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2010/04/01

シャッター アイランド

そこに袋とじがあったからだ―
原作本を手に取った理由はそれ
に尽きる。

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結末部分を袋とじで防御した装丁の魅力には勝てず、ついつい原作本を手にしてしまった。つまり、映画『シャッター アイランド』は僕にとって行き先の分かりきった航海だった。あるいは、一度上演された舞台の再演、映画のリメイクのようなもの。あの原作世界を巨匠マーティン・スコセッシはどのように描くだろうか。僕のなかで既に出来上がったイメージを、彼は覆すことができるだろうか。

正直、期待はしてなかった。そもそもスコセッシなんて昔とった杵柄で生き残ってる眉毛の太いおじいちゃんのように感じていた。でもすぐさま前言撤回。僕は本作に、ここ数年で最も挑発的なスコセッシを見た。

50年代、閉ざされた島を覆い尽くす暗く湿った圧迫感。立ち込める霧。汽笛。不気味な精神科病棟で暮らす、気のふれた人々。逃げ出した患者。謎の灯台。微かな表情で多くを語る登場人物たち。そして、第二次大戦中の、ダッハウ強制収容所の記憶―。スコセッシの発言を借りれば、これは実際に彼が市井で触れてきた時代(戦後~冷戦)の空気であり、極度のパラノイアに彩られた記憶だという。
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ストーリーやオチだけに気を取られるのは勿体ない。ぜひこの息苦しい島に詰め込まれた圧倒的な音と映像の洪水に注目してほしい。霧の白にはじまり、そこに色と音をコラージュするかのように、次々と鮮烈な記憶のイメージが挿入されていく。

また本作は専属の作曲家を雇わず、選曲制になっている。なかでも本作で幾度も表情を変えながら繰り返されるマックス・リヒター(『戦場でワルツを』)の"The Nature of Daylight"という楽曲が哀しみの情感に拍車をかけ胸を締め付ける。かとおもえば、コントラバス(?)の音色が汽笛とシンクロする趣向や、中盤では現代美術家ナム・ジュン・パイクによる不気味な音のコラージュ(←かなり心臓に悪いです。真夜中にひとりきりで聞かないように)にさえ身をさらすこととなる。

ちなみに『シャッター・アイランド』のテーマは、陰と陽の関係のごとく、この翌週公開の『アリス・イン・ワンダーランド』にも繋がっている。それぞれに独立独歩の映像作家ティム・バートンとスコセッシ。描かれる時代も「19世紀」と「50年代」と隔たりがある。が、両者とも、それぞれの手法で“狂気”の意味を現代人へ投げかける。

僕らは無自覚のうちに、とんでもない狂気の時代を生きているらしい。

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