演のほとんどがブロードウェイのオリジナルキャストで占められたこの映画版では、もちろんジェシーも“コリンズ”として登板。そのパワフルさと繊細さを兼ね備えた名演&歌声の魅力を余すところなく披露している。劇場に足を運ばれる方は、この映画に魅了されると共に、時々ふと我に返って「こいつがマーヴィン・ゲイかあ…」と品定めしていただきたい。

何はともあれ、今日はマーヴィン・ゲイの命日である。

ご自宅に彼の音源をお持ちの方は、早起きがてら彼の歌声にちょっと耳を傾けてみてはいかがだろうか。そういう僕も先ほどからオリジナルの「What's going on?」を10回くらいリピートさせている有様だ。何度聴いても腹にズシンと来る感覚は変わらない。肉体が死んでも魂(ソウル)が残るとは、きっとこういうことを言うのだろう。

*J-WAVEで2006年11月15日にオンエアされた小林克也さんの番組で、マーヴィン・ゲイが特集されてました(リンク先のバックナンバーをチェックしてみてください)。

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