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2010/02/25

しあわせの隠れ場所

サンドラ・ブロックがアカデミー賞主演女優賞候補となるどころか、本作自体も作品賞候補入り。とはいえ、個人的に『しあわせの隠れ場所』という邦題はちょっと考えすぎな気もするのだ。原題はかなりスッキリと"The Blind Side"。冒頭、このタイトルが何を示しているのかをアメフトのVTRで紹介してくれる。なるほど、クオーターバックがボールを持って走るとき、彼の“死角(ブラインド・サイド)”となる部分を守る、その縁の下の力持ち的なポジションこそがチームの勝敗に大きく影響してくるのだ。そして“死角”とは人生の至るところに現れ、我々の人間性に試練を与えるもの。これはキリスト教の「隣人愛」を意識せずにはおられないテーマを秘めたヒューマン・ドラマだ。

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ブラディ・サンデー

“ジェイソン・ボーン”シリーズや『ユナイテッド93』で今や名将の地位を確立したポール・グリーングラス。その持ち味がエンタテインメント領域にドキュメンタリーの風を吹き込んだことにあるとすれば、これは洋風・是枝裕和ということもできるのだろうか。
Bloody_sunday_2

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2010/02/22

全米ボックスオフィスFeb.19-21

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Feb.19-21 weekend】

01 Shutter Island (-)
02 Valentine's Day (↓)

03 Avatar (↑)
04 Percy Jackson & The Olympians (↓) 
05 The Wolfman (↓)
06 Dear John (↓)
07 Tooth Fairy (↓)
08 Crazy Heart  (↑)
09 From Paris with Love (↓)
10 Edge of Darkness (↓)

■50年代アメリカ、孤島にある精神病院からひとりの収容患者が消えた。残された暗号を手掛かりに捜査官は行方を追うが次第にこの島の暗部に行く手を阻まれ・・・。『ミスティック・リバー』や『ゴーン・ベイビー・ゴーン』でおなじみデニス・レヘイン原作の『シャッター・アイランド』(日本公開4月9日)が3日間で推計4020万ドルを売り上げ、首位を獲得。これはマーティン・スコセッシ&レオナルド・ディカプリオのタッグ作として過去最高の出だしであり、彼らの単独作としても過去最高。意外かもしれないが、レオ主演の『タイタニック』でさえオープニング興収は2864万ドル。これまでの最高値は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の3005万ドルだった。

■当初の10月公開予定がこの時期までズレ込んだことについて、米凄腕ブロガー/映画ジャーナリストのニッケ・フィンケ女史は「パラマウントのプロモーション費不足&レオが新作撮影のため充分な宣伝活動に時間を費やせない」(詳しくはこちら)ことなどを理由に挙げている。各種インタビューではレオに「精神的に最も過酷な撮影だった」と言わしめた本作、その内容のほどは?日本でのマスコミお披露目は火曜です。

■先週の覇者『バレンタインデー』は2位へ。週末興収は先週比76パーセント落ちの、推計1716万ドル。10日間の累計は8740万ドルとなった。3位の『アバター』は推計1610万ドル。累計は6億8780万ドルに達した。来週の今頃は7億ドル越えか。

■4位『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は先週比50%落ちの1530万ドル。10日間の累計は5876万ドル。製作費は9500万ドルと言われているが回収できるか?一方、製作費1億1000万ドルともいわれる『ウルフマン』は、興収985万ドルを計上。10日間の累計を5301万ドルとした。

■ランク外ではベルリン国際映画祭でも監督賞を受賞したロマン・ポランスキーの"The Ghost Writer"が限定公開を迎えている。トニー・ブレアがモデルともいわれる元英国首相役に元007のピアース・ブロスナン、彼の自叙伝を執筆するゴーストライター役にユアン・マクレガー。今のところ1館あたりのアベレージが44750ドルという、まさに桁違いの稼働ぶりを記録している。巨匠ポランスキーがスイスの獄中でも編集作業を続けていたという本作。いまだに自宅逮捕中の彼に代わって、作品は全世界を飛び回っている。

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2010/02/18

2月17日ツイート

1日の締めくくりに、本日のツイートを概観。
2010年2月17日はこんな日でした。

ヴァラエティによると、Fox International Productionsがケイリー・グラント、デボラ・カー主演『めぐり逢い』の日本リメイクを開発中らしい。『余命1ヶ月の花嫁』『チーム・バチスタの栄光』の斎藤ひろし氏が脚本を執筆中。http://bit.ly/cAaWsA

シャールク・カーン主演"My Name is Khan"がUKにおけるボリウッド映画のオープニング記録を樹立。(BBC) http://bit.ly/9vV1wf これは映画の人気?カーン氏の人気?それともカーン氏のクリケット発言に対する海外からの支持?

カーリングの試合展開は時間を忘却させる。危ない。

イランのジャファル・パナヒ監督(オフサイド・ガールズ)はベルリン開催のパネル・ディスカッションに出席予定だったが、出国認可が下りなかった。パナヒは大統領選後の抗議で拘留されるも、モントリオールでは緑のスカーフで登場。その制裁に一時、他の監督の映画祭参加が一切禁じられたこともある。

ボーン・アイデンティティのダグ・リーマン監督が71年に起こったアッティカ刑務所暴動の映画化を準備中。脚本は『プレシャス』のジェフリー・フレッチャー。リーマンの父はニューヨーク州が設立したアッティカに関する特別委員会の主任弁護士を務めていた。http://bit.ly/bilAo0

RT @cinefiloriginal: ベルリンで上映されたシルヴァン・ショメー『The Illusionist』レビュー。「ジャック・タチが書きあげたが制作されなかった脚本を超一流の手書きアニメ作品に」と絶賛。出来るなら今日にでも観たい! http://ow.ly/18666

脳科学的、かつ詩的!RT @oryon_mode 氷上のチェスですから。選手は頬を切る風で時間を感じるのではなく、脳内に広がるドーパミンで時間を感じるのでしょう。。。 RT @tweeting_cows カーリングの試合展開は時間を忘却させる。

ディズニーが『アリス・イン・ワンダーランド』の劇場公開→DVDリリースの期間を3カ月へ短縮しようと調整しているのに対し(平均的なウィンドウは4カ月)、米の興行主は一定の理解を示しているものの、各国の興行主からは反発の声が上がっている模様。http://bit.ly/aCA7fm

はははっ!RT @mcyst Well, I cannot deny that... Not proud of it at all! RT @timothyt: From a distance, the Japanese speed skaters look like C3PO

今年のオスカー公式サイト http://oscar.go.com/ は毎日挑戦できるトリビア・クイズや受賞予想などで個々の得点が競えるようになっている(登録制)。さきほど挑戦してみたのだが…出題が難しすぎてわからん!とにかく、授賞式の視聴率UPのため関心を繋ぎとめようと必死だ。

賞レースは無名の才能を有名にする。『17歳の肖像』のキャリー・マリガンは、先日携帯にオリバー・ストーンから着信があり「マイケル・ダグラスの娘役でどうだい?」と誘われた。「オーディションなしで役が貰えるなんて変な感じ」。確かにいきなりストーンにかけてこられると、変っていうか、怖い。

●本当にボイコットする気?オランダ&イギリス劇場チェーンの態度が未だ軟化に向かわず。RT @guardianfilm European cinemas join threat to boycott Alice in Wonderland http://bit.ly/asYb0m

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2010/02/17

コララインとボタンの魔女

築150年の家に引っ越したばかりの少女コラライン。パパもママも仕事で忙しく構ってなどくれない。そんな矢先に見つけた秘密の扉。好奇心に導かれるまま開いてみると、そこは現実と違う夢のような世界だった…。Button

原作が宮崎アニメ大好きな多芸者ニール・ゲイマンなので『千と千尋』っぽい物語かなと思ってたら…もうこれは、コララインに先んじて僕らが「秘密の扉」を開けてしまったかのような映像世界。冒頭、一体の縫いぐるみが宙に浮かび手際よくツツツと糸をほどかれる。内臓の代わりに白綿がぶわっ。そうそうこの感じ。これが『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(劇場公開から16年!)を手掛けたヘンリー・セリック監督の、ちょっとダークだけど、なんだか愛らしくもあるストップモーション・アニメなのだ。ここで心掴まれるや、あとは一気に跳べる。ツンとした黒猫。奇怪な仮面のバイク男子。ネズミのサーカス。子供たちのゴースト。僕らはすっかり別次元の触感へと導かれ、その一挙手一投足に溜息を洩らす。ふー。

そもそも映画の1秒間はフィルムの24コマ。少女のほんのささやかな表情の移ろいを描くにしても、いったいどれほどの集中力と粘り強さ、アーティスティックな引き出しが必要とされたのだろう。実際には作りモノであっても、フィルムを介して見つめたときに彼らは躍動感たっぷりに生きている。1コマ1コマ、血が通い、息をしている。この撮影に4年かかったというのだから、リアルであれフィクションであれ、生命を吹き込むとはいかに大変な所業なのか思い知らされる。

そしてスクリーンでは徐々に、願望世界が化けの皮をほころばせる。水面張力が限界を越えて弾けるみたいに、今度はめくるめく狂騒が洪水みたく襲ってくる。このギアの切り替えも見どころのひとつ。今回は『ナイトメア~』みたいにミュージカル調ではないものの、『コラライン』にも月の満ち欠けのような音楽的なダイナミズムが脈々と流れ、感情の浮き沈みを司っているかのようだ。Button_3 また、すっかり海の向こうのお話と思いがちだが、実は本作、日本からもコンセプト・アーティストとして上杉忠弘氏がエキスを注入している。ここに息づくキャラクター、お屋敷、部屋のデザイン、コスチュームはすべて上杉氏のイラストレーションを基に少しずつ具象を帯びていったもの。そして先日開催されたアニメ界の祭典アニー賞授賞式では、見事、氏が「プロダクション・デザイン」部門で最優秀賞獲得を果たした。

これは同じ日本人として心より祝福しながらも、他にも上杉さんのような才能が何百人と束になって『コラライン』のキャラクターを1コマ1コマ動かしてきたことを思うと、あらためて映画作りというものが途方もない共同創作であると気付かされる。

東欧アニメ、ウォレスとグルミット、そしてナイトメア…。どうしてストップモーション・アニメはこれほどまでに愛されるのだろう。実写でなく、フル・アニメでもなく、恐るべき手間暇をこかけざるをえないこの方法論。映画は時代と共に進化していくトリッキーな存在だが、でもこの手法だけは、いつどの時代でも嘘をつけない気がする。本作が『アバター』とおなじ3D上映であるとしても、そこには“理解可能な技術”として、なんだかとても安心できるものがある。

そこに手の温もりがしっかりと残っている感覚。僕はストップモーションを目にするといつも、無性におじいちゃん、おばあちゃんの手のひらを思いだしてしまうのだが…あなたはどうですか?

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2月16日のツイート

1日の締めくくりに、本日のツイートを概観。
2010年2月16日はこんな日でした。

●American Cinema Editors主催の“エディー賞”発表。60回目の節目を制したのは、ドラマ部門『ハート・ロッカー』、コメディ&ミュージカル部門『ハングオーバー』、アニメ部門『カールじいさん』、ドキュメンタリー部門『ザ・コーヴ』。 #eiga 

●ロンドンでアンソニー・ホプキンスの個展が開催。02年より描き続けているという氏の絵画は、70歳を越えてなおパワフルな演技・表現力の源といえるのかも。彼の作品の数々、 http://bit.ly/a7iahV あなたはどう評価する?

●今朝はとんでもなく気持ちの悪い目覚めだった。こんなに気持ち悪く起きた日は未だかつてなかった。なにか悪いことでも起きなければいいが、とひとしきり不安になど浸ってみたが、もし起きたとしても「そんなこともあるさ」と思えるくらいにポジティブに努めようと、今しがた気分を切り替えたところだ。

●オスカー候補者の恒例ランチが開催された。メニューは、ポーチした梨とゴルゴンゾーラのサラダ→鳥の胸肉のマリネ→アップルタルト。出席者は食べた気がしないだろうな。 #eiga 

●ははは、天下のジュリアが相手だと逆に料理出すほうが緊張しちゃいますよね。 RT @oryon_mode メリル・ストリープは食べた気がしたと思います、きっと。 RT @tweeting_cows オスカー候補者の恒例ランチが開催された。出席者は食べた気がしないだろうな。

●配給決まったんだ!RT @tiff_site 矢田部PDブログ【15日夜/ベルリン】昨年のTIFFでグランプリを受賞した『イースタン・プレイ』のカメン・カリフ監督が手を振っている!『イースタン・プレイ』は日本での劇場配給も決まり.. http://bit.ly/awv4D3 

●「大統領の日」でお休みの月曜分を加えた北米4日間(金~月)興収の推計が出た。1位バレンタインデーの興収は6,685万ドルまで上昇。劇場ごとのアベレージでは18,240ドルと、TOP10外のボリウッド映画"My Name is Khan"のアベレージ18,960ドルに届かなかった。

●"Crazy Heart"で助演女優賞オスカー候補のマギー・ギレンホールは弟ジェイク(『ブロークバック・マウンテン』で候補入り)に助言をもらったとか。「オスカーは“虹の終わり”ってわけじゃない。だから心から楽しんで。あんまり意識しすぎると、行きづまっちゃうよ」 #eiga 

●北欧のキム兄ことラース・フォン・トリアーが『タクシー・ドライバー』リメイクを画策しているとのヴァラエティ報に、「トリアーはコペンハーゲンからベルリンまで車でやってきて…」とあり、またこの飛行機嫌いめ、と思って世界地図をみたら、デンマークとドイツは隣どおしでビックリ。無知を恥じた。

●ちなみにトリアーは、スコセッシとの密談以外に新作SF"Melancholia"の商談も兼ねてのベルリン入り。タイトル聞いただけでこっちまでメランコリックになりそうだが、ぺネロぺ・クルス主演で来年内には撮影が行われそう。『タクシードライバー』リメイクはその後か。

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2010/02/16

パレード

『今度は愛妻家』と『パレード』。同時期に2つの作品を解き放つ行定勲監督は、自身のキャリアのなかでずっと“物語の生じる場所”にこだわり続けてきた人でもある。

たとえば、『遠くの空へ消えた』では主人公が自分のなかの思い出を誰かに語り聞かせるシーンからドラマが始まる。『クローズド・ノート』は置き忘れてあった日記を手に取ることで追想が始まる。また『世界の中心で、愛をさけぶ』では恋人の知られざる過去を紐解いていくスタイルが取られる。主人公が開いた窓の向こうで更なる物語が広がっていくわけである。

そのいずれにおいても行定勲は“語りたいとする衝動”“知りたいとする衝動”を大事に掬い取り、窓の向こう側とこちら側に擁立された主人公を巧みに向き合わせていく。つまり『ネバーエンディング・ストーリー』のバスチャンとアトレーユの関係なんですね。しかもその立ち位置が観客とも接続されていくという、三すくみ、ならぬ3者の共存関係。

その点、今回は行定流のこだわりも更にハードル高めに設定されてある。吉田修一の原作小説を監督みずから脚色した本作は、東京のマンションでルームシェアしながら暮らす5人の男女の群像劇だ。藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介といった役者陣がそれぞれに巧妙な光を放ち、それが交わって幾色にも勾配の可能性を広げていく。

学校の先輩後輩だとか、親友、同業者なわけでもない。彼らは単に、“程よい距離感で接せられる関係性”を求めている。互いを知ってるようで、深くは知らない。または、嫌になったら自由に退出することだってできる。あるキャラクターはこれを「チャットや掲示板みたい」と表現する。

カメラはこの不可思議な個人・集団ライフの侵入者となる。順を追って5人の主観に肉薄し、彼らの日常のなかのダークな部分までをも赤裸々に解き明かす。5人はたとえ同じものを見つめていても、その内面で全く別の風景、それぞれの物語を持っている。共同生活とはその物語を見つめあうこと。そして究極的にそれらを集約し、客観性を掘り起こしていく作業は観客のみに許された特権である。これこそ群像劇の醍醐味といえば醍醐味―。

つまり映画のタイトルでもある『パレード』とは、劇中に登場する回転木馬みたく、作りモノの馬車に乗ってグルグル人生を旋回しつづける5人の若者たちと、その中心部分で彼らの姿をじっと俯瞰し続ける僕ら観客との、互いの共存・共犯関係を言うのではないか。

ゆえに今回の行定印「物語の生じる場所」とは、ひとつに共同生活における個々の目線。さらに各々の主観を蓄積し“客観”が生成されていく僕らの脳内でさえある。そしてもうひとつの可能性として、ラストシーンに象徴される“とある関係性”が浮上するのだが・・・いろいろと深読みできるこのラスト、言及するとネタばれになるのでやめておこう。

映画のなかで誰かが「ユニバース」ではなく、「マルチバース」と口にする。「世界はひとつではない。存在する人の数だけ世界は存在する」との考え方らしい。「私とあなたとは違うんですよ」と記者会見で言い放ったどこかの国の首相も、このマルチバースのことを言いたかったのかも。

行定監督が原作とは異なる落とし所を付与した『パレード』。ここにもきっと観た人の数だけ解釈の世界が広がることだろう。

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パレード
監督:行定勲
出演:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介
(2010年/日本)ショウゲート
2月20日(土)渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国ロードショー

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2010/02/15

2月14日~15日ツイート

1日の締めくくりに、本日のツイートを概観。
2010年2月15日はこんな日でした。


●スペイン映画界最高の栄誉となる「ゴヤ賞」発表。アレハンドロ・アメナバールのAgoraを制し作品賞に輝いたのは、ダニエル・モンゾン監督の監獄劇"Cell211"。授賞式では05年に協会員を辞したアルモドバルも姿を見せ、その瞬間、会場は温かな拍手に包まれた(ロイター)。 #eiga


●米主導のハイチ復興支援ソングがWe Are the Worldならば、英国主導は"Everybody Hurts"by REMのカバー。マライア、ボン・ジョヴィ、ロビー・ウィリアムズ、ミカ、ジェームズ・ブラント、テイク・ザット、スーザン・ボイル他が参加し、英チャート1位を獲得中。

●160万以上ものフォロワーを持つ映画監督の @ThatKevinSmith が、100万フォロワーの @SouthwestAir にクレームのツイートを連発して、マスコミまで騒ぎだしてる。なんでも太りすぎを理由に搭乗を拒否されたとか・・・。

●シャールク・カーン主演のボリウッド映画"My Name is Khan"が北米興業成績13位につけた。劇場平均は15000ドルで『バレンタインデー』の14000ドル(これも充分に高い)を上回っている。本作は主演俳優の発言をめぐりインド国内で右派のボイコット運動が巻き起こっていた。

●北米週末興業成績もバレンタイン・ムード。有名俳優総出の『バレンタイン・デー』が推計5240万ドルを売り上げて1位。パーシー・ジャクソン(3110万ドル)、ウルフマン(3060万ドル)が手堅い売り上げで続き、アバターは4位に後退。でも累計興収は6億6千万ドル目前。7億ドルは軽いか。 

●BBC電子版。アンソニー・ホプキンスがホラーやスリラー映画で心がけるのは「演技を抑える」こと。「俳優にとってもうちょっと見せたいとする衝動は避けがたいもの。でも私は抑えた演技こそよりよく見えると思う」と語り、自らの演技を'like a submarine'と表現している。


●ロイター。ベルリンでチャン・イーモウの新作"A Woman, A Gun and a Noodle Shop"が熱狂的に迎えられた。『ブラッド・シンプル』リメイクでもあり、10、20年前だと中国では描けなかった内容。監督はコーエン兄弟から絶賛評をメールで受け取ったとも明かした。

●ADG(Art Directors Guild/クレジットで“美術”と称される人たちの組合)が今年の受賞作&者を発表。3つのカテゴリーに分かれており、時代物はシャーロック・ホームズ、ファンタジー物にはアバター、現代劇にはハート・ロッカー。 http://bit.ly/dmHly5

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アウシュビッツの門をくぐり・・・

屈強な体格をしたその専門ガイドは、30人ほどに膨らんだ英語ツアーを手慣れた調子でふたつに区切り(家族を真っ二つに分断された中学生くらいの青年が、慌ててガイドの手をくぐりぬけ両親の側へと滑り込んだ)、一方はあちらのガイドについて行きなさい、そして他方は僕のチームだ、と言い渡した。

館内ツアー参加者は皆、ヘッドフォンを着用している。いくつもの言語ツアーが交差するので、それぞれの周波数がツアー単位で設定されている。こうすればガイドも大声を張り上げずに、胸元のピンマイクに語りかけるだけで事足りる。

「それじゃ、出発しましょう」

「労働は自由をもたらす」と書かれた門をくぐると、路の脇に大きな樹木が生い茂っている。続いて、規則正しく建てられた木造遺構が目に飛び込んでくる。
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一見どれもが同じに見える。かつてここで起こった歴史が刻まれたそのひとつひとつが、そのままの姿で歴史を語り、なおかつ内部を資料館として開放している。

空からは灼熱の太陽。

わがツアーは建物の中へ入っていく。陽光からしばしの逃亡。しかしその内部は薄暗い上に冷房もなく、外とおなじ蒸し暑さが続いていた。
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ガイドはひとつのパネルの前に皆を立たせる。そこには英語とポーランド語でこのような言葉が書かれていた。

"Those who cannot remember the past are condemned to repeat it."(過去を忘れる者はそれを繰り返す)ジョージ・サンタヤナ

「我々はまずこの言葉からスタートしたい」とガイドが切りだす。「これこそ当博物館が発足以来、基本理念として掲げてきた言葉であり、今日みなさんと共に改めて確認していきたいことでもあります」

円を描くように広がった15人が、ガイドの説明に一様にうなづく。最初は文字や写真、パネルの展示が続く。たとえば、ヨーロッパのどれほど広大な地域からアウシュビッツの囚人たちが集められてきたのかを示すグラフ図。また彼らの送還された理由の内訳。

ソ連兵の捕虜。ポーランドやドイツの政治犯。同性愛者。ロマ・シンティ。ユダヤ人。他にも障害者や聖職者など。
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大きく掲示されたモノクロの写真の中で幼い男の子の目がこちらを見つめていた。ほかにも表情を奪われた人たちが、境界線の向こうから写真の前に立つ者だけに視線を送る。当時、この場所でシャッターを切ったのはナチスの腕章をした者だったのか、あるいは単なる仕事として機械的な記録撮影を任された者だったのか。

いずれにせよ僕らは、その“何者か”の目線を借りることで、当時の人々と対峙する。写真には何の感情も刻まれていなかった。憐れみもなければ、何かの決定的な瞬間を選び取ろうとする芸術的感性であるとか、同じ人間に対する親密な態度も存在しない。ただの乾いた記録である。

きっと歴史の教科書や資料集で眺めればいろんな感情が湧きあがっただろう。でもなぜか、ここでは何にも感じられなかった。僕の心は大切な物をすべて自宅に置き忘れてきたかのように“からっぽ”で、この写真も、撮った人間も、みんなからっぽだと想った。これじゃ何も写ってないのとおんなじだよ、と想った。

おかしいのかもしれないが、それが率直な感想だった。

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全米興業成績Feb.12-14

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Feb.12-14 weekend】

01 Valentine's Day (-)
02 Percy Jackson & The Olympians (-)

03 The Wolfman (-)
04 Avatar (↓) 
05 Dear John (↓)
06 Tooth Fairy (↓)
07 From Paris with Love (↓)
08 Edge of Darkness (↓)
09 Crazy Heart  (↓)
10 When in Rome (↓)

■今週の月曜は“大統領の日”(リンカーンとワシントンの誕生日を祝福する祝日)にあたるため、週末ボックスオフィスも大いに火を噴いた。

■さて、この作品から始めよう。錚々たるハリウッドスターたちが横一線で出演する『バレンタインデー』。推計興収5,240万ドルという予想を上回る数字を叩き出し、北米興業成績1位を獲得した。男女15人ものスターたちの“特別な日”を紡ぐのは『プリティ・ウーマン』のゲイリー・マーシャル監督。製作費も興収とほぼ同じ5200万ドルと報じられており(偶然の一致?)、季節モノとはいえ、まだまだこのジャンルが有効であることを証明した。もしかすると先週の"Dear John"を観た観客がそこで流れた予告編に惹かれて今週も劇場へ・・・ってパターンもあるのかな。

■2位には『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』が登場。ファミリー層を見事に取り込み、推計興収3110万ドルとなかなかの堅実なスタートを見せた。ハリー・ポッターの二番煎じと散々揶揄されてきた本作だが、製作費はそんじょそこらのSF大作以上にかかっている(9500万ドル)。全5巻ある中の第1段に過ぎないが、シリーズ存続の如何はすべて興収次第といったところ。

■『ウルフマン』は興収3060万ドルを計上し3位に落ち付いた。主演は『チェ』2部作のベニチオ・デル・トロと『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンス。父と子を結ぶ、古より語り継がれし“呪われた定め”とは・・・?監督は『ジュラシック・パーク3』のジョー・ジョンストン。『セブン』の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが参加しているのも話題のひとつ。

■そんなわけで今回は1位に女性層、2位にファミリー、そして3位に男性客が集中し、完璧なる客層の住みわけが成立した。3日間のボックスオフィス全体の興業収入は推計1億9300万ドルに昇り、これは『13日の金曜日』(09)が公開された昨年の“大統領の日”週末の記録を塗り替え、歴代1位にあたるという。

■9週目の『アバター』は4位へ。それでも興収2200万ドルと先週とほぼ横ばいの粘りを見せ、累計を6億5965万ドルに伸ばした。7億ドルを軽く越えることは確実。■先週の覇者"Dear John"は5位に落ち付いた。推計興収の1530万ドルは先週と比べて-50%の数字。これはハリウッド映画の平均的な落ち方なので、可もなく不可もなくといった感じ。

■番外編として13位に初登場のボリウッド映画"My Name is Khan"を挙げておく。アスペルガ―症候群を患う主人公が愛する人と結ばれて幸福を噛みしめていた矢先、あの9.11が発生。ムスリムに対する人々の態度が硬化していく・・・。
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主演はボリウッドの大スター、シャールク・カーン。
彼自身、プライベートでもイスラム教を信仰するインド人なのだが、先頃インドではカーン氏をめぐり大騒動が巻き起こった。というのも、インドで開催されるクリケット・プレミア・リーグの選手選考について「パキスタン選手がひとりも選ばれないのはおかしい」と発言。これに対し右派が猛抗議を展開し、カーン氏の主演映画のボイコット、果てには一部の暴徒化した市民の劇場襲撃を誘発する事態にまで発展。結局、当局が大量の警察官を投入し、これまでの逮捕者は1800人を下らない。そんな母国のニュースが米国内でも広まったのか、映画は大ヒット。全米120館での公開ながら、1館あたりの週末興収は15,000ドルを超え、アベレージとしては他作品の追随を許さない圧倒的な差をつけている。

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2010/02/14

新しい人生のはじめかた

300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、お手軽な文系スポーツ。今回のお題は『新しい人生のはじめかた』です。

ロンドン旅行のお供、だけじゃなく、もっと英国を知りたい人におススメ。
初老のアメリカ人男性が娘の結婚式のためにロンドンへ。だがこの街で孤独に苛まれた彼は、これまた孤独に佇む空港職員と出逢い…。ヴァージンアトランティックの機内誌で「おススメ!」と紹介されていた本作。なるほど、当機の向かうヒースロー空港が舞台のひとつだし、ヒースロー・エクスプレス→ロンドン中心部→テムズ河のほとりという定番コースも旅行者には嬉しい。でも本作はそれだけじゃなく、英国人に自らの国民性を見つめさせ、うん、まんざら悪くない、と思わせるウェルメイド感にも満ちている。英国産ながら昨年のゴールデングローブでは主演女優&男優賞候補に(*)。2大俳優のこれまでになく寂しげ、かつ踏み出せない心を優しく映しだし、そっと人生の背中を押してくれる佳作。
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(*)その代わり英国のアカデミー賞にあたるBaftaアワードにはノミネートされていない。
ご当地の観客以上にハリウッド在住の外国人記者たちによって評価された英国映画として
本作は極めて特殊な地位を築いている

新しい人生のはじめかた
監督:ジョエル・ホプキンス
出演:ダスティン・ホフマン、エマ・トンプソン、アイリーン・アトキンス
(2008年/イギリス)クロックワークス
2月6日(土)TOHOシネマズ シャンテほかにてロードショー

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2010/02/11

第9地区

300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、お手軽な文系スポーツ。今回のお題は『第9地区』です。

District9

LAでもNYでもなく、それはヨハネスブルグで起こった―。
ある日突然、市民の頭上に巨大UFOが出現、そして立ち往生。見かねた政府によって救助された大量のエイリアンは“第9地区”へ隔離されるが、28年後、その地は犯罪と暴力の温床と化していた…って、一体全体なんちゅう発想力!これは“招かれざる隣人”をめぐる社会派ドキュメンタリーの体裁を取りながら、いつしかパワー全快のSFアクションにまでジャンルを進化させていく驚くべき異色作だ。ごく平凡な当局職員による決死の覚悟に心震え、なおかつエイリアン親子の愛に胸熱くなる。すべては南ア生まれ&ロス・ジェネ世代監督の生々しい原体験と、遊び心溢れるガジェット・ビジュアルの賜物。この高度な合わせ技にピーター・ジャクソンンが惚れ込んだのも頷ける。

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’79年生まれのブロムカンプ監督は、そもそもピーター・ジャクソンの指揮下でゲームソフト「Halo」の映画化で監督デビューする予定だったが、スタジオ側のゴタゴタであえなく頓挫。しかしその代償として、大傑作『第9地区』が世に出ることになったとは・・・なんとも皮肉な話です。そして本作の原案となった短編"Alive in Joburg"はこちら。

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2010/02/09

ハート・ロッカー

300文字レビュー」とは、映画への想いをたった300文字に凝縮させる、お手軽な文系スポーツ。今回のお題は『ハート・ロッカー』です。

手に汗が異常発汗。これは最高の娯楽であり、耐えがたい真実でもある。
04年、バグダッド。爆弾処理兵の背後で爆音が響く。その凄まじい衝撃はあたりの砂塵と兵士の身体をスローモーションで巻き上げ、次の瞬間、勢いよく地面へと叩きつける…。このたったワンシーンで僕らの感覚を制御する安全装置は崩壊。脳震盪みたく意識をクラクラさせながらも映画は待ってなどくれず、身の震えるほどの緊張感が容赦なく更新されていく。これこそ紛れもない米兵の日常。恐怖ってなに?ここは生と死のどっち側?そんな葛藤へ観客を突き落とすビグローの鬼気迫る描写力は、元夫キャメロンと作った『ハート・ブルー』『ストレンジ・デイズ』が遊戯に見えるほど。彼女もまた映画を革新した。これがつまり、アクションの新境地なのだ。
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2010/02/08

全米ボックスオフィスFeb.05-07

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Feb.05-07 weekend】

01 Dear John (-)
02 Avatar (↓)

03 From Paris with Love (-)
04 Edge of Darkness (↓) 
05 Tooth Fairy (↓)
06 When in Rome (↓)
07 The Book of Eli (↓)
08 Crazy Heart (↑)
09 Legion (↓)
10 Sherlock Holmes (↓)

■なんと、8週目の『アバター』が首位から脱落。ラッセ・ハルストレムが紡ぐラブストーリー"Dear John"が週末の推計興収3,240万ドルを計上し、ボックスオフィスNO.1の座を獲得した。原作は「きみに読む物語」などで知られるニコラス・スパークスの「きみを想う夜空に」。例年、米国ではテレビでスーパーボール観戦に興じることで知られるこの週末だが、今年は打って変わって多くの女性客が劇場へと押し寄せた模様。配給元による客層分析では84%が女性客、2/3が21歳以下だという。

■ちなみにハルストレム監督作『HACHI』は全米では劇場公開されないまま、3月にはDVD発売されるようだ。

■対する『アバター』は、先週火曜、ついに北米での興業収入が『タイタニック』の6億78万ドルを越え、歴代1位となった。『タイタニック』が252日かかって成し遂げた記録をたった47日で更新したことになる。週末興収は2,360万ドルでNO.1とは差をつけられたものの、累計は6億3,000万ドルに達しており、これから7億ドル目指してさらに記録を伸ばしていきそう。

■3位はジョン・トラヴォルタ主演のアクション"From Paris with Love"。興収810万ドルという数字はトラヴォルタ主演作としてこの10年で最低の出だしだとか。『96時間』を大ヒットさせたピエール・モレル監督&原案リュック・ベッソンの最新作だが、スキンヘッドにしたトラヴォルタ=CIAエージェントという役柄がToo Much過ぎたか。■"Edge of Darkness"も興収700万ドルあまりと勢いを失った。8000万ドルの製作費に対して3000万ドル程度しか回収できていない。

■アカデミー賞ノミネート発表を受けて、ミニシアター系の候補作がスクリーン数を増やし、順位を上げてきた。ジェフ・ブリッジスが主演男優賞最有力とされている"Crazy Heart"は580館増で、興収は365万ドル。大した数字に見えないかもしれないが、これでも先週分よりは60%近く増収している。他にも16位の『17歳の肖像』は690館増、18位の"A Single Man"は137館増、21位の"The Last Station"も42館増となって、次第にミニシアター系の枠を飛び出して全国区になりつつある。

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奪われた看板

ずいぶん長い時間が経った。

アウシュビッツ訪問記のことを忘れていたわけではない。それは常に十分すぎるくらい意識していたし、アウシュビッツに関する本も大量に読んだ。そうして意識するたびに何も書けなくなった。何のための意識なのか分からなくなってしまった。時間だけがただただ過ぎて行った。

そんな中、年末にアウシュビッツの門に掲げてある看板部分が何者かによって奪い去られるという事件が発生した。ヨーロッパのメディアは揺れた。数日後に実行犯は逮捕。失われていた看板は3つに分断されて発見された。事件を支持したネオナチの男はいまも逃亡を続けているという。

Arbeit_macht_frei_2

「労働は自由をもたらす」

アルファベットの3つめの「B」のバランスがちょっとおかしいのは、この看板の設置を命じられた収容者がせめてもの抵抗として「B」のプレートを逆さまにしたから、とも伝えられている。そんな象徴的な看板である一方、終戦に至るまでナチスがこれに気付きさえしなかったことにはまた別の恐怖を抱かざるをえない。

そして、書き散らされた僕の訪問記は、ちょうどこのアウシュビッツの門を映し出したまま終わっていたのだった。

Auschwitz01
当時の写真とほぼ同じアングルで撮った写真である。
路の脇に植えられていた樹木が今ではこんなに青々と茂っている。

久々にアウシュビッツ博物館のホームページを開いてみた。かつては読み進めることが死ぬほど恐ろしかったものの、今ではだいぶ冷静に見つめられるようになっていた。

NEWSの項目に事件の経過が添えられている。返還された看板は数カ月の検査と修復を経て元どおりになる予定だという。それまでは代わりにレプリカの看板が据えられるらしい。

それから僕はウェブカメラでその様子を確認してみる。レプリカの下を見学者たちが通り過ぎていく。その様子は僕の訪問時と全く変わっていないように思えた。

真っ白な雪、以外は。

Arbeit

そろそろ、半年前の記憶とふたたび真向かう時間のようです。
また続けていきます。
気長にお付き合いいただければ幸いです。

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2010/02/04

おとうと

学生のころは、山田洋次の映画なんて中高年が観るものだと思っていた。が、自分も30代に入ると、その魅力にどんどんはまりこんでいった。これはひとえに僕がオッサン化の一途を辿っているせいだろうか。

山田洋次の作品を「日本人の心を浮き彫りにする」と書くのはあまりに安直なので控えたいが、かといって懸命に他の言葉を探してみても、なかなか的確な言葉が見つからない。

続きを読む "おとうと"

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2010/02/02

さよなら試写室

都内にある試写室の古株だった映画美学校試写室が、京橋再開発計画にともなう片倉ビルの取り壊しにより姿を消すことになりました。
伝え聴いた話だと、1月27日のマスコミ試写『ランニング・オン・エンプティ』がラスト(もしかするとその後にも関係者上映があったかも)。

これは居ても立ってもいられぬと、すべての仕事を放り投げて試写へ駆けつけ、終映後のスクリーンに幕が下りた状態を「火の落ちた」と呼ぶのかはしらないが、とにかくその光景を一枚カメラに収めて、「ありがとう」とつぶやきながらその場を後にしました。

Preview_2

ラストで観た『ランニング・オン・エンプティ』は、おそらく生涯忘れられぬ映画となることでしょう。『まだ楽園』(2005)で注目を浴びた佐向大監督の商業映画デビュー作。愛する人が囚われの身となって「金を用意しろ」と要求されてもなかなか身を入れて走りだそうとしない男と、その男に何を求めているのかだんだん分からなくなってくる女と、それを傍観する男の兄貴の物語。またはその3者間を伝書鳩のように飛びまわる役者・杉山彦々。それぞれがエンプティの上でキリモミしながら全然前に進めていない虚しさに、富永作品でおなじみの撮影・月永雄太が切り取る映像がスローモーションで絡みついていくような作品でした。

Front_4

試写室のある片倉ビルは1922年に建築された由緒ある建造物。東京の街並みからまたひとつ、なじみの風景が消えていきます。

京橋再開発後のイメージはこのようになるみたいです。

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2010/02/01

フローズン・リバー

『サウンド・オブ・ミュージック』でトラップ一家が「すべての山に登れ」と歌うように、人間の暮らしには常に登るべき山がそびえたつ。またそれを別の言い方で表すなら、「あらゆる場所に河が流れる」ともできるのだろう。我々の横断すべき、広大で、固く凍てついた河が。

カナダとアメリカの国境付近を横断するセント・ローレンス川は、互いの境界を強調するのみならず、崖っぷちに立たされた中年女性の心理状態さえ代弁する。

夫が新居の支払い金を持って蒸発した。その朝、レイはガウン姿で呆然と立ちすくみ、タバコをくわえ、目から涙を滴らせる。「自分が代わりに働くから」と主張する高校生の長男に母は「心配いらない」と言い放つ。親子間には口論が絶えない。しかし、彼らの想いは、幼い二男にだけは苦労させまいとする点で固く重なっている。それでも1ドルショップで働くレイに残された望みはゼロに等しい。支払いは滞り、父なき一家は旧家でクリスマスを迎えようとしている。

そんな中、モホーク族の自治区に住むライラと出逢ったことから運命が変わる。身の危険を顧みず、彼女たちは一線を越える。凍った河を車で横断してカナダへ渡り、そこで不法移民を乗せ、またアメリカ側へ。警察に見つかれば刑務所行きは免れない。しかし他に選択肢はなかった。家族を守るために、彼女は凍った河で、アクセルを踏む…。

Fr_2 中年女性たちのハードボイルドとくれば、まず思い出すのは『テルマ&ルイーズ』か。それと同時に、本作は緊張感みなぎる硬質なサスペンスに、社会派ドラマの様相をも芽吹かせる。そもそも「家が無くなる」という切実さはマイケル・ムーアの『キャピタリズム』を観た人ならば、このご時世でいかに多くの市民が胸に抱いている根源的恐怖であるかお分かりだろう。

そしてここでは、すでに冒頭から「家族」という社会の最小単位に亀裂が生じ、そこから地域社会、経済格差、そして民族の問題と、“フローズン・リバー”は庶民における多くのテーマを呑み込みながら、その不気味な存在感を際立たせていく。

しかしこの低予算のインディペンデントとして紡がれるローカルな物語は、ふとした拍子にグローバルへと手を伸ばす瞬発力さえも内包しているかのようだ。

たとえば、劇中、幼子が無邪気に尋ねる。「新しい家が届いたら、古い家はどうなるの?」。母親は慈愛に満ちた表情で分かりやすくこう答える。

「まず、取り壊されて、そのガラクタは中国へ送られる。鉄は溶かされて、そのあと、工場でおもちゃに形を変えて、それで船で送られてきて、ママの働く1ドルショップの陳列棚に並ぶのよ」

経済学的には当たり前のことかもしれない。しかし40歳代後半の新人女性監督コートニー・ハントは、このセリフで世界を鮮やかに一本の線上に連結してみせる。経済も、社会問題も、家族の問題も、良かれ悪しかれ、すべては繋がっている。遠いアメリカの「彼女たちの物語」は、つまるところ「僕らの物語」でもある。観客側にそうした意識の変化が芽生えていく。

我々は“河”と聴くと“断絶”を想起しがちだ。あちら側とこちら側。互いに相容れない領域。しかし本作のヒロインの心情から徐々に沁みだしてくるのはむしろ、不思議なほどに、この“繋がっている”というイメージ。それもポジティブかつ精神的な繋がりではないだろうか。

ファーストカットとして寒々しく映し出された大河は、ヒロインの心情の雪解けを察知するかのように、終盤ではもうフローズンではなくなっている。そうやってあらゆる季節は終わり、また始まり、巡り巡っていき、ここにもまた、絶えまなる“繋がり”が刻まれている。

と、ここまで見ると、本作のエンディングに庭先のブランコが象徴的に映し出されていたのも偶然とは思えなくなる。それはなぜかメリーゴーランド風に回転するブランコなのだから。

オープニングの大河と、エンディングの回転ブランコ。一見なんの関連性もないようなこの二者が、いま、あなたの頭の中で軽やかな連続性を見出せたならば、それこそ映画『フローズン・リバー』の導き出したマジックなのであり、この映画を観た者だけが体感できる「河の向こう側の風景」なのかもしれない。

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全米ボックスオフィスJan.29-31

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Jan.29-31 weekend】

01 Avatar (→)
02 Edge of Darkness (-)

03 When in Rome (-)
04 The Tooth Fairy (→) 
05 The Book of Eli (↓)
06 Legion (↓)
07 The Lovely Bones (↓)
08 Sherlock Holmes (↓)
09 Alvin and the Chipmunks:The Squeakquel (↓)
10 It's Complicated (↓)

■オスカー獲得に向けての賞レースでは前妻キャスリン・ビグローが指揮する『ハート・ロッカー』に水をあけられつつある『アバター』だが、こと商戦に関してはいよいよ米史上一位が目前に迫ってきた。7週目の興業でも推計3,000万ドルのチケット売り上げを誇り、累計を5億9,450万ドルとした。『タイタニック』の持つ記録“6億78万ドル”まで本当に、あと一息。その歴史的瞬間を関係者は「もしかすると火曜・・・?」とも予感しており、この日がオスカー候補発表日でもあることから、さらに話題、客足ともに伸びることが予測される。

■2位は名俳優、名監督と謳われながら近年は警察沙汰が続いたメル・ギブソンによる約8年ぶりの主演作"Edge of Darkness"。ひとり娘を殺された刑事が、そこに隠された闇をえぐりだそうと職務を越えた壮絶な追跡を繰り広げる。監督は『カジノロワイヤル』で007を新次元に導いたマーティン・キャンベル。話題作としての要素はは充分だが、売り上げ的には推計1700万ドルというやや低い水準にとどまった。製作費は8000万ドル級と報じられている。

■3位も初登場、クリスティン・ジョンソン主演の"When in Rome"。滞在先のローマで噴水からコインを持ち出したヒロインが、途端に大勢の男たちから求婚されるロマンティック・コメディ。興収は推計1200万ドル。監督は『サイモン・バーチ』『デアデビル』『ゴーストライダー』を手掛けたマーク・スティーヴン・ジョンソン。

■4位の"The Tooth Fairy"はこの時期に貴重なファミリー・ムービーとしてやや観客が集まったのか、公開2週目にしては興収の落ち方が30%弱と緩やか(通常は50%前後落ちる)。週末の興収は推計1,000万ドルで、累計は2,600万ドル。製作費の4,800万ドルまではまだ道のりは遠い。5位の"The Book of Eli"(邦題『ザ・ウォーカー』)は3度目の週末にて推計880万ドルを計上し、累計を7,400万ドルとした。製作費の8000万ドルは何とか越えられそう。2週目の"Legion"は先週比60%落ちの堕天使っぷりだが、累計では2800万ドルと、製作費をちょうどカバーしたあたり。

■日本でも封切られた『ラブリー・ボーン』は7位。興収470万ドルと数字的には奮っておらず、製作費として報じられる6500万ドルに対し累計興収3800万ドルとまだまだ先は長いが、TOP10ランキングのなかでは唯一、70館前後のシアターを増やす措置が取られている。8位『シャーロック・ホームズ』については先週「来週の今頃には2億ドルを突破しているだろう」と書いたが、微妙に数字が伸びず、現在の累計では1億9700万ドルほど。

■メリル・ストリープ&アレック・ボールドウィン&スティーヴ・マーティン主演の『恋するベーカリー』は、数字的にはそれほど派手なパフォーマンスは見せていないものの、6週目も相変わらずちゃっかりTOP10入り。おのずと興収も積み重なり、めでたく週末の3日間でヒットの指標となる1億ドルを突破している。

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