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2010/02/08

奪われた看板

ずいぶん長い時間が経った。

アウシュビッツ訪問記のことを忘れていたわけではない。それは常に十分すぎるくらい意識していたし、アウシュビッツに関する本も大量に読んだ。そうして意識するたびに何も書けなくなった。何のための意識なのか分からなくなってしまった。時間だけがただただ過ぎて行った。

そんな中、年末にアウシュビッツの門に掲げてある看板部分が何者かによって奪い去られるという事件が発生した。ヨーロッパのメディアは揺れた。数日後に実行犯は逮捕。失われていた看板は3つに分断されて発見された。事件を支持したネオナチの男はいまも逃亡を続けているという。

Arbeit_macht_frei_2

「労働は自由をもたらす」

アルファベットの3つめの「B」のバランスがちょっとおかしいのは、この看板の設置を命じられた収容者がせめてもの抵抗として「B」のプレートを逆さまにしたから、とも伝えられている。そんな象徴的な看板である一方、終戦に至るまでナチスがこれに気付きさえしなかったことにはまた別の恐怖を抱かざるをえない。

そして、書き散らされた僕の訪問記は、ちょうどこのアウシュビッツの門を映し出したまま終わっていたのだった。

Auschwitz01
当時の写真とほぼ同じアングルで撮った写真である。
路の脇に植えられていた樹木が今ではこんなに青々と茂っている。

久々にアウシュビッツ博物館のホームページを開いてみた。かつては読み進めることが死ぬほど恐ろしかったものの、今ではだいぶ冷静に見つめられるようになっていた。

NEWSの項目に事件の経過が添えられている。返還された看板は数カ月の検査と修復を経て元どおりになる予定だという。それまでは代わりにレプリカの看板が据えられるらしい。

それから僕はウェブカメラでその様子を確認してみる。レプリカの下を見学者たちが通り過ぎていく。その様子は僕の訪問時と全く変わっていないように思えた。

真っ白な雪、以外は。

Arbeit

そろそろ、半年前の記憶とふたたび真向かう時間のようです。
また続けていきます。
気長にお付き合いいただければ幸いです。

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