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2010/04/21

アウトレイジ

ここ数年、作り手としての生みの苦しみをそのまま体現するかのような異形の作品を手掛けてきた北野武。TVではあんなに人気者なのに、映画となると観客の好き嫌いがはっきりと分かれてしまう。「おれの映画は客がはいんなくて困っちゃうんだ」とはよく聞かれる彼の弁だが、さて、カンヌのコンペティションにも出品の決まった『アウトレイジ』は彼にとって久々のヤクザもの。さきほど海外のサイトをチェックしてみたが、"Yakuza"という言葉がそのまま使われ、「キタノがホームグラウンドに帰ってきた」的な紹介が大半を占めている。

冒頭、おびただしい数の黒塗り自動車&強面の男たちが横一線に並ぶ様が映しだされる。まるで兵士だ。守るべきもののためなら平気で命さえ差し出す兵士たち。彼らの代表選手でもあるかのように、有名俳優たちが横一線に揃い踏みする。はたしてこの映画が幕を下ろす頃、この中の何人が生き残っているだろうか。。。

バトルロワイヤルは、子弟暴力団の親分のひとことで開始を告げる。

「お前のシマでヤツラになめられてるんじゃねえのか?」
「はあ、すみません・・・」

この案件への対応をめぐり、ヤクザ社会の下請けの下請けへと仕事が回ってくる。ひとことで言えば「手っ取り早くケンカをおっぱじめろ」ということなのだが、互いのメンツやプライドもあるので、相手の出方の裏の裏を読んで、自分の立ち位置を決めなければならない。なんともまどろっこしい不条理感が漂う(いかにもベケットの国、フランス人が好きそうな題材だ)なか、事はわらしべ長者的にどんどんスケールを増していく。しかもヤクザ社会の兵隊となると、犠牲も多い。覚悟を決めて向かってくる者、逃げ出す者、最後まで平然と佇む者、ほくそ笑む人々。腕っぷしの強さや度胸など何の役にも立たない。

北野作品としてなにか革命的なことに取り組んでいるわけでもない。どのシーンにもハイライトと言うべき感情のうねる場所はなく、しかし逆にいえば、どこのシーンも均等に緊張感が割り振られ、その同じ歩幅で整然とした語り口が不気味でさえある。おびただしい数のキャラクターの誰もがこの映画の部品として機能し、誰がメインを掻っさらうわけでもなく(ビートたけし自身も、本作ではひとつの部品にしか過ぎない)、この戦いで生き残る可能性は、まさに神のみぞ知る。その意味では「誰が生き残るか分からない」=「ふところの伺い知れない」キャスティングは注目に値する。こんなタヌキ俳優たちをよく集めたものだ。

また、そのときの状況により自在に変化していくと言われる北野組の撮影現場(「おれ、どんどん変えちゃうからさ」という発言をこれまで何度聞いただろう)において、これまた映画の中では一部品にしか過ぎない加瀬亮の存在感を監督自身が面白がり、いくつか出番が増えた、という話も伝え聞く。ガス・ヴァン・サントの新作にも出演する加瀬。『アウトレイジ』では澱みのない英語を操る希少なインテリ極道を演じる。あと、個人的には元ジョビ・ジョバの坂田聡が前半部で面白い役どころを演じている。中堅俳優としては異例のカット抜きの多さから、彼に関しても北野監督が現場で「おもしろいな」と感じたであろうことは想像に難くない。

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「全思考」は北野武の“死や生”そして“映画”についての考え方が熱くもなく冷たくもなく、適温で綴られていて、ああこの人、こんなこと考えて生きてるのか。。。と唸らされる一冊です。随所に挟まれる北野武御用達の料理屋主人の告白録がまた味がある。世界中からやってくるキタニストへの北野流もてなし方や、気がつくと汚れたトイレをゴシゴシ掃除してたりする彼の奇妙で誠実な人柄に、TVや映画とは違ったまた別の一面が見えてきます。

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