『ザ・フィースト』
『The FEAST/ザ・フィースト 』というパニック・ホラーを観た。
有名俳優などいっさい登場しない本作は、インディーズ精神を地で行くノリ&強引さで突っ走っている割には、何か得体の知れない強力な磁場のようなもので観客をグイグイと惹きつけるものがある。どうやらマット・デイモン&ベン・アフレックが脚本にほれ込んでプロデューサーを買って出て、その製作過程は「プロジェクト・グリーンライト」というテレビ番組で総力レポートされたらしい。
マット&ベンは来日するたびに「ふたりのコラボは?」との問いに「いまは時間が取れないけど、いつか実現させたい」なんて答えていたけれど、『グッドウィル・ハンティング』で世界を大いに泣かせた彼らが実は裏でちゃっかりこんなパニック・ホラーをこしらえてたなんて、なんだか悪ガキ坊主たちの華麗なる悪戯を目の当たりにしたみたいで思わず笑ってしまう。もちろん悪ガキには保護者(?)が必要ってことで、あのホラーの名匠ウェス・クレイブンまでもが面白がってプロデューサーとして企画に名を連ねているあたり、なかなかあなどれない。
映画の舞台は、とある寂れた酒場。
エイリアンなのか化け物なのか分からん恐怖の生命体親子がここを急襲し、見るからに頭の悪そうな常連客が、阿鼻叫喚の地獄絵図へ巻き込まれていく…。
と、突如、頼りになりそうな風貌の男が店に飛び込んでこう叫ぶ。
「奴らがやってくる!おれの指示をよく聞くんだ!」
テンポよくテロップで彼の人物紹介が入る。
「ヒーロー」
なるほど、彼がヒーローか。彼がみんなを率いてバケモンと闘うのか…なんて思いきや、次の瞬間にはヒーローの断末魔の叫びが酒場にこだまする。あっという間にバケモンにやられてしまった。ヒーローの強制退場。残された者たちはただ唖然とするしかない。
つまりこの映画は最初から「ヒーロー不在」なのだ。本命不在のまま迎える代表選挙みたいなものか。果たして彼らが目指すのは“カオス”か“希望”か。
華のない俳優たちがストーリー上の生き残りを賭けて闘う姿は、さながら「俺が!俺が!」と芸能界生き残りを賭けて最後の闘いを繰り広げるバトル・ロワイヤルのようでもある。「子供」は死なない?「老人」は生き残る?「バカっぽい女性」は真っ先に死ぬ?「偉そうな男」はいちばん悲惨な死に方をする?そんなホラー映画の使い古された定石を、『スクリーム』顔負けの(正直、そこまでは行かないまでも、“意欲”だけは認めてあげよう)貪欲な斜に構えた精神でことごとく解体していくのだ。
中盤、俳優のひとりが俄然やる気を見せる。
となると、テロップも態度を豹変させて、キャラの肩書きがこう変更される。
「ヒーロー2」
それは役者が主役級に格上げされた瞬間だった。目の前で暴れるバケモンをよそに、この俳優の前で運命がパアッと花開いたような感じだ。これは俳優たちにとってパニック・ホラーというよりもむしろ公開オーディション「アメリカン・アイドル」に近いのではないか。
こんな感じで、「うぉー!」とか「ウギャー!」とか、ロバート・ロドリゲス的なテンションを爆発させながら、『スクリーム』的なメタ・ホラー&サム・ライミの『死霊のはらわた』的なチャレンジ・スピリットがムチャクチャ低次元で結実したような、思わぬ拾い物ムービーだったわけだ。
あ、モンスター・パニックなのに、肝心のバケモンのことに触れてなかったな…2本足で立って(この時点で着ぐるみなのは丸分かり!)、エイリアンっぽくも、バタリアンっぽくも、ナウシカの巨神兵っぽくもある…まあ…すごい怖い…しっかもあまりにエゲツない方法で家族を増やしたりもする…とにかく獰猛なヤツっすよ!!(←無駄に“!”を一個多くつけてみた)
オエッときたり、呆れたり、爆笑したり、呆れたり…。間違っても絶賛はしないが、でもどうだろう、こういうバクチ打ちみたいな映画が出てくるあたりが、実はアメリカ文化本来の野太さであり、懐の深さなんじゃないだろうか。
本作は既に『フィースト2』『フィースト3』の製作も決定している。それらが日本で劇場公開されるかどうかは分かりゃしないが、とりあえず一作目くらいはちょっと間違って拾い食いしてみて、あなたの武勇伝をいたずらに更新させてみるのも一計だろう。
3月は、アカデミー候補作や映画祭受賞作などで、とにかく優等生っぽい映画の多い季節。個人的にはこんな時こそ、『ザ・フィースト』や『デッド・サイレンス』といったB級ホラー・ムービーをも同時に摂取して、映画に対する平衡感覚を極力保ちたいものです。
無性に元気の出るB級映画って大好きだー!
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そして、ついに・・・
『フィースト2/怪物復活』、『フィースト3/最終決戦』
6月下旬より新宿バルト9、シアターN渋谷ほかにて公開決定!!
ほんとに!?ほんとに作っちゃったのかよ!?
サム・ライミが『死霊のはらわた』を撮ったときも、
ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を撮ったときも、
きっと同じ想いだったに違いない・・・
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