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2008/05/23

What would Jesus buy?

 朝日ニュースターに「デモクラシー・ナウ」という番組がある。

 この中で“WHAT WOULD JESUS BUY?(主は何を買いたもう?)”という映画を紹介していた。

 ためしに公式HPを覗いてみると、ちょっとなに?『ジーザス・クライスト・スーパースター』のミュージカル版?などと勘違いしてしまいそうだが、実はこれ、『スーパーサイズ・ミー』のモーガン・スパーロックがプロデューサーを務めたドキュメンタリー映画なのだ。これまた衝撃的なほど笑えて、かつ刺激的な内容のようで、今から日本での公開が待ち焦がれてならない。

 「それでは映画のワンシーンを観てみましょう」司会のエイミー・グッドマンによる前フリのあと映し出されたのはこんな光景だった。

 そこはアメリカ大最大のショッピングセンター「モール・オブ・アメリカ」。日用品なら何でも揃うどころか結婚式から葬式まで何でもこの場所で済ませられる超便利施設だ。その消費社会の権化のような聖域に、突如、奇抜な聖歌隊が乱入してくる。客や店員みんなが指を差して声を上げる。「あいつらがやってきた!」。エスカレーターを駆け下り、機敏に駆けめぐる彼ら。警備員にも緊張が走る。やがて聖歌隊はモールの中心広場に陣取り「さあ、みなさん!」と訴えかける。

 「さあ、みなさん、物を買うのをやめましょう!」

 中心に立つのは反消費活動家のビリー牧師。彼は聖歌隊(Church of Stop Shopping Gospel Choir)を率いて、ウォルマート本部、スターバックス、そしてディズニーランドにまで果敢にアポなし突入しながら全米を横断していく。消費の現場に彼らあり。笑顔で不買の歌を熱唱し…いや、熱唱し終わる前にゾロゾロと警備員が現れてモールの外へと強制退去されていく哀しき聖歌隊よ。

 果たしてこの奇抜な集団が「不買」を訴える真意とは何なのか?

 ビリー牧師は指摘する。

 たとえばクリスマスになると大手のスーパーならどこでも売り上げ倍増の絶好シーズンとし、サンタやイエスなど聖なるものを次々と持ち上げては客に物を買わせようとする。本来ならば「空腹の人に食べ物を、着る物のない人に衣服を」というキリスト教の基本精神のひとつ「隣人愛」を実践するための聖なるシーズンのはずだ。しかしそれはいつしか形骸化し、イエスやサンタはすっかり資本主義の食い物にされている。

 さらにビリー牧師は客が商品を手にするときの思考回路にも警鐘を鳴らす。

 「出来る限りやすく買わなきゃ!」という「ウォルマート思考」は年々加速するばかり。大型量販店が価格破壊を始めれば客はそっちへ雪崩れ込み、近隣の商店は客を失い経営する道が途絶えてしまう。僕らは「最安値」の文字に敏感になるあまり、個々の消費の意味を深く考えることをやめてしまった。その商品を作っている人や、そこで働いている人たちに想いを馳せることをやめてしまった。ある人は語る。

 「そんなことは一切考えないわ。だって面倒くさいもの」。

 ふいに『おいしいコーヒーの真実』(5月31日より渋谷アップリンクXで公開)という映画が頭をよぎった。この映画の伝える事実・・・「オサレなモーニングの演出家」としてコーヒーショップが世界中で大繁盛する一方、コーヒー豆の現産地ではひどい貧困が蔓延しているという。「トールサイズのコーヒー1杯330円のうち、コーヒー農家に支払われる金額は…わずか3~9円(1~3%)」(映画プレス資料より)。この格差の根本的な原因は不公正な貿易システムにある。格安戦争が続く中、原価のしわ寄せは最終的にコーヒー農家が背負い込むことになり、彼らは儲けのほとんどない豆を作り続けるうちに赤字がかさみ、遂には農地自体を手放す末路を辿ってしまう。

 そんな悪循環のオルターナティブとして、世界ではいま「フェアトレード」によって豆を販売する企業や珈琲店も目立ち始めている。

 もちろんこれは一例にすぎない。要は、コーヒー豆ひとつ取っても僕らはいろんな消費情報へと接続することができるということだ。手にした商品のパッケージをちょっと確認するだけで、僕らは世界のどこかのコーヒー農家の生活を救えるかもしれない。スパーロックは言う。

 「それが現代の消費者に求められる価値観だと思う。ボーダーレス社会とは、我々の消費行動がそのまま世界に直結することを言うんだ」

 その意味で言うと、現代人の選びうるサイアクの可能性とは「面倒くさいから考えない」と情報のスイッチを切ってしまうことだ。またこういう人に限って、案外自分んちのクリスマスは盛大に祝ってしまうのかもしれない。

 司会のエイミー・グッドマンは本作の後半部に感動したと語る。子供たちが自分が着ている服の製造過程を調べるうちに、とある国で自分と同齢くらいの子供が劣悪な環境で労働させられている実態に行き着き、驚きの表情を浮かべるのだ。これについて再びスパーロックが口を開く。

 「僕らは大きな変革を望んでいるわけじゃない。むしろこの子供たちのようなごく普通の人々のほんの僅かな変化がとても嬉しいんだ」

 果たして“WHAT WOULD JESUS BUY”はその僅かな変化を奇跡のパンのごとく世界中に届けることが出来るだろうか?ビリー牧師はいつも笑みを絶やさずに主張し続ける。そして「自分の消費の意味を考えよう」と訴え続ける中で、ひとつの真理にたどり着いたという。それは

 「笑わせれば人は聞く」

 なるほど、この人、派手なパフォーマンスばかりではなかったんだ。ちゃんと戦略的に考えていたのだ。現にこの番組を笑いながら最後まで見てしまった自分がいる。そしていま、今度はこの映画が観たくてしょうがなくなってる自分がここにいる。

 ハレルヤ!

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