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2009/08/08

史上初のハマス映画

パレスチナ自治区ガザの中心部に位置するカルチャーセンターで一本の映画が封切られた。そのタイトルは"Imad Aqel"。地元民にとって英雄とも目される人物の伝記映画に、会場は大いに沸いているという。

参考記事
http://www.reuters.com/article/filmNews/idUSTRE5721L720090803
http://www.guardian.co.uk/film/2009/aug/05/hamas-first-film-gaza

イスラエルの兵士や民間人13人を殺害した疑いでイスラエル側の要注意人物リストのトップに挙げられ、やがて1993年の戦闘のさなか22歳の若さで命を落としたイマッド・アケル。本作は彼の伝記というかたちをとりながら、1987年のハマス発足の背景をも盛り込んだ内容のようだ。

実はこの映画、イスラム系原理主義組織ハマスが12万ドルを費やして初製作した記念碑的作品でもある。脚本を担当したのはハマス最高幹部マフムード・アル・ザハル。監督にはドイツで映画製作を学んだマジェッド・ジェンデヤが抜擢された。キャストの大部分はハマス・メンバーで占められ、昨年末の(イスラエルによる)ガザ攻撃でその中の4人が死亡した。

劇中では「伝記」という要素にとどまらずアクション・シーンなども描かれる。とりわけ「イスラエル人を殺すことは神を崇めることと同じだ!」と決め台詞が叫ばれるシーンでは、観客が歓声を上げるなど大いに盛り上がりを見せているという。

ガーディアン紙によると、現在ガザ地区では"Culture of resistance"と称するハマスによるメディア・キャンペーンが行われており、ハマスが所有するテレビ局、ラジオ、ウェブを通じた情報発信のみならず、ガザ地区の現状を表現したアートや演劇、詩の発表などにもハマスが支援を行っており、今回の映画"Imad Aqel"の製作・公開はそのキャンペーンによる最新の成果にあたるという。

ジェンデヤ監督は次なる段階として「この映画をカンヌで上映したい」と語っている。僕はこのコメントに思わず笑ってしまったのだが(第一カンヌが許すわけがないじゃないか)、次の瞬間、彼らはいたって真剣であることに気がついた。

つまりハマスは"Imad Aqel"をガザ地区内の娯楽・戦意高揚の手段として位置づけるとともに、ガザと世界とをつなぐ格好の媒体としても期待を寄せているのだろう。カンヌ上陸はもはや願望や夢などではない。ジェンデヤ監督にとってまさに“使命”にも等しい到達点なのだ。

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