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2007/01/19

きみに読む物語

00年代に入って映画のジャンルなど語り尽くされたものと高を括っていた。まさか高齢者の視点で綴られるラブストーリーが現れようなどとは思ってもみなかったのだ。

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介護施設で暮らす孤独な老女のもとに、またあの男がやってくる。御歳65歳くらいだろうか、小奇麗な恰好をした誰にでも気さくな男性だ。定期的に訪ねては老女の話し相手になってくれる。今日もまた彼は老女のもとで一冊のノートブックを取りだして、ストーリーを語り始める。それは情熱的な愛の物語。1940年代、逆境をものともぜずに、力強い運命の糸を何度も何度も手繰り寄せていく、若い男女のクロニクルだった・・・。

原作のニコラス・スパークスは、『メッセージ・イン・ア・ボトル』も手掛け、「最後の初恋」や"Dear John"、"The Last Song"という映画企画も上っている。主に男女の恋愛を主軸に、うねるような人生を重ねて描いていく手腕はまるで『タイタニック』のよう。多くの女性ファンを獲得してきた理由がよくわかる。

また本作には大きな秘密が隠されており、それをひとつの仕掛けとしながらも、決してそれのみに依存することはない。それは通過点であり、きっかけに過ぎない。ニック・カサヴェテスによる人間の心のうごめきを丁寧にすくいとった描写が、うつくしくも着実に、観る者の胸をつまらせるのである。

この人は原作を映像へと翻案する術を熟知している。映像から湖の照り返しや夕暮れどきの黄金いろに染まる山並み、草の香りや雨粒が肌に衣服を貼りつかせる様に至るまで、“ノートブック”に記された記憶の集積を濃厚に蘇らせる。ふと、ニックの父でありインディペンデント映像作家の父と言われるジョン・カサヴェテスはどうだったかな、と想いを馳せてしまう。また本作ではニックの母ジーナ・ローランズが老女の役を担う。ついにそんな時代がやってきたかなと感慨深いものが込み上げてくる。

これは歳を経た男女をつなぐ、ひとつの「ラブストーリー」。また決して豪華で特別な話ではなく、誰もが共通して胸に秘めた、それぞれの唯一無二のストーリーへと繋がっていく妙味がある。おそらく、あらゆる想いは、口をついて人から人へと伝えられたとき、はじめて「物語」の姿を獲得する。

その物語の誕生の瞬間に立ち会うふたりの男女の、生き生きとした表情が忘れられない。老いても、若くても、脂がぎっとり乗り切っていたとしても、たぶん、この想いだけは生涯変わり得ないものなのだろう。

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The Notebook
監督:ニック・カサヴェテス、原作:ニコラス・スパークス
出演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ
ジェームズ・ガーナー、ジョーン・アレン
(2004年/アメリカ/123分)ギャガ=ヒューマックス

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