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2008/07/17

『TOKYO!』レオス・カラックス来日!

 デビュー以来“恐るべき子供(アンファン・テリブル)”として世界を衝撃の渦に巻き込んできた奇才レオス・カラックス監督。『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』『ポンヌフの恋人』といったアレックス3部作でもあまりに名高い。

 そんな彼が99年発表の『ポーラX』以来9年もの沈黙を破り、オムニバス映画『TOKYO!』で待望の最新作を発表する。その名は<メルド>。フランス語で「糞」という意味を持つこの短編が提示した衝撃世界とは!?ここに16日に行われた緊急来日会見の模様をお伝えする。

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繊細な感性から生まれた衝撃的アイディア

小規模の会場で行われた親密なる記者会見は、絶え間なくタバコをくゆらせるカラックスのペースを寸分も崩すことなく進められた。サングラスで表情を隠し、質問者の方へ顔を上げることもない。ささやくようにして語られる回答は常に簡潔…。

そんな繊細さからは想像もつかない衝撃世界を目まぐるしく展開させたのがこの<メルド>なのだ。その着想の瞬間を、彼はこう振り返る。

「パリ市内を歩きながら思いつきました。地下からいきなり怪人が現れ、行きかう人々を倒しながら進んでいったら面白いだろうな、と。(『TOKYO!』の)話を頂いたのはその後ですが、まずは東京のことなど何も知らない状態で一気に書き上げました」

その怪人は、突如マンホールから這い出てくると、銀座の大通りを闊歩しながら通行人にあらゆる悪行を浴びせかける。まるで降って湧いた天災のごときこの男、姿カタチこそ全く違うが、その精神性はまさに“ゴジラ”のごとし!

カラックスはこの未知なる存在を「CGや着ぐるみではなく、リアルな人間の身体で表現することこそ重要で、心惹かれた」と語る。

さらに彼は、<メルド>の日本語訳「くそ」という言葉を真顔で何度も繰り返しながら、このタイトルの由来を明かす。

「私自身、この言葉が大好きです。この映画は子供のように退化していく“私たちの時代”について語ったものでもあり、この怪人は“子供”そのものだと思います。子供ってよく『うんこ!』とかって平気で口にしますよね」

破壊的なまでに無邪気、無軌道なまでの差別主義者。そんな常識では計り知れない存在こそ、この怪人<メルド>なのだ。破壊の限りを尽くす彼の姿を見ていると、これは映画界におけるレオス・カラックス自身なのではないかとすら思えてくる。

長きに渡る沈黙の意味とは…?

9年間ものあいだ、メルドと同じく沈黙を守り通してきた彼。映画作家にとってこんなにも長らく新作を発表する機会がなかったという状況を、カラックス自身はいったいどのように捉えているのだろう?筆者が直接、質問をぶつけてみた。

するとこんな率直な答えが返ってきた。

「私は自分のことを“映画作家”と限定して考えたことはありません。人生の中でときどき映画を作っている人、と捉えています。映画を作らなくても他のことをやって…たとえば、旅をするとか、本を読むとか、恋に落ちるとか、病気をするとか、書き物をするとか、そういうことで割と平気でいられるときもありますし、逆に映画を作らないことでどうしようもない胸の苦しみを感じるときだってあります。

実は映画を発表するたびに自分というものに失望してしまうのです。ですからその都度、そこから立ち直る期間が必要となります。振り返ってみると、20代には3本の長編を撮り、30代には1本、そして40代になると、いまのところ、半本(短編)。…だんだん映画制作から遠ざかっているような気がしますね」

やはりこの人、商業主義とは圧倒的に次元の違う世界に住んでいる。

彼にとっての映画制作とは、仕事というよりも、むしろ人生の節目において自分の体内に蓄積されたものを一気に吐き出す“儀式”のようなものかもしれない。そして、そのとき炸裂する芸術性の威力は、常に計り知れないレベルにまで膨れ上がるのだ。

会見が終わったあと、WEB媒体用に写真撮影をお願いしてみたのだが、「ごめんなさい、写真はあまり好きではないのです」と丁重に断られてしまった。無念の思いは尽きないが、いや逆に、あのレオス・カラックスがそう易々と笑顔で写真撮影に応じてくれたならば、そっちのほうこそ失望そのものではないか。

僕には、ユラユラとどこかに去っていく彼の後ろ姿を、いつまでも見つめているしか術がなかった。彼がこの『TOKYO!<メルド>』に続く新たな創作の場に身を委ねてくれることを強く願ってやまない。とりあえずは気を揉むことなく、努めて気長に待つこととしよう。

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*『TOKYO!』は以下の3話から成る1本のオムニバス映画です。
8月16日(土)より、シネマライズ、シネ・リーブル池袋にて世界先行ロードショー

■「インテリア・デザイン」 by ミシェル・ゴンドリー
■「メルド」 by レオス・カラックス

■「シェイキング東京」 by ポン・ジュノ

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●『TOKYO!』完成記念記者会見

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