« Auschwitz3~バリツェ・エキスプレス~ | トップページ | 全米ボックスオフィスSep.18-20 »

2009/09/16

Auschwitz4~オシフェンチウムへ~

バリツェ・エキスプレスを使うと約15分でクラクフ中央駅に到着する。もうこの時点でイギリスの宿泊先を後にして7時間が経過していた。現地時間では午前11時。アウシュビッツ訪問に関する様々な記述を読むと「午前中にクラクフを出発」が基本とされているので、僕にはもはや一刻の猶予もなかった。

次の課題は、迅速に「東側のバス・ターミナル」とやらを探すこと。見知らぬ土地で気持ちだけが極端に焦る。そうしたときには往々にして間違いが起こるもので、イチかバチかで外に出てみた場所は、案の定、ターミナルの真反対だった。

すかさずポーランド人のおじさんがやってきて"Are you Japanease?"と聞いてくる。"Yes?"と答えると、「コンニチハ!」と挨拶。この笑顔、胡散臭いなと思っていたら、やっぱり白タク運転手だった。「アウシュビッツ?」と切り出してきたので、「ノー・センキュー!」と言い放ち、そそくさと逃走。

降り立った列車ホームの地下通路に戻り、今度は確信をもって反対側の出口へ。旅行者用の売店や書店(なぜこんなところに?)を抜けるとタクシー乗り場が広がり、その向こうにターミナルが見つかった。こっちでは白タクっぽい人に声をかけられることはなかった。正当な無線タクシー・ドライバーたちがテリトリーを荒らされないように監視しているのかもしれない。

アウシュビッツ博物館のあるオシフェンチウムまではここから1時間半のバス移動となる。窓口に並んでいると、すぐそばにハンチング帽をかぶった老人が棒立ちになっており、てっきり彼も並んでいるのかと思って「お先にどうぞ」と手で合図すると、「いや、いいんだ、いいんだ」と後ろに引きさがった。彼の視線の先には窓口でチケットを購入中の女性の姿。どうやら老人は妻がきちんと購入できるかどうか棒立ちして見守っていたようだった。僕の番が回ってきたころには「よかった~、買えた~」と祝福しあうふたりの声が耳に届いた。

「オシフェンチウム」と言ったつもりで「ビザンチウム」行きのチケットを手渡されても嫌なので、駄目押しでポーランド語表記の地名とその下段に「Aushwitz」と書いたメモを差し出して購入依頼。すると、窓口のおばさんはパソコンをカタカタ鳴らして「オウ!」と声を出す。「次のオシフェンチウム行きは運転手からチケットを買うことになってるの」とのこと。

まもなくして指定されたBAYに入ってきたのはマイクロバスだった。これはどうやらアウシュビッツ博物館行きの直通バスらしい。ガイド書では「ローカルバスのほかにマイクロバスも出ている」と書かれていたが、これがその後者にあたるようだった。金額の10ズロチ(370円くらい)を支払い車内に入ると、先頭部分にはマイクロバスの「アウシュビッツ―クラクフ」臨時バスの発着時間が大き貼り出されていた。

真夏のアウシュビッツ往復はバスが込み合うと聞かされていたので、どれだけの旅行者が集まってくるのか心配していたが、8月27日(木)11時20分発の便は乗客がだいたい10名ほどで出発進行。全くの拍子ぬけである。

客層はというと、20代の若者から僕みたいな30代のオッサンまで実に様々。女の子の群れは「じゃ、行こう!」などと気合を入れて乗り込んでくる。はじめはキャッキャはしゃいでいたようだが、車内で1時間半揺られ「オシフェンチウム」と書かれた道路標識を多数見かけるようになってくると、誰もが一様に臓器のあたりがジンジンと緊張しはじめるのを感じているようだった。ポーランドの日常が駆け抜けていく。上半身裸の男たちがバラック小屋を解体するのが見えた。両親と息子とで広大な畑仕事を行う家族の風景が見えた。道端に小さなマリア堂をよく見かけた。道路脇に唐突に花が供えられているのも見かけた。(きっとこの場所で誰かが亡くなったのだろう)。

交通量の多い、やや渋滞気味の交差点で最後の方向選択を行うと、あとはオシフェンチウム駅、そしてミュージアムに至るまでバスは迷いなく(渋滞もなく)進んでいく。

ここまで来ると景色が一気にセピア色に変貌していくかのようだった。どこかで見覚えのある風景。人気のない倉庫のような建物が立ち並び、何もかにもが収容所の一部に見える。バスと並走して鉄道の引き込み線が延びているのがわかる。事前に確認した地図ではここに線路は無かったはずだ。現在はとうに使われていない線路であることは容易に想像がついた。

そして唐突に運転手は旅の終わりを告げる。「アウシュビッツ!」。ポーランド人にとってみれば屈辱的な地名であるはずのこのドイツ語の響きが車内にこだまする。仕事とはいえ、毎日この名を口にしている運転手の心象たるや幾ばくたるやと、ふと想いがよぎる。

降車してみると、不安を吹き飛ばす別世界が待っていた。

世界中からやってきた、おびただしい人、人、人。昼時ということもあって、芝生に寝転んだり、お昼御飯を食べたりして、それぞれがくつろぎのひとときを過ごしている。はしゃぎまわる青年たちの姿もある。

それはとても牧歌的な風景だった。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« Auschwitz3~バリツェ・エキスプレス~ | トップページ | 全米ボックスオフィスSep.18-20 »

アウシュヴィッツ訪問」カテゴリの記事

旅の記録」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/46227905

この記事へのトラックバック一覧です: Auschwitz4~オシフェンチウムへ~:

« Auschwitz3~バリツェ・エキスプレス~ | トップページ | 全米ボックスオフィスSep.18-20 »