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2009/05/19

フィアンセ拘束された監督の苦悩

イランの映画監督バフマン・ゴバディを知っていますか?『酔っぱらった馬の時間』でカメラドール(新人監督賞)を受賞し、その後も『我が故郷の歌』『亀も空を飛ぶ』など、イランに住むクルド人たちの生活を笑いと哀しみを織り交ぜながら巧みに描いてきた俊英です。

そんな彼がカンヌの「ある視点」部門に登場したわけですが、やはりメディアの関心は彼のフィアンセの話題に集中している模様です。なにせその女性とは、イラン政府によりスパイ容疑のため逮捕され、先日ようやく解放されたジャーナリストのロクサナ・サベリさんだったのですから。

そんなカンヌでのゴバディ監督についてCNNが報じていたので、その記事"Iranian filmmaker's pain over fiancee Saberi's time in jail"を要約してお届けします。

http://edition.cnn.com/2009/SHOWBIZ/Movies/05/18/roxana.saberi.ghobadi/index.html
イランの映画監督バフマン・ゴバディが新作のプレミア上映のためカンヌのレッドカーペットに登場したが、真の注目の的-アメリカ系イラン人ジャーナリストのロクサナ・サベリは不在だった。彼女はゴバディの最新作"No One Kows about Persian Cats"で共同脚本とエグゼクティブ・プロデューサーを担当している。

ゴバディのフィアンセでもあるサベリは、今年の1月にワインを一本買い求めた罪で拘束され、非公開で行われた裁判ではスパイ容疑についても起訴されており、4月18日には懲役8年の判決が言い渡されたが、先週の月曜になって突然釈放された。

「彼女が投獄されていた4ヶ月間は私にとって4年にも等しい長さでした。なぜ政府が彼女を収監したのか私には理解できません。彼女は一点の曇りもない、天使のような人です」とゴバディは語る。彼女が釈放されたと知ったとき、彼は非常に混乱したという。「私には当局の人間たちが彼女の釈放までの期間を2週間、4年間、8年間と提示して、私や彼女の支持者たちを相手にまるでゲームでもやってるかのように思えました」。しかしサベリが解放され、ようやくふたりが再会を果たしたとき、ゴバディはカンヌへ旅立たねばならなかった。

カンヌの「ある視点」部門に出品された"Persian Cats"は、テヘランに住む若いミュージシャンがバンドを組もうとして大きな困難に直面するというフェイク・ドキュメンタリー作品だ。サベリはゴバディとともにレッドカーペットを歩くことはできなかったが、本作の評判をとても気にしていたという。

ゴバディ自身、イラン当局によって苦しめられてきた。彼の2008年の作品"Half Moon"は当局によって禁止が言い渡され、以前にも他の作品について3年に渡って当局に許可を求めていたが、日の目を見ることはなかった。彼は精神的にも非常に厳しい時期を迎えていた。

その結果、ゴバディは"Persian Cats"で小さくて安いデジタルカメラを駆使して17日間に渡る無許可撮影に踏み切ることになる(雑誌"Screen international"の伝えるところによると、イランではすべての35ミリ用カメラは政府が管理しているという)。コメディと悲劇がドラマティックな効果を巻き起こす本作は、テヘランのアンダーグラウンド・ミュージック界で活動するミュージシャンを起用。現在、テヘランでは2000を越す非合法のバンドが存在し、そのすべてが当局の取り締まりを逃れて、地下や屋根裏にある手作りの録音スタジオで練習や演奏を行っている。

ゴバディはサベリの投獄された責任は自分にもあると語る。彼女は"Persian Cats"の製作とゴバディ自身をサポートするためイランに滞在していたからだ。彼は今年の4月に発表した公開書簡で「彼女は政治のゲームに巻き込まれた」と書いたが、その中で「日本人の目をし、アメリカ人のIDを持つ私のイラン人の愛しい人は投獄されている。私は恥を知れ!我々は恥を知れ!」とも記している。

ゴバディはまもなくサベリと合流し、ニューヨークへ向かう予定だ。彼らはそれぞれ本の執筆と、また共に映画作りをすることなども視野に入れており、できるだけ早いうちに正式に夫婦として出発したいと語る。しかしこれまでに起きたすべてのことを消化するのには、まだ少し時間がかかりそうだ。

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