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2008/05/22

ナルニア国物語 第2章

 「ナルニア国」シリーズを観ていると『ドラえもん/のび太の宇宙開拓士』の記憶が鮮明に蘇ってくる。のび太の部屋の畳を剥がすとそこが別の星だった…というこの映画の展開はちょうど「ナルニア国」の衣装だんすを彷彿とさせるものがある。

 「あの畳の向こうが、宇宙のずーっとずーっと遠くの星に繋がっていたなんて…」

 大冒険を終え、もう二度と繋がらなくなった畳の裏側に想いを馳せながら、のび太はそうつぶやく。それはもう二度と戻ってこない少年の日々を回想するかのようにでもあり、まだ幼かった僕はどんな大冒険映画にも増してこのセリフに心を抉られたものだった。

 残念ながら、前作『ライオンと魔女』における「衣装だんす」という特殊装置に比べて『ナルニア国物語 第2章/カスピアン王子の角笛』の移動方法はそれほど心躍らされるものではない。

 叔父の裏切りで命を狙われたカスピアン王子がナルニア森の真ん中で角笛をひと吹きすると、その音色が人間界のペベンシー兄妹のもとに届く。その瞬間、彼らの佇む地下鉄の構内はタイルをめくるようにみるみるナルニア国へと変貌していく。ただしそれは彼らがかつて救い、治めたナルニア王国繁栄期から1300年も後の荒廃した時代なのだけれど。

 シリーズ物の第二作というのは難しいものだ。前作のおさらいを盛り込みつつ、ある程度の新機軸をも打ち出さなくてはいけない。そしてペベンシー兄妹も前作からいささか成長し逞しくなった反面、「かつて大人だった子供」としての苛立ちみたいなものが垣間見られる。長男ピーターがカスピアン王子とプライドの衝突を繰り返すたびにそれが大人への階段だとは分かっていても「あーあ、昔のほうが素直で良かったのにな」と冒険慣れした彼らにガッカリしてしまう。

 でもそれは原作の意図するところでもあるのだろう。そのいわゆる「人間らしい感情」の激しく増幅したところにこそテルマール人のような戦闘的な人間が存在する。今回ペベンシー兄妹が対決するのは、他者を滅ぼして繁栄しようとする飽くことなき征服欲そのものであり、彼ら自身の中にもその感情は存在する。『カスピアン王子の角笛』は彼ら兄妹やカスピアン王子がそれらの感情を、理性や高潔な精神でコントロールしていこうとする物語とも言える。

 もちろんそのためには兄妹の役割もこれまで以上に重要になってくる。長男としての責任やプライドから何かと突っ走りがちなピーターをフォローするのは次男エドマンドの役目だ。前作で魔女にそそのかされた彼がその借りを返すような度量の深さを露にする。また末娘のルーシーはどんなときでも常に正しい言葉を口し、兄妹を精神的に引っ張っていく。これは末っ子ならではの純粋かつ客観的な視点によるものなのだろうか。

 ただ、大規模な戦闘シーンなどは『ロード・オブ・ザ・リング』や前作『ライオンと魔女』の影響もあって観客の目が肥え過ぎてしまったきらいがある。このファンタジー飽和状態の中において『カスピアン王子』の提示するクオリティがどれだけ新鮮に映るかは本作の評価にも直結するところだからこそ少し残念な気がする。

 それでもなお、僕が「ナルニア」シリーズを楽しみに待ち望んでしまうのは、やはり冒頭に掲げた「のび太の言葉」がずっと胸に沈殿しているからであり、それともうひとつだけ理由がある。

 以前、翻訳家の金原瑞人さんがラジオでこう語っていたのだ。

 「このシリーズの面白いところは、ナルニア国の2555年に及ぶ歴史が決してハッピーエンドで終わらないところです。せっかく丁寧に描いてきたこの国が最後の最後で瞬く間に滅亡しちゃう。その崩壊劇を映画でいったいどう描くのか。いまから楽しみでしょうがないんです」

 まさかこの歴史的児童文学の中で「滅亡の物語」が語られていようとは。そこで目撃する光景はいったいどんなものなのだろう。また、作者はその崩壊によって読者(観客)にどんなメッセージを伝えようとしているのだろう。

 滅亡までのカウントダウンはあと5作もある。
 まだまだ先は長そうだが、しっかりと目を見開いて見守っていきたい。

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ナルニア国物語 第2章/カスピアン王子の角笛
監督:アンドリュー・アダムソン
出演:ベン・バーンズ、ジョージー・ヘンリー、スキャンダー・ケインズ、
ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル
(2008年/アメリカ)ウォルトディズニースタジオモーションピクチャーズジャパン
5月21日(水)より全国公開

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