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2007/12/22

『ナショナル・トレジャー2』

 前作はあまり真剣には見ていなかったが、前にWOWOWでチラッと見かけたときに結構ちゃんと作られていて驚いたことがある。ここで言う「ちゃんと」は、イマジネーションをCGに頼り過ぎずにまとまりよく転がしていける演出力、構成力があるかどうか、ということだ。これだけ詰め込み型、企画先行型でありながら、外せないポイントで一個一個綺麗に得点を重ねていた。

 で、この1作目のポイントは、彼らが命がけで探求する財宝を、視覚的に「見せるか」「見せないか」ということだった。結論として彼らは「見せた」。その対極にあるのが2003年に原作が出版され、2006年に映画化された『ダヴィンチ・コード』なのかもしれず、ルーブルに始まりルーブルに終わるこの作品は遂にその具体的な“トレジャー”を視界にさらすことはなかった。そして両者は製作者側にとっても意識せずにはいられなかったみたいで、『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』にはメガネにジャケット姿のニコラス・ケイジが、思わずトム・ハンクスのように映るシーンがいくつか見受けられる(それは大方、髪型のせいだと思われるのだが)。まあ、2004年の暮れに公開された『ナショナル・トレジャー』自体が、そもそも「ダ・ヴィンチ・コード」のヨーロッパ的謎解き要素をアメリカンにアレンジしたものとも受け取れるし、映画版『ダ・ヴィンチ・コード』がお世辞にも良い出来だとは言えなかった結果を受けて、その反省要素を巧みに反映させたのが、今回の『ナショナル・トレジャー2』と言うこともできるだろう。ストーリーでは負けるが、映像では負ける気がしない、といわんばかりに。

 本作は、アメリカ史をさかのぼったところの始点、リンカーン暗殺を中心に、自由の女神、英国女王、ラシュモア山に至るまで様々な伝説を捲くし立てて、縦列に並べて、まるでベルトコンベアーのように猛スピードで繋げていく。後から考えると勢いだけで、決してそのひとつひとつを掘り下げず、なんだか狐につままれたような感じもしてしまうのだが、観ている内はそれなりに流れに乗って面白く観れるので、文句はない。僕が子供だったら意味も分からず「インディ・ジョーンズ」が現代に降臨したかのように熱狂したかもしれない。

 ただ哀しいかな、僕はもう大人なのだ。そして大人としてのポイントはやはり、上記で示した「見せる」「見せない」の境界線だろう。1作目と「見せる」というスタンスを取った本シリーズは2作目でもとことん見せる。財宝も見せるし、現職大統領だって登場する(まさかあの「13」という数字にまつわる映画の出演者がそのままの役を演じているとは。ちなみに『オーシャンズ13』ではない)。

 エド・ハリス、ジョン・ヴォイト、ハーベイ・カイテルと、これほどの俳優陣を並べられれば、映画ファンも文句はないだろう。でも製作陣はまだまだ攻めの手を緩めない。さらにダメ押し。昨年のアカデミー女優賞をかっさらった『クィーン』のエリザベス女王こと、ヘレン・ミレンも登場するのだ。

 本作でニコラス・ケイジがバッキンガム宮殿に忍び込むシーンではエリザベスが登場することはない。その代わりに場所を変えて、ヘレン・ミレンはエリザベス女王とは全く違った存在感で姿を現す。そして彼女がビクトリア女王の書簡を手にするシーンがあるのだが…時と時間を越えて、エリザベスとビクトリアが握手を交わしたかのようなこの演出。ワザとやってんだろう。思わず笑みがこぼれる。

 そんなヘレン・ミレンやジョン・ヴォイト、それにエド・ハリスといった大俳優たちが、よりにもよって終盤、水浸しになりながら這いつくばって演技しているのだから、こんな優越感はない。それだけでも充分に楽しめし、けっこう高齢な出演者(ハーベイ・カイテルなんてもう68歳なのだ)たちには、心から「お疲れ様!」と伝えたいところだ。

 『ダ・ヴィンチ・コード』とは違って映画発のアイディアなので、宗教論争の火種になるようなこともまるでなし。終盤のシーソーゲームも、先人が仕掛けた罠だとは主張されるものの、まるでいずれはディズニーランドでアトラクション化されることを予測したかのような仕掛けっぷりで、これはまた先住民も先見性に長けすぎていたことよのう、と感心すらしてしまう。

 いや、ここまでマーケティング主義に彩られながらも、それをうまい具合に反転させ、何か重要な線引きの部分で映画としての面白さを充分にクリアしているのだから、その化学変化たるやたいしたものだ。こんなのを見せ付けられると、ブラッカイマー作品も安易に捨て置けなくなるじゃないか。彼の子猫ちゃんに成り下がらず、きちんと本領発揮したジョン・タートルトーブ監督にも感心した。

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2007/12/10

『やわらかい手』

「300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、とてもお手軽な文系スポーツ。というわけで、今回のお題は『やわらかい手』です。

酸いも甘いも噛み分けた彼女の笑顔が忘れられない

愛する孫を難病から救いたい、でもお金がない…。ってなわけで、平凡な主婦マギーが職探しに立ち寄った先は、なんとロンドンの風俗店!しかしそこでの“接客業”が男たちの間で大ブームとなってしまうのだから、世の中は本当に素敵な奇跡で満ちている。伝説の女優マリアンヌ・フェイスフルが苦難の自分史を投影したかのような神々しい演技を見せれば、『アンダーグラウンド』の主演が記憶に残るマイノロヴィッチも、いかつい体格で飄々とした存在感を注入。危なっかしい題材はいつしかサナギから見事な蝶へ。泣いて、笑って、ラストにはとびきりの勇気と希望をくれるこの人間賛歌、まさに「第九」に匹敵する2007年屈指の“映画締め”と言えよう。

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やわらかい手
監督:サム・ガルバルスキ
出演:マリアンヌ・フェイスフル、ミキ・マノイロヴィッチ
(2006年/イギリス=フランス=ベルギー=ドイツ=ルクセンブルグ)
クレスト・インターナショナル
12月8日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

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2007/12/05

『グミ・チョコレート・パイン』

「300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、とてもお手軽な文系スポーツ。というわけで、今回のお題は『グミ・チョコレート・パイン』です。

男の子の下半身は、かくも壮大なファンタジーなのだ

江口寿史のエッチな表紙でお馴染みの青春小説が遂に映画化。しかも大槻、KERA、電気グルーヴとそのまま「ナゴム」と称したくなるほどの布陣で。昼飯代を映画とレコードに注ぎ、根拠もなく「俺は周りのやつらとは違う!」といきり立ち、ヒロインには名前さえ覚えてもらえず…でも下半身はいつも元気ハツラツ!出口の見えない干からびた現代と86年の笑っちゃうくらいダメダメな青春とを絶妙に切り返しながら、映画館で、バンド練習で、閉め切った部屋で、ひとり燃え上がってた“オレ”が今の“俺”に精気を与える。「青春とは心の持ち方を言う」なんて誰が言ったか忘れたが、本作は単なるノスタルジーだけじゃない。泣きたくなるくらいカタチある青春群像の傑作だ。

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監督・脚本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
原作:大槻ケンヂ(「グミ・チョコレート・パイン」角川文庫刊)
テーマ曲:電気グルーヴ(「少年ヤング」Ki/oon Records)
出演:石田卓也、黒川芽以、柄本祐、金井勇太、森岡龍
(2007年/日本)東京テアトル

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2007/12/03

『ペルセポリス』

「300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、とてもお手軽な文系スポーツ。というわけで、今回のお題は『ペルセポリス』です。

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