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2009/06/10

『トランスフォーマー/リベンジ』

 スティーブン・スピルバーグ(製作総指揮)とマイケル・ベイ(製作総指揮・監督)とがコンビを組むのも今回で3度目。統制される社会のメタファーとして捉えうる『アイランド』のような作品にはそのコンビネーションの意味もあっただろうが、さて『トランスフォーマー』に関してはふたりが組む必要性はあったのだろうか?ジェリちゃん(ブラッカイマー)と組んでも同じ結果が出たのではないだろうか・・・とまあ、多少ひねくれたリアクションを決め込んでしまうのはこの最新作が(今回も)あまりに超大作なわけであり、こんなところで「凄い!」やら「傑作なのだ!」などと綴ってみてもなんの意味も持たない自分の無意味さを身につまされてしまうからだ。 

 しかし1作目に『激突!』『グレムリン』『ET』『未知との遭遇』などスピルバーグがら過去に携わってきた作品群のオマージュらしきものが散りばめられていたように(その後、シャイア・ラブーフが『インディ』シリーズに出演したことで、本シリーズはそことも接点を持ったことになる)、2作目にもスピルバーグ×ベイのコンビネーションにしか刻めないイコンが必ずあるはずだ。

 『リベンジ』はオープニングからエンディングまで全力疾走だ。プロダクション・ロゴの段階で、もう既にシュゴシュゴ(変身音)言ってるのは前作同様。しかしこの一発目の言葉に驚かされた。なにしろ

 「地球・・・」

 ときたもんだ。いったいどれほど大上段に構えたんだ、という話である。風呂敷でかすぎである。しかし、まあこれも伏線だったのだ。映し出される太古の地球。マイケル・ベイの映画がなんのヴィークルを暴走させなくとも(原始人を相手にしても)既に大迫力であるという証左とも言えるだろう。

 舞台は変わって現代。いまや政府によってその存在を認められたオプティマス・プライム率いるオートボット軍団は、政府が秘密裏に組織した精鋭部隊NESTと共同で世界中に出没するディセプティコンの掃討作戦を展開していた。そしてこの瞬間にも上海で新たなディセプティコンが出現。プライムらによって追い詰められた巨大な車輪を持つデモリッシャーは最後に不気味な言葉を口にする。「フォールン様がやってくる・・・」と。

 だいたいシリーズ2作目というものは、3作目以降を考慮に入れて初期設定の間口を拡げ、説明的になることが多い。けれど『トランスフォーマー:リベンジ』はそんなことお構いなし。いや、実際は緻密に計算してるんだろうけど、もうそんな能書きは関係なくなるほど灼熱のバーベキュー・テイストのチカラ技でねじ伏せてくる。というか、目の前で繰り広げられるマシンの変身、壮絶な殴り合いを浴びてしまうと、その日の帰り道なんかに目にした車輌、ビル、工事用重機などがうっかり変身しやしないだろうかと一瞬身構えてしまうほど、2時間半の映像体験が脳と視覚に与える影響力は絶大だ。

 マイケル・ベイの演出はこれまで以上に剛速球。年若くして『アルマゲドン』という伝説を樹立してしまった男の、現在もなお進行形の加速型ストーリーテリングには、非常に悔しいが、巻き込まれずにはいられない。また彼は小憎たらしいことに、剛速球の中でもストーリーに緩急をつけるのだ。そこでは話がオチようがオチまいが画面はめくるめく展開していくが、前回同様、ジョン・タトゥーロを人的起爆剤として投入してくる後半は、映画好きにも「彼がこんな演技を!?」と思わせる醍醐味を兼ね備えており、ミーガン・フォックスにも増して過激な彼のセクシーショットに衝撃を受ける観客も多いだろう。

 また、豚インフルなど最新トピックをいち早く盛り込みながらも、前作とは大統領が代わり少しは知能がついたかと思われた政府対応は少しも進歩がない。ここらへんにはどれだけ時代が変化してもステレオタイプの描写を貫くマイケル・ベイの頑固なノンポリぶり(?)が伺える(というかあくまでノリなんですね)。

 奇しくも先日、オバマ大統領がエジプトを訪れ、今後も中東地域の紛争解決に向けて努力していく旨を語り、ピラミッドと戯れる映像などがテレビで流れていたが、オプティマス・プライム率いるオートボットたちの立場もどうやら同じようだ。ここで彼らの語るセリフが印象的だった。曰く、「おなじ歴史は繰り返したくない。我々の星は滅んでしまった。けれど地球はまだ滅んではいない。我々には救うことができる」。つまり彼らは他者の不幸を決して見て見ぬふりしないことを自らに課しているのである。

 ここにきてスピルバーグの存在感が効力を発揮する。ダルフール紛争などに対して積極的に発言を繰り返し、北京オリンピックの総合演出をオファーされておきながら、「中国政府がダルフールの元凶であるスーダン政府へ武器の輸出を行っているため」という理由で固辞した彼のアティチュードが、マイケル・ベイとジェリちゃんのコンビネーションよりも俄然説得力を持つ。いや、何よりも『未知との遭遇』『E.T.』など「宇宙からやってくる善なる存在」を描き続けてきたスピルバーグが名前を添えているだけでそこには地球を俯瞰したかのような暖かみが増すってものである。

 「お前らがいるから、敵がやってくるんとちゃうんか?」との大統領補佐官の突っ込みに、オプティマスはこうも語る。「もちろん君らには選択の自由がある。君らが望むならば、我々はすぐさま地球を離れる用意がある」と。

 脚本家たちはなぜこのセリフを入れたのか。9.11以降、映画における「闘い」の意味は大きく変わった。大衆向けエンターテインメントである『トランスフォーマー』の世界においてさえ、「我々は闘う、でもイラク戦争のようにはならないからね」という意味の(少なくとも僕はそう捉えました)エクスキューズを余儀なくされる時代に我々は生きている。

 シリーズが長引くに連れ、オートボット軍の駐留期間も延長される。この先、彼らがどのような闘い方を展開するのか、また脚本家たちがそれをどのように描くのか。これが超大作だからこそ、VFXのクオリティとはまた違った角度でエンターテインメントの作法への期待が募る。

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トランスフォーマー/リベンジ
監督:マイケル・ベイ
出演:シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、
タイリース・ギブソン、ジョン・タトゥーロ、ケヴィン・ダン
(2009年/アメリカ)パラマウント ピクチャーズ ジャパン
6月20日(土)全国ロードショー/6月19日(金)世界最速先行上映

『トランスフォーマー』の300文字レビューはこちら

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