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2009/01/05

アレックス・コックス監督インタビュー

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かつて西部劇の撮影現場でトラウマを受けた子役たち。 彼らがすっかりオッサンとなった今、憎き脚本家を追いかけて、世にも壮絶(?)な復讐劇の幕が切って落とされる!

古きよき時代の西部劇にオマージュを捧げつつ、9.11以降の暴走するアメリカをオフビートな笑いと共に描いた『サーチャーズ2.0』がいよいよ1月10日に公開を迎える。

『レポマン』『シド・アンド・ナンシー』を代表格に、時代のエッジに立ってパンク精神を発揮しつづけるインディペンデント映画の鬼才、アレックス・コックス監督に話を訊いてきました。

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---最近の潮流として世界中の映画監督が「復讐」について描いていますが、正直、『サーチャーズ2.0』ほどユニークな切り口は観たことがありません。

【アレックス・コックス】
そう言ってくれて嬉しいよ。主人公のたどる「(理由の)曖昧な復讐劇」には9.11以降のアメリカ合衆国の姿を重ねているんだ。誰もが「復讐」は良くないことと分かっているのに、結果的にアメリカは間違った方向に進み、石油のためにいろんなものを奪い取ってしまった。と同時に、国民の側には膨大な「矛盾」が押し寄せてきた。貧富の格差、経済の崩壊などなど、枚挙に暇がないよ。

それらを直接的に批判するのも芸がない。だから私の異邦人としての視点を交え、あえて「コメディ」という手法でこの問題に切り込んでみたんだ。

---そのタイトルをジョン・フォードの傑作『捜索者』(The Searchers)から引用しているのをはじめ、本作には「西部劇」というモチーフが散りばめられています。僕はこれをアメリカの「亡霊」のようにも感じたんですが、監督はどのように捉えていらっしゃいますか?

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身ぶり手ぶりで答えます

【アレックス・コックス】
きみの言うとおりだ。西部劇はフォーマットとしてまさに「亡霊」。この映画では旅の車中、ふたりの中年男性がずっと西部劇の話題で盛り上がっているけど、旅に同行する80年代生まれの娘にとっては西部劇など過去の産物。興味の欠片すらない。

つまり、この映画はいかに亡霊が消え失せ、人々の心理や好みが変わり、フォーマットが変遷していくか・・この流れを描いたものでもあるんだ。

---劇中ではサム・ペキンパーについても触れていますね。

【アレックス・コックス】
彼について触れたのは、その政治的姿勢に感銘を受けたからだよ。ペキンパーは血まみれで暴力的な映画を作る人だったが、反戦主義者でもあった。60年代にはニクソン大統領に自ら「戦争をやめろ」と電報を打ったこともある。

いまの映画産業を見てごらんなさい。たとえば米軍の撮影協力を無料で取り付けることによって、その代償として意識的にか無意識的にか、映画が軍のリクルーティングに一役買う形に陥ってしまっている。問題なのはそれについて誰もが口を閉ざしてしまうことだ。私はペキンパーに敬意を表して、それをはっきりと伝えたかったんだ。

---アメリカに対して批判を続ける一方、あなたは英国人にも関わらず、ずっとアメリカに住み続けてらっしゃいますね。それは心の底でアメリカを愛してらっしゃるからですか?

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まるで学校の先生のよう

【アレックス・コックス】
おお、ゴッド・ブレス・アメリカ!

実は妻がアメリカ人なんだよ。以前、彼女と一緒に私の故郷リバプールに住んでいたんだが、しばらくすると妻からこう宣告された。「もうこんな街、ごめんだわ!いますぐアメリカに帰る!」ってね(笑)。そんなこんなで、私はいまアメリカのオレゴン州に移り住んでるというわけさ。

オレゴンも最近では貧困に蝕まれている。産業がどんどん崩壊して、若い失業者も増加の一途を辿っている。彼らの就職先はもはやスーパーのレジ打ちか軍隊しかない有様だ。

ただし、国家を憎んだってしょうがない。確かにこの国はいま未曾有の危機に陥っている。だけどそう追い込んだのは一部の支配層だ。ごく普通の人々のことを考えたとき、私にはこの国が嫌いにはなれないよ。親しい友人のほとんどがアメリカ在住だしね。

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自らポスターを掲げてくれました


---それにしても、いまこうしてお話を伺いながら、あなたが「パンクムービーの鬼才」という称号とは真逆の、実に紳士的でマイルドな方であることに衝撃を受けています。

【アレックス・コックス】
そう言ってもらえて嬉しいね(笑)

---撮影中でも脚本執筆中でも変わず穏やかなんですか?

【アレックス・コックス】
少なくとも私はそうありたいと思ってるよ(笑)。誰もがそうだけど、人間ってのは年齢と共にマイルドになってくるものなんだ。

きっと金のあるヤツには無礼な振る舞いも許されるんだろうね。私みたいに金のない人間は、いつも丁重に振る舞うしか術がない。人に好かれなければお金は集まらないし、映画作りなんてできやしないから。

でも嫌々ながらこの態度をキープしているわけでもないよ。結局そのほうが仕事がはかどるんだ。仮に一日100ドルで有名俳優に出演してもらうときでも、こちらが横柄な態度だと相手を怒らせてしまうだけだしね。

お金がないからこそ、私は紳士なんです(笑)!

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隠れてしまいました


---最後に、私がいつもインタビューの最後でお聞きしている質問があります。

【アレックス・コックス】
はい、なんでしょうか

---今の世の中、人に想いを伝えることがどんどん難しくなっています。このような時代において、あなたは「映画の可能性」をどのように捉えていますか?

【アレックス・コックス】
相手にメッセージを伝えるとき、今の世の中は、ありとあらゆるコミュニケーション・ツールが氾濫していて、情報やメッセージも垂れ流しの状態だ。

そんな中で「映画」は、観客が映画館へ足を運ぶ、それだけの時間的犠牲を払うといった可能性をいまだに持ち得たメディアだと言える。つまり、観客が暗闇の中に身を浸し、他のメディアを遮断して、スクリーンのみに没頭することができる、と。

ひとつの作品に対して最初から終わりまで孤立した環境で接することができる・・・これは自宅でテレビやDVDを細切れで見たりすることとはわけが違う。その点において希望があるという見方もできるんじゃないだろうか。

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もはやホラーです

---それに加え、今回あなたはタイトルに「2.0」と名付け、ネットを駆使して製作費をファンから募ることに挑戦しています。これも映画の新たな可能性と言えますよね。

【アレックス・コックス】
出資を募るという取り組みは、おっしゃるとおりユーザーにとっての新たなコミュニケーション・ツールに成り得ているだろう。でもまあ、正直な話、僕の場合はお金を出してくれさえすれば誰と組んだってかまやしないんだ。出資者が金を出し、僕は使う。ただそれだけのことさ(笑)!

---次回作も楽しみにしています!ありがとうございました!

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来日記念Q&Aの模様はこちら



サーチャーズ2.0
監督:アレックス・コックス
出演:デル・ザモラ、ジャクリン・ジョネット、エド・パンシューロ、
サイ・リチャードソン、
(2007年/アメリカ)アップリンク

『サーチャーズ2.0』は3月末に劇早DVDリリース!「映画監督は貧乏でなければならない」と豪語するアレックス・コックス氏が、貧窮しながらもアイディア、創造力&ジェントルネスでひねり出したこの衝撃の世界。世間に溢れるビッグバジェット映画がまったくの無意味に思えてくるほど、とことん中身のつまった一作です。

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