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2010/04/06

モリエール、恋こそ喜劇

東京では3月初頭に封切られた『モリエール、恋こそ喜劇』。Bunkamuraルシネマでの上映もいよいよ終盤に近付いてきた。

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本作を観ながら思った。フランス人の対抗心たるや計り知れない、と。

たしかに、
『恋におちたシェイクスピア』のような作品を見せられると、人々は「それなら我が国も!」と母国の劇作家を候補に立て対抗心を燃やすことだろう。ロシアはチェーホフだろうか、ギリシアならアイスキュロス? アメリカならテネシー・ウィリアムズにアーサー・ミラー? アイルランド生まれでフランスで没したオスカー・ワイルドって手もあるし、日本の代表選手としては18世紀生まれの鶴屋南北ってのもありかも。

しかしどんな才人を擁しても、シェイクスピアと時代的に釣り合いが取れるのは、17世紀フランスのモリエールをおいて他にはいない。そして本作『モリエール、恋こそ喜劇』は、『恋におちたシェイクスピア』と同様、彼が後世に残した名作群のヒントを散りばめたような創作エピソードで綴られる。

才能が開花する以前の若きモリエール(ロマン・デュリス)が徐々にその片鱗を垣間見せていく様はスーパーヒーローのエピソード1みたいで楽しい。でもこの映画が「シェイクスピア映画の呪縛(というか対抗心)」から脱し、観客の心をグッと鷲掴みにしはじめるのはこの男が本領を発揮してからではないだろうか。

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その御仁こそ、フランスの名優ファブリス・ルキーニ。消臭剤のような名前だ。

彼が演じるのは、大成功した商人にも関わらず、「貴族になりたーい!」と高望みをする憎めない男だ。僕にはこの物語の中盤からまさに彼を中心に世界が動き出したかに見えた。

若きモリエールには金はないが才能がある。しかしルキーニ演じるこのエセ貴族は、金は湯水のごとくあるが中身はスッカラカン。なんとか自分を取り繕うことで精いっぱい。でもその立ち居振る舞いは、お調子者で、人間味にあふれている。そんな彼が貴族社会に指をさして嘲笑され続けた挙句、とんでもない大立ち回りを披露するシーンがある。これがあっぱれというか、完全に目を覚まされるというか。本作はこういうフツ―の人間にちゃんとスポットライトを当ててくれるのだ。

ちなみにルキーニはセドリック・クラピッシュ監督作『Paris パリ』でも歴史学の教授として登場。

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数多くの人気俳優が入り乱れる群像劇に、歴史の観点で繋がりを付与していく重要な役どころを担っているのだが・・・ほんとうに、権威に彩られた人間とその悲哀を醸し出すなら、彼の右に出る者はいない。

もっと時間を逆流させて、さらに若返らせると・・・

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あまり変わってないような。今後はフランソワ・オゾンの新作が待機中。あまり多作とは言えない彼だけに、その持ち味がじっくり堪能できる『モリエール』は貴重な作品だ。

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