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2006/12/22

『リトル・ミス・サンシャイン』

ついにこの最強のインディペンデント映画、『リトル・ミス・サンシャイン』が日本にやってきた。カリフォルニアで開催される美少女コンテストに娘を出場させるべく、アリゾナに住む風変わりな家族がいざミニバスで旅へと繰り出すロード・ムービー。もちろん旅の途中でのトラブルやエピソードも満載なのだが、いや、その出発前からして、この映画はもう、その立ち上がりの時点でどうしようもない笑いがこみ上げてくる。

なにしろこの家族のキャラクターがとにかくハンパじゃない。ニーチェに心酔するあまり「無言の行」に突入してしまった長男の(ポール・ダノ)顔立ちはどこかあの「モナ・リザ」を彷彿とさせるものがあるし、旅の途中から“白い布”と化すおじいちゃん(アラン・アーキン←助演男優賞受賞)は愛娘のダンス師匠としてクライマックスまで抜群の存在感を発揮。『40歳の童貞男』ことスティーブ・カレルは、同性愛のもつれで自殺未遂を巻き起こした叔父として常に周囲の気を揉ませ、二言目には「勝ち組になれ!」と家族を鼓舞して(怒らせて)やまないお父さん(グレッグ・キニア)は結果的に自分が負け組だし、お母さん(トニー・コレット)はそんな個性的なみんなのフォローでいつも手一杯。まさにハリウッド映画における名脇役たちが集結した“ドリーム・チーム”というべきこの家族の面々が、何かと個性をぶつけ合いながらも、その気持ちのど真ん中では一家の幼い娘を大事に思い、スクラップ寸前のミニバスでフラフラに蛇行を繰り返してミスコン会場を目指す。

その家族の真ん中で燦然と輝く幼い娘オリーヴを演じるのが弱冠10歳の名女優、アビゲイル・ブレスリン。この子、どっかで見たことあるなと思っていたら、なんと『サイン』でメル・ギブソンの娘役を演じた子役だった。今年の東京国際映画祭の主演女優賞を受賞したのも彼女だったのだが、そんな受賞歴など道端の溝にでも放り出したくなるほど風変わりな可愛らしさ(ポッコリお腹&メガネ)で最高に輝いている。いや、彼女が輝けるのも他のムッツリ顔の芸達者たちがカメラの前や後ろでしっかりと彼女を支えているからであり、こんなバラバラな家族が心のどこかで娘のことをいちばん大切に思い、その純粋な笑顔を守るためならばどんな困難だって辞さない彼らの無言の合意に思わず胸が熱くなる。

彼らは旅の果てにいったい何を見つけるのか?そして肝心の美少女コンテストはオリーヴに微笑むのか?やがて観客は「勝ち組」「負け組」そして「オンリー・ワン」といったあらゆる死語の祝祭を乗り越え、もはやその評価自体がバカバカしくてこの映画の前には何の意味も持ち得ないことに歓喜するだろう。

黄色いミニバスには、いろんな価値観が隣り合って座っている。時には互いに衝突し、バラバラになりながら、それでも彼らは前に踏み出さなきゃ始まらない。とっくにエンジンのかからなくなった車体を「せーの!」で押して前へ進もうとする家族の姿に、現代を生き抜くための最良の元気をもらった気がする。運よくエンジンかかったらすぐに車に飛び込め!そのままガタガタ揺れながら、全力でハイウェイをぶっ飛ばせ!

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この2006年最大の伏兵が、いよいよ6月2日DVDリリース。リック・ジェームスの「superfreak」に合わせて刻まれるアビゲイルちゃんの灼熱ダンスがいよいよ家庭にまでやってくる・・・。そして本作で一気にアカデミー賞脚本家となった新鋭マイケル・アーントによるスクリプトも発売中。

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