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2010/01/03

誰がため

かつてヘミングウェイの著した「誰がために鐘は鳴る」は、スペイン国家が真っ二つに分かれて泥沼の殺し合いを繰り広げた内戦期を描いた物語だった。本作はおそらくそこからタイトルの一部を邦題に拝借したのだろう。舞台はやや緯度を上にずらした北欧デンマーク。それもナチスによる占領時代だ。このとき、やはりこの国でも、国民を二分した血なまぐさい衝突が延々と繰り広げられていた。

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原題は"Flammen & Citronen"。ふたりの主人公の名前である。1944年、コペンハーゲン。歳の10以上離れたふたりは、ナチスに牛耳られた祖国を奪還すべくレジスタンスに身を捧げる。大義名分のためなら血を流す行為だって辞さない。組織はふたりに重要な仕事を託する。ナチスに心を売った裏切り者たちを暗殺せよ、というのだ。彼らに疑う余地はなかった。組織の命令は常に正しい。暗殺された者たちは正真正銘の悪人たちである・・・。

しかし、ふとした出来事をきっかけに迷いが生じる。はたして組織の情報は正しいのか?そして本当に我々は正義を実行していると言えるのだろうか・・・?

本来ならばナチスに対抗するレジスタンス組織はデンマーク人にとって英雄であるはず。しかし実在したふたりの闘士が直面したのは、「正義」に隠されたジレンマであり、落とし穴でもあった。彼らに関する資料をデンマーク政府が長らく公表しなかったというのも頷ける話である。

あれから65年以上が経過し、世界ではいまだに「大義名分」を振りかざして生命を奪う行為が絶えない。そういう時流へのアンチテーゼなのか、それともデンマーク人のほとぼりが冷め、戦後生まれの若い世代が「真実を知りたい!」と欲したのか、本作は公開されるや国民の8人に1人が劇場へ足を運ぶほどの大ヒットを記録したという。

天使と悪魔』のトゥーレ・リントハート、『007/カジノ・ロワイヤル』『アフター・ウェディング』『シャネル&ストラヴィンスキータイタンの戦い』(リンクはすべて拙ブログ内のレビューに飛びます)でもお馴染みのマッツ・ミケルセンふたりの国際派俳優による焦燥した名演に圧倒される。彼らのアプローチなくしてこれほどのブームを巻き起こすのは不可能だったろう。

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