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『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』

 「ジャンク・ムービー」だからといって見た目だけでスルーするのは速すぎる。時にジャンクの表層を身にまといながらもその内側では途方もない情熱をたぎらせた映画に出逢うことがあるが、この『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』はまさにその手の作品と言っていい。うっかりタランティーノやガイ・リッチーの二番煎じのようにカテゴライズされてしまいがちだが、忘れてはいけないのがこの監督名だ。

 「ジョー・カーナハン」

 トム・クルーズ製作の『NARC』という映画で注目を集め、その後、『M:I-3』の監督に当確とされながらも、製作側との方向性の違いによりいさぎよく降板した男だ。彼が監督を引き受けていれば『M:I-3』はもっと密度の濃い作品に仕上がっていたことだろう。

 そのカーナハンが『M:I-3』の代わりに作り上げたのがこの『スモーキン・エース』だ。それは、ギャングのボスを裏切ったひとりのターゲットを狙って、世界中から凄腕の殺し屋たちが集結してくる物語。そこにFBIやら、身柄引受人やら、ボディガードや、カラテの大好きなヘンテコなガキなんかも加わって、人物相関図はまるで戦国時代のような群雄割拠状態へと陥っていく。

 ターゲットの男“エース”の隠れ家はホテル最上階のスウィート・ルーム。厳重な警戒網を掻い潜って、次々と専用エレベータを使って上階へと向かっていく侵入者たち。変装のプロがボディガードに成り済ませば、セクシーな殺し屋ジョージア&シャリスはド迫力の連係プレーで窮地を脱し、何故か武器にチェーンソーを忍ばせるトレモア三兄弟は見た目どおりのアナーキーな破壊の限りを尽くし、それに対抗する身柄引き受け人のベン・アフレックご一行は、冒頭でこそ狂言回しの役を引き受けるのだが、驚くほどぞんざいな扱いを受けて(ブラボー!)突如としてスクリーンよりフェイド・アウトしていく。

 まあ、とにかく観ているだけで無条件に楽しいのは当たり前として、本作は恐らく先に挙げたような“タランティーノ的なもの”“ガイ・リッチー的なもの”(そうした誰もが一度は取り組んでみたいジャンルなのだろう)を夢見ながらも、いつしかカーナハンの化けの皮がだんだんと剥がれ、最終的には極めてオリジナルな、とてつもない熱いエモーションがすべてのキャラクターから勢いよく噴き出してくるのである。監督にとっても観客にとっても“誤算”となりかねないこの作風の変容ぶりが、どういうわけかフタを開けてみれば極上の化学変化となって効いているのだから面白い。

 有名俳優はほぼ皆無だし、ジョー・カーナハンという監督名だって一般的知名度はゼロに等しいが、ここにはひとたび映画に触れれば、絶対に記憶しておきたい幾つもの要素が詰まっている。

 時としてジャンクの中には宝石が潜んでいる。いつもの100円バーガーを頼んだつもりが、間違ってモスの「匠バーガー」が供されてしまったかのような、そんな予想外の「うめえ!」体験。きっと劇場を後にする人たちも、思いもよらない満足気な表情を浮かべながら力強く闊歩することになるはずだ。

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