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2008/08/09

『エレジー』

Image054用事が無いときでも、とりあえず立ち寄らずにはいられないミニシアター、「ピクチャーハウス」。またいつものように勢いよく階段を昇りきると、見慣れたチケット・カウンターにはスタッフTシャツを着たクマのぬいぐるみが座っていました。

”BEARING” in mind that

 this station is not open.

「いまの時間帯はkioskでチケットを購入してください」とのことだったのでそちらへ向かうと、いつもの髭もじゃの兄ちゃんが笑顔で「やあ」と声をかけてくれました。バイトのシフトに遅れてきたとおぼしき、もうひとりの少年スタッフは、「オリンピックの開会式、観た?もう空をぐるぐる飛んだり、やたらめったら花火を打ち上げたりで、とにかくすごかったんだぜ!」とひとり興奮しきりでしたが、「それは遅刻の言い訳にはならない」とばかりにベテラン女性スタッフにあしらわれると、急にしゅんとして黙り込んでしまいました。

さて、本日は『死ぬまでにしたい10のこと』や『あなたになら言える秘密のこと』などで有名なスペインの名匠イザベル・コイシェ監督の最新作『エレジー』を鑑賞。

サラ・ポーリーとのコラボレーションが続いていたこの女性監督が今回主役に招聘したのは、Sirベン・キングスレー。大学教授で文化評論家でもある彼がキューバからやってきた若き学生(ペネロペ・クルス)と激しい恋に落ち、やがてその年齢のギャップゆえか、彼女のスケジュールや昔の男性関係など一部始終が気になって仕方がなくなってしまう・・・という、ちょっと変態的な映画だと予測していたのですが(予告編は確かにそうだったんだけど)、ふたを開けてみるとちょっと違う。そのタイトルが表すように、年齢や人生、そして死といった避けられないものと対峙したとき心の中に生じる空虚な部分をじっくりと映し出していく作品でした。

原作はピューリツァー賞作家フィリップ・ロスによる"The Dying Animal"。前二作の透明感と比するとやや地味な印象は拭えませんが、それでもイザベル・コイシェらしい、ほんの針ほどの隙間から人生を物語っていく洗練された手法は健在です。とくに味わい深いのが脇役陣。強烈な個性を刻みつけるデニス・ホッパーしかり、ピーター・サースガードしかり、パトリシア・クラークソンしかり。最少人数で魅せる人生の室内楽ともいうべき、妙演が楽しめる蔵人好みの映画といえるでしょう。

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