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2010/04/25

ヒットマンズ・レクイエム"In Bruges"

ベルギーにお立ち寄りの際はぜひ足をお運びください。ブルージュへ。

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世界に名高い劇作家マーティン・マクドナーが映画界に進出するのは時間の問題だった。「ピローマン」「ウィートーマス」などで観客に衝撃と動揺を与えてきた彼。その舞台世界を一度でも体感すると「これが映像ならばどう表現されるだろう?」と想像の翼を広げずにはいられなくなる。

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しかしここまで待ち望まれて、なおかつ世界中で絶賛された映画"In Bruges"が、まさか日本で未公開の憂き目を見るとは思わなかった。本作は『ヒットマンズ・レクイエム』という邦題でレンタルDVDのみ取り扱われているようだ。

主人公は歳の離れた二人の殺し屋レイとケン。ロンドンでひと仕事終えたばかりの彼らは、使った拳銃をテムズ河へ捨て、いまやボスの命令で中世から続く美しい水の都ブルージュに身を潜めている。 旅行者のごとく観光スポットめぐりを楽しむケンとは対照的に、レイはどうも心が落ち付かない。夜になると薄暗い灯りの中、霧が立ち込め、ブルージュの街並みはひときわ幻想性を増す。さらには街角からは映画撮影中のドワーフ(小人)までもが現れる始末(ほとんど夢の世界のようだ)。アルコール、美しい女性との出逢い、ドラッグ、小人の戯言。そこに突如ボスからの非情な電話がもたらされる。それは先の仕事でしくじったレイを殺せ、という指令だった・・・。

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ジャンルとしては「コメディ」に分類されることが多い。一昨年のゴールデングローブではこのカテゴリーにてコリン・ファレルが主演男優賞を受賞。しかし実際にはジャンルを大きくはみ出す異色作だ。マクドナーらしい血なまぐささを盛り込みながらも、絶体絶命に陥った各々のやるせない表情には思わず笑いがこぼれ、それでいて人生の悲哀すら感じさせる作り。コリン・ファレルも太眉をつり下げて、情けない表情を絶やさない。

特にこの十数世紀も荘厳な光と闇を讃えてきたブルージュの街並みはまるで一つの舞台装置のようでもあり、あの世とこの世の境目でさまよう登場人物たちの魂を、溜息に揺れる蝋燭の炎のごとく、意味ありげにひっそりと祝福してくれる。はたして彼らにとってブルージュは、人生の終着地となるのか、それとも新たな出発地となりうるのか。すべての答えは、壁際にたたずむガーゴイルのみぞ知る。

出演者&監督がアイルランド、北アイルランド、それにイングランドと何やら独立運動の血なまぐささを彷彿とさせるような配置になっているのも気になる。直接的には触れていないが、記号レベルで何らかの意図があったと考えても不思議ではない。

ちなみに、本作には『ハリー・ポッター』俳優が4人出演している。ヴォルデモード役のレイフ・ファインズは当然として、マッドアイ・ムーディ役のブレンダン・グリーソン、フラー・デラクール役のクレメンス・ポージー、そしてキアラン・ハインズ。キアランは最終作で初登場となる重要人物を演じるが、それが何者であるかはネタばれになるのでここでは明かさない。

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「ウィ―・トーマス」の原題は「イニッシュモアの兵士」。どちらも英語版です。

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