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2010/03/31

ブルーノ

Bruno_4英国ケンブリッジ大卒の喜劇人サシャ・バロン・コーエンは、これまで黒人文化かぶれの白人ラッパー“アリG”、カザフスタン出身ジャーナリスト“ボラット”、オーストリア出身でゲイのファッションリポーター“ブルーノ”というキャラを使い分けてきた。断わっておくが、ケンブリッジは何も変態ばかりを養成する地というわけではない。言わずと知れた最高峰学府、なおかつとても美しい街だ。が、結果的にモンティ・パイソンのメンバーや、アイザック・ニュートン、ヴィトゲンシュタイン、チャールズ・ダーウィンといった名だたる変態たちが巣立っている。なんて素晴らしいことなんだ。

60年代をリアルタイムに生きていない僕には、モンティ・パイソンが当時いかなる革命を巻き起こしたのか想像するしかない。思うに、都会の喧騒から離れたこの場所で(ロンドンから鉄道で1時間くらい)、若き彼らは自分や社会の限界を打ち破ろうと、また打ち破ることを恐れない自己を形成しようと奮闘したことだろう。彼らの強さとは、自己や周囲の価値を究極的に「ゼロ」か「それ以下」と判断しえたことに尽きるのではないか。

インテリぶりを微塵も感じさせないサシャ・バロン・コーエンからも、その強靭さは感じられる。大衆の好物、“アポなしリアリティ・ショー”のようなスタイルで綴られていく本作『ブルーノ』。これは事実なのか?虚構なのか?「ヒトラーに次ぐオーストリア出身の有名人になりたい!」などと野心みなぎらせるファッション・レポーター(バロン・コーエン)は、ひとつの大失態により業界から締め出しを食らい、そんなら世界で勝負だ!とばかり自己主張の国アメリカへ乗り込んでいく。側にはサンチョ・パンサのようなマネージャー(ゲイ)がひとり。ブルーノのケツの穴をずっと狙っている。Sacha01_2
ブルーノはどんな危険な立場に置かれても「最高の“キメ顔”きめれば、許してもらえるんでしょ?」的な空気の読めなさ(読まなさ)ぶりを貫き通す。アフリカで黒人の赤ん坊をお買い物しては「だってセレブはみんなやってるでしょ?」。中東の過激派グループ幹部には「有名になりたいから、ぜひ誘拐して!」。挙句の果てにはエルサレムの真ん中で挑発的なユダヤ教コスチュームに身を包み、周囲の緊張を暴動寸前にまで高めて、またもやキメ顔。

ちなみに、サシャ・バロン・コーエンはユダヤ人家庭に育ち、つい先日も伝統的な結婚式によってアイラ・フィッシャーと結ばれたばかり。そんな彼がメル・ギブソン(ユダヤ人社会と何かと衝突の絶えないお人)の写真を目にして「総統っ!」と敬礼してしまうのも、ギャグとはいえ、かなり武闘派の域に達している。

え?『ブルーノ』見たけど、なんにも心に残んなかったって?

それに気付いただけでも大したものだ。世の中のあらゆるものはイメージを身にまとっている。人々が目くじらを立てて怒るテーマほど、イメージは幾つもの層に塗り固められて、安易にリセットするのが難しい。でもこの世の“ホンモノ”って、いとも簡単に自らの存在価値を無色透明に帰してしまえるものなのではないだろうか。

僕はブルーノの不思議ちゃんぶりの中にその幻影を観たのだが。。。まあ、何かの間違いでしょう。

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