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2010/04/14

17歳の肖像

『アバウト・ア・ボーイ』や『ハイ・フィデリティ』の、あの軽妙なタッチが蘇る。ニック・ホーンビーが脚色を手掛ける『17歳の肖像』は60年代初頭のオールドファッションなストーリーを小粋な会話でクスクスと魅せる英国映画だ。主演のキャリー・マリガンはサンダンスやトロントでの上映以来、映画の中で少女から女性へと変わりゆく様を「オードリー・ヘップバーンの再来!」とも評され、いち早くオスカー候補入りを確実視された。

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はじまりは唐突な雨だった。女子高に通う主人公ジェニーの前にひとりの男性(ピーター・サースガード)が現れる。うんと歳が離れた彼はデイヴィッドと名乗り、その知性とユーモアを絶やさない洗練された語り口で、いつしか彼女をめくるめく社交の世界へといざなっていく。口やかましかった両親も、これには「素敵なご縁!」とばかりに喜び顔。これは、まだ女性の社会進出が浸透していなかった頃のおはなし、なのだ。

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ジェニーもジェニーで、デイヴィッドへの想いを強めるにつけ、大学受験の夢を放り出し一途な愛の道を選びとろうとするのだが…。はたして彼女の人生はどうなる!?

原作となったのは44年生まれの女流ジャーナリスト、リン・リーバーによる自叙伝(つまり結論からいえば、ジェニーは見事に社会進出を果たしたのだ。映画では描かれないが)。よく「歯に衣着せぬ」とよく言われる彼女だが、70年代には"How to improve Your Man in Bed"なる本を著しセンセーションを巻き起こしてもいる。そんな感じなので本作では女子学生といえども、放課後にタバコはスパスパ吸ったり、名門校を出た担任にも「そんなのが女性の幸せだと思ってるんですか?」と啖呵を切ったり、人生にこわいものがなくなった瞬間を気持ちいいくらいに生き生きと描き切っている。

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や、それにしても、キャリー・マリガンやピーター・サースガードらばかりが取りざたされるが、脇を固める俳優も、お見事。とくに写真左の頑固なパパ役アルフレッド・モリーナの巧さときたら・・・。『スパイダーマン2』や『フリーダ』でもお馴染みの彼。そのコメディ・リリーフぶりが絶妙過ぎて、笑う、というよりも、ただただ陶酔してしまう。

また、担任の先生には『シックス・センス』でブルース・ウィリスの妻役を演じたオリヴィア・ウィリアムズ、校長先生にはすっかり英国映画界の重鎮ぶりを発揮しているエマ・トンプソン(彼女が脚本を担当するリメイク版「マイ・フェア・レディ」の主演にキャリー・マリガン?という噂も広がっている)。彼らはタイトルでもある「教育」を“与える側”として柔軟性の高い存在感を放っている。

そんな感じで、見どころを突きだすと止まらなくなってしまう。

監督にはデンマーク出身のロネ・シェルフィグ。彼女の代表作『幸せになるためのイタリア語講座』(←かなり初期に書いたレビューなので青臭いですが)も、ある意味“教育”がおとなたちを異世界へといざなう実に心地よいドラマだった。おすすめです

ちなみに、本作の製作にはオーランド・ブルームが陰で尽力した。というのも、当初資金集めで難航していた本プロジェクトに彼の名前が挙がるや否や、出資者が次々に意を決してゴーサインが出たのだそう。実際には彼は助演としてほんの一週間くらい名前を連ね、その後、製作が決まったのを見計らってドロップアウト。このとき出資者は「キャスティングに口を出さない」という事前契約によって、泣く泣く変更を了承せざるをえなかった。

この裏側で行われていた駆け引きについては想像するしかないが、もしかするとブルームが自分の知名度を貸してこの映画を軌道に乗せたのかも。青写真の段階で出資者を納得させるには、やはり出演者の顔触れが強い影響を及ぼしますからね。

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ニック・ホーンビィの手掛けた作品といえば、『アバウト・ア・ボーイ』は当然として、『ハイ・フィデリティ』も人気が高く、それからコリン・ファース主演の『ぼくのプレミア・ライフ』という知る人ぞ知る作品と、それがアメリカ版に脚色された『2番目のキス』も、ファレリー兄弟の監督作とは思えないくらい、爽やかに笑えます。
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