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2009/10/17

『激情』TIFF

300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、お手軽な文系スポーツ。今回のお題はTIFF(東京国際映画祭)のコンペ作『激情』です。

ギジェルモ・デル・トロ(『パンズ・ラビリンス』)製作の本作は、一見ダーク・ファンタジーとも見まごう奇妙な愛のかたちが全編を貫く。建設現場で働く南米移民、ホセ・マリアは、移民をさげすむ周囲の視線にすぐさま激高する危険な男。あるとき不運にも人を殺めてしまい、愛するローサが仕えるお屋敷に逃げ込むのだが…。屋敷内に彼の存在を知る者はいない。亡霊のように、はたまたローサの守護天使のように暗闇をさまようマリア。かつてキム・ギドクが似た発想を用いたこともあったが、スペイン産でなおかつ移民監督の手による本作はまた違う意味合いを持つ。なにより「屋敷」を国家や人格の象徴としても想起させる筆致の強さには見ごたえがある。

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ちなみに、

同じくギジェルモ・デル・トロがプロデュースした作品に『永遠のこどもたち』という映画がある。かつて自分の育った孤児院を買い取った女性が屋敷内で愛息の姿を見失い、そのまま長らく生き別れてしまうというストーリーだが、この作品でも中核をなすのが「屋敷」という存在だった。

建築物は感情を口にしたり憤りを露わにしたりはしないが、その存在自体が人格を示唆することがある。僕らが古い建築に畏敬の念を感じたり、あるいは恐怖におののいたりしてしまうのもそのせいなのだろう。

そんな人格の真っただ中にあって、『永遠のこどもたち』の主人公はラストに地下室で愛息を発見する。屋敷にはそれまで誰にも知られていない秘密の地下室が存在したのだ。

これは人間の意識でいうところの「深層心理」にあたる。彼女は自分でも自覚のない意識の深みに沈潜していくことによって、愛息を抱きしめるのだ。

翻ってデル・トロによるもうひとつのプロデュース作『激情』でホセ・マリアが潜伏する先は屋根裏である。これは『永遠のこどもたち』の深層心理に対する超自我、つまり際限なく感情の爆発する場所を意味するのではないか。

そしてこれは同時にスペイン国内における移民の住み位置を象徴するものでもある。わらをもすがる思いで忍び込み、息を殺してひっそりと暮らし、決してリビングやキッチンで安息を享受することはない・・・

あらゆる「激情」を表象するホセ・マリアがはたして最後にどのような表情を浮かべるのか。どうか固唾を呑んで見守ってあげてほしい。

そして皆様、どうか住居とのよりよい関係性を。

デル・トロ監督作『ヘルボーイ2』は傑作です!

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