『TOKYO!<インテリア・デザイン>』
ミシェル・ゴンドリー!!レオス・カラックス!!ポン・ジュノ!!
世界を牽引する3人の映画作家たちが東京の街を舞台に独自のイマジネーションを炸裂させたオムニバス映画『TOKYO!』。
今回はその中から、ミシェル・ゴンドリーによる一篇<インテリア・デザイン>をレビューします。
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TOKYO!<インテリア・デザイン> by ミシェル・ゴンドリー
何気ない日常の裂け目から、奇妙で可愛らしい“クラフト感覚”の幻想世界がモクモクと姿を現す…そんなお決まりのゴンドリー色は、ここTOKYOでも変わらない。いつもと経由が違うだけで、ゴールで得られる感触はほとんど同じなのだ。
本作は、どこか自主制作映画のような質感の中、たったいま東京に到着したばっかりのカップル、映画監督のアキラ(加瀬亮)&彼女ヒロコ(藤谷文子)の会話で幕を開ける。
降りしきる雨が視野を狭める。息苦しい交通渋滞を抜け、さらに狭い道路を直進すると、そこは友人の住むワンルーム・マンション。彼らは不思議の国に迷い込むようにして、どんどん東京の“閉所”へといざなわれていく。「狭いでしょ?ごめんね」「いや、あたしたちこそごめんね!」そんな会話で始まる共同生活。こうやって二人の東京ライフは幕を開けた。
とはいうものの、恋人ヒロコはいつも映画監督の彼を支える一方で、自分がこの街で何をしたいのかまだよくわからない。
「何かやりたいことないの・・・?」
周囲のそんな言葉がチクチクと心を刺激する。「あたしっていったい何がしたいんだろう・・・?」彼女は自問自答するあまり、ふと気がつくと、身体が少しずつ“木”へと変貌し始めていた…!?
いつもの作りこんだセットは存在しない。というよりTOKYO自体が今回ゴンドリーの遊ぶプレイグラウンドとして立ち上がり、“狭い路地”や、“ビルとビルの隙間”といったリアルな風景が彼の創造力を起動させていく。
駐禁取られ、レッカー移動された車の行き着く先にはリアルなSFの世界が待っているし、バイトのラッピング仕事はまるで折り紙の技術を使った強制労働のよう。路地から路地へ延々と続いていく長回し撮影は、その何気なさとは裏腹にグルグルと迷宮に迷い込む異邦人のような感覚を観客に与える。
こういう小さなスイッチを一個一個押していく感覚がたまらない。そして、商業映画や音楽PVではお馴染みのゴンドリー的“マジック・アワー”は、走者が前傾のまま「今か、今か」とピストルの合図を待ち続けるように徐々に緊張を高めていって、そして最後のくだりで一気にスパークする!
ああ、TOKYOの街にゴンドリーは舞い降りた…。
いつしか見慣れた街並みはゴンドリー色でいっぱいとなる。こんなにも不思議かつ手作り感でいっぱいの映像は、どこからどう見てもゴンドリーでしかありえない。そしてたどり着く、あまりに繊細な空間がそこにある。ヒロコの抱いていた悩みは、ゴンドリーの諸作品で悩みにくれる主人公たちと繋がっている。彼らと同じく、彼女が自分自身の尊い居場所を見つけたとき、
いつしか雨は上がり、
スクリーンはやわらかい朝の光で包まれていた。
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『TOKYO!』は以下の3話から成る1本のオムニバス映画です。
■<インテリア・デザイン> by ミシェル・ゴンドリー
■<メルド> by レオス・カラックス
■<シェイキング東京> by ポン・ジュノ
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●『TOKYO!』完成記念記者会見
●『TOKYO!<メルド>レオス・カラックス記者会見
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