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2010/01/03

ジュリー&ジュリア

40年前のパリと、現代のニューヨーク。食材、街並み、服装、家具に調度品だって香りを放つ。。。作品を取り巻くあらゆる美術が鮮烈に感性を楽しませ、そこに料理が供され、次の合言葉ですべてのバランスが調和する。

"Bon Appetit !"

Julie_and_julia_3   
きっかけは夫の転勤だった。ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)のパリ生活が幕を開ける。平凡な主婦(←男性がこんな表現使っちゃ失礼ですよね。。。)の彼女はいつも明るく、何事にも前向きに取り組む、気持ちのいい女性だった。誰も彼女を嫌う者はいない。甲高い声、ヒョロンと長身な体型。使いこなせぬフランス語も気持ちでカバーしつつ、彼女が見出したひとつの題材は「料理」だった。手の込んだフランス料理の作り方を、“助手なし”でもできる家庭料理として英語で紹介したい。。。熱い想いが仲間を呼び、ジュリアは夢の実現に向けて少しずつ歩き始める。高尚と思われがちなフランス料理を庶民の目線に取り戻した彼女は、後に料理研究家として料理本やテレビ出演、それに独特のキャラにより「サタデーナイトライブ」でもネタにされるほどのセンセーションを巻き起こす。

そして物語は時空を超え、同時進行する。ジュリアと共に日常の冒険に踏み出すのは、40年後のニューヨーク・クイーンズに暮らすアラウンド・サーティーな女性ジュリー・パウエル(エイミー・アダムス)だ。朝、彼女の出勤風景の背後に摩天楼が浮かぶ。でもそこにはあるべき双子の構想ビルが手品のように消失している。時は2002年。彼女の生活圏には9.11後の影響が今も生々しく残り、彼女は公務員としてテロに関係する相談窓口を担当している。どんなに仕事や友人関係やこれからの人生のことで落ち込もうとも、彼女には宝物がある。それはかつてジュリア・チャイルドが著した料理本。アメリカ人にフランス料理を紹介した革命的な本だった。ジュリーは突如として思い立つ。日々、ジュリアが手掛けたあらゆるレシピを料理し、その模様をブログに掲載していこう。期限は1年間!その日のエントリーの末尾はこう締めくくられた。

"How far it will go, no one can say..."
(はてさて、どうなりますことやら)

別々の時代を生きるふたりが出逢うことはない。でも、彼女たちはそれぞれの辿る“物語”においてしっかりと繋がっている。女性であること。そしていま、料理と向かい合っていること。この2点を媒介に、40年もの時差を経て生きるジュリア&ジュリーは少しずつ、時間を同調させていく。これはスティーヴン・ダルドリー監督作『めぐりあう時間たち』で用いられた手法をもっとシンプル化したものと言えるのだろう。

この映画で主演女優のオスカー候補になったメリル・ストリープはいつものイメージを覆す針の振り切れぶり。底抜けの明るさの彼女の姿を目にするだけで観客も幸福感でいっぱいになる。ただ1つだけ彼女が思いつめた表情を見せるのは、夫との間に子宝に恵まれないことを示唆する場面だっだ。女性映画の第一人者ノーラ・エフロンはどうしてこのようなシーンを入れたのか。ひとつは彼女の人生を描くうえで欠かせない要素と考えたのだろう。加えて、ジュリアは子宝に恵まれなかったが、一方で本作は、40年後の現代にもなお、彼女の人生に感化された素晴らしい子供たちが次々と誕生していることを賛美する映画でもあるのだ。

物語のラスト、ジュリーがスミソニアン博物館にある展示品“ジュリア・チャイルドのキッチン”を巡礼する。

ジュリアの肖像に敬意をこめて、ジュリーはこっそりとバターを奉納する。“ジュリアの子供”から“母”へ、最初で最後のプレゼント。そしてこれを受け取るように、40年前のジュリアのもとへ幸福の郵便物が届けられる。

影響力とは過去から現代へ、ただ一方向に作用するものではない。これぞ映画の見事なタイムトラベル機能。日常レベルのささやかな演出が、ふたりの女性の関係性に(生涯のうちに言葉は交わさなかったにしろ)とても爽やかな後味をもたらしてくれる。

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