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2010/01/28

パラノーマル・アクティビティ

たった1万5千ドルの製作費で何ができるだろう?

まず、有名俳優は使えない。VFXを施すのも難しければ、撮影場所を抑えるのも大変…つまり、この企画は当初より劇場用のビジネス・モデルとして成立しないのだ。

でもだからこそ『パラノーマル・アクティビティ』は突然変異の自主製作として生まれ、底辺から這い上がった。そしていつしかこの映画をめぐる噂は都市伝説のごとく広まり、ついに劇場公開されるや否や全米で1億ドル以上を稼ぎ出す事態となった。09年最大のニュースは『アバター』の3D革命に譲るにしても、2番目に来るのは間違いなく本作の下剋上だろう。

86分の短い映画なので、ストーリーについては触れずにおこう。見どころは、新居に移り住んだ若いカップルの遭遇するポルターガイスト現象の数々。手持ち、または据え置きのカメラに映り込む、アイディアだけで刻まれたささやかな“驚き”の総和が、観客の目をほころばせる。ドアがギギギ…と動くだけで、なんだか無性に楽しい。僕らにも手の届きそうな手づくり感覚。「怖い!!」とヘトヘトに疲れるのではなく、観賞後の余力を「誰かに伝えたい!」という想いに向かわせる。ツイッターの普及とこの映画の成功は不可分だろう。

すなわち、映画の成熟度として、というよりも、本作はコミュニケーション・ツールとして最高のコストパフォーマンスを達成したというわけだ。どんなにビジネススキームをばっちりと組んだ映画会社であっても、この成功は計算して起こせるものではない。“現象”は意図せずして起こった。観客は本作の「ビジネス臭のしない無邪気さ」を敏感に察知し、自らも進んでこのパラノーマル(超常的な)・アクティビティ(動き)に吸収されたいと欲した。

ということは、本作が仮に完璧な映画であったなら、ここまでの現象は起こり得なかったことになる。これは新たな可能性なのか?それとも既存の映画の限界なのだろうか?

と疑問を投げかけたところで、パラノーマルな家は相変わらずゴゴゴ…と擬音を発するのみだ。

ちなみに、本作の劇場公開が決まってからスピルバーグのアドバイスにより追加撮影が行われたという。これはスピルバーグ流のアイディアを伝授したというよりも、劇場映画としての“作法”を教授したといったほうが適当かもしれない。

かつて『ポルターガイスト』を手掛けた(製作)彼が、いま本作を交えて新世代の才能と言葉を交わしている・・・そんな場面を想像するだけで無性にドキドキする。

コミュニケーション・ツールとしての『パラノーマル』は、ここでも才能と才能をつなぎ、見事にその威力を発揮していたわけである。

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