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2008/08/20

『ビューティフル・ルーザーズ』

ビューティフル・ルーザーズ』、それは90年代のストリート・カルチャーにどっぷりと漬かって成長し、そこから自分なりのスタイルを会得していったマーク・ゴンザレス、バリー・マッギー、ハーモニー・コリン、マイク・ミルズといったアーティストたちの表現欲求の源泉に迫るアート・ドキュメンタリーだ。

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「選び取るというよりも、自分たちにはアートしかなかった。つまり、おちこぼれ(ルーザー)なんだ。だからどうしようもない怒りや衝動を吐き出すためには描かずにはいられなかった。競争して相手を倒してのし上がっていこうだなんて考えたことはないよ。みんなが僕のアートを見て何かを感じさえしてくれれば、それだけで嬉しい」

若い頃はトゲのあった彼らが、歳を重ねるごとにとても達観した柔和な表情で語るようになる。コマーシャル的なものへのアティテュードもだいぶ整理がつくようになった。自分たちの手がけたアートが「公共の場」で人々の生活の中へ溶け込んでいくことについても素直に喜びを感じるようになった。この齢とともに彼らがたどりゆく境地もまた前進なのだ。

常に進化を続ける彼らのDIY(Do it yourself)精神がこんなにも気持ちよく心に流れ込んでくるのは、そのアートが決して観客の頭の中で完結する納まりの良いものではなく、紛れもない“コミュニケーション言語”として人と人とを繋ぎ、そこからどんどん日常へ浸透していく躍動感に満ちているからなのだろう。

ルーザーズがルーザーズでしかない街では何の奇跡も起こりえない。彼らはサナギから成虫になって、なおも新たな形態を求めて進化を繰り返し、そうやって自らが異形の者となっていくことに恐れを知らない。

そしてこの映画が終わる頃、彼らがルーザーかウィナーかなんて、もう誰にも分からなくなっている。そもそもそれら二者は対極を示してなんかおらず、ひとつの概念の表裏でしかないのだから。いま、前人未踏の地を歩み続ける彼らに与えられる言葉があるなら、それはもはや、彼ら自身の生まれ持ったそれぞれの“名前”でしかありえないのだ。

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ビューティフル・ルーザーズ
監督:アーロン・アーズ
出演アーティスト:トーマス・キャンベル、マーク・ゴンザレス、ジョー・ジャクソン、
クリス・ジョハンソン、マーガレット・キルガレン、ハーモニー・コリン
(2007年/アメリカ)ファントム・フィルム
渋谷ライズエックス他にてロードショー中

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