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2008/07/24

『赤い風船』

1956年にアルベール・ラモリス監督が刻印した映画の奇跡『赤い風船』が、同監督作の『白い馬』と同時上映になって現代によみがえる。

Theredballoon
50年経っても、このフィルムに刻まれた魔法の威力は失せることがない。マジックのような、ファンタジーのような、とにかく目を奪われずにいられない至福の時間がここには詰まっている。

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ある日、少年のもとにふわふわと赤い風船が舞い降りる。両者はずっと付かず離れずしながら、パリの街をあちこち移動していく。

たったそれだけ。

なのに、僕らは赤い風船がそこに浮かんでいるだけで、いつしか幻想世界へと足を踏み入れ、時が経つのもすっかり忘れてしまう。

というのも、こんなにもCG全盛の現代、観客の多くがとてつもなく目の肥えた審美眼を持っているにもかかわらず、この“付かず離れず”の赤い風船がいったいどうやって撮られたのか、いまだにさっぱりわからないのだ。

そういう僕も思い余って宣伝の方に「どうやって撮ってるんですか!?」とお聞きしてしまったのだが、現在この映画の版権を管理する故ラモリス監督の息子にしてこの『赤い風船』の主演男優(子役)でもあるパスカル・ラモリス氏は、「観客の夢を壊したくないので、ナイショです」と答えたという。

つまりこの撮影方法については、いまだに映画史上、解き明かされぬままの“謎”ってわけだ。

きっと、専門家に言わせれば、この撮影法などすぐに解き明かされてしまうのだろう。しかし謎が謎のまま残っていること事態が、「サンタがいる、いない」と同じように、この映画に吹き込まれた魔法がいまだに消滅せずに効力を発揮し続けている尊い証なのだ。

そうして僕らは、いつしか目に見える物象を越えて、少年と赤い風船の間になにか切っても切れない絆のようなものを見出し始める。それは見る人ひとりひとりの心の中だけで像を結ぶ、かぼそい、しかし確かな絆であり、むしろ映画史において特殊技術にも増して根源的ともいえる“わたし”と“あなた”の関係性の表現なのである。

50年後の今となっても、ひとたびパリの町を訪れると、あの少年と風船が笑顔でじゃれあう姿に出逢えそうな気がする。

そして、いまだ少年のように『赤い風船』に魅了され続ける純真な心をそのまま現代劇として刻み込んだのが、台湾の巨匠による最新作『ホウ・シャウシェンのレッド・バルーン』(レイトショー公開)なわけだが・・・

その話はまた後日。

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赤い風船
監督:アルベール・ラモリス
出演:パスカル・ラモリス、サビーヌ・ラモリス、ジョルジュ・セリエ
(1956年/フランス)カフェグルーヴ、クレストインターナショナル
7月26日よりシネスイッチ銀座ほか全国公開

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